第40話 殺したいの?


夕食を終え部屋に戻りこれからの事を考える…ヴァニタスはもう他人を信用出来ないと言っていた…アンも同じなんだろうか…もしそうなら、入学試験の日何故話しかけてきたのだろう…入学式の時も…たまたま席が隣になったからってヴァニタスを巻き込んでまで会話をしようとしていた…何か目的がある?……アンにも話を聞ければ……


コンコンコン


「?…はい」


誰か尋ねてきた様だ…


「私です、アーク様…」


声を聞いて、僕は扉を開ける


「………今、君と話がしたいと思っていたところだよ、アン」


「ふふふ、それは丁度良かったです…私もお話があります」


僕はアンを部屋へと招き入れる


「それで、アーク様のお話とはなんでしょうか?」


「僕が先でもいいの?」


「えぇ、構いませんよ」


「なら、遠慮なく…ヴァニタスにも同じ質問をしたけど、アンは何故この国に来たの?」


「…………ヴァニタスはなんと?」


「質問を質問で返すのは良くないよ………居場所がなくて逃げてきたって聞いた」


「そう……ですか…あの子はそう思っているのですね…」


「君は違うのかい?」


「えぇ、違います…私がこの国に来たのは復讐のためです」


「それは父親を殺した王弟への?」


「ふふ、分かっていて聞くのも良くないですよ……違います、帝国そのものへの復讐です」


「………理由を聞いてもいいのかな」


「……あの国に王族として産まれた私達は産まれたことで母は死に、母を殺したと父から恨まれ続け、自身の権力欲しさに私達を利用する様な貴族ばかり、分かりますか?良くしてくれていた信じていた侍女は私を懐柔して彼女の兄に私を貢ごうとしたのです…もはや、あの国にいる者は人間ではありません…」


「そんな……」


「事実ですよ、まぁ事前に分かって侍女を始末したので問題ありませんでしたが」


「始末って…殺したのかい?」


「当然でしょう?私は王族です、不敬罪が当てはまりますし…父も私が何をしようとも気にはしないので…」


「アン…君は…」


「最初の質問の答えは復讐と言いましたが少し違います、私はこの国に協力者を見つけに来ました」


「君の復讐に力を貸す人間をか…」


「えぇ、ですが…この国の人々はとても優しいですね、しばらく街に滞在しましたが…民の一人一人がお互いを思い合っている…貴族も、増長している者はいれど、多くはない…寧ろ少ないです…この国は平和な国です…そんな光景を見て私の復讐に巻き込むのはやめました…」


「アン……でも君は諦めてはいないね」


「ふふ、ふふふ…えぇ、勿論!!諦める?それは奴らを許せと言う意味ですか?そんな事、絶対にあり得ません!私は成し遂げます!この国を巻き込まないので私自身で復讐を果たします!私の手で帝国にいる醜い化け物共を1匹残らず消し去る……それは私の願いです…」


「ヴァニタスはどうするだ…」


「あの子は根は優しい子です…今は周囲を信じられなくなっていますが、この国の人々ならあの子は大丈夫です…」


「………アン、僕への話は復讐の手伝いじゃないのか」


「YESでもありNOでもあります、貴方には私を強くして欲しい、国一つを落とせるくらいに…貴方にはその力がありますよね…アーク…」


「僕にそんな力なんて「いえ、あります」……どうしてそう思うのさ」


「これは確信があってのお願いです、大魔法使いソロモンに弟子入りし、僅か5年で師を超えた規格外の存在……」


!?アンはまさか…知っているのか!?


「アークライド…いえ、勇者 ホシミズ シュウ…私を救ってください…」



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