第37話 人じゃない…


「アークライド、理事長が呼んでるから今から理事長室へ行け」


「え"?」

授業が終わりシルの所へ行こうとしたら先生に止められ呼び出しを受けた…


「アーク、何したのですか?」


「授業初日に呼び出しってしかも理事長…」


「理事長だと?俺もついて行っていいか?…おい!アン!離せ!」


マリィがジト目で僕を見てくる、双子は戯れあってる…はぁ


「何もしてないよ…とりあえず行ってくるね」


シャルめ…こんな事して、変に目立ってるじゃないか…理事長は…ここか、一応…


コンコンコン


「アークライド・ルグウィンです…お呼びと伺いましたが」


「どうぞ、入ってください」


「失礼します」


入室の許可が出たので扉を開け中に入る、するとシャルだけではなくアメリアとアルもいた


「ふふ、呼びつけてしまってすいません、我々が行くと騒ぎになりそうなので…お久しぶりですね、シュウ様…本当に…いえ、失礼しました、アーク様…入学、おめでとう御座います…理事長として歓迎しますよ」


「昨日は逃げたくせに…呼び出しも結構目立つけどね、久しぶり、シャル…ありがとう…まさか理事長になっていたなんて思わなかったな…それに2人ともなんで教えてくれなかったのさ…いや、なんとなくわかるんだけど…」


「えぇ、良縁に巡り会いまして」


「ふふ…驚いた…です?」


「あんたを驚かせようと思って!」


「だと思ったよ!」


全く、いい大人でしょうが…君たちは…


「それでなんの用だったの?僕、ちょっと忙しいんだけど…」


「そうですね、幾つかありますが…まずは帝国の双子の事です」


「アンとヴァニタスか…僕も気になってはいたけど…」


「アン?……随分親しくなった様ね、愛称で呼ぶなんて…」


「アーク様…また…です?」


「いや!普通に友人になっただけだから!あとアル!またってなんだ!」


「本当かしら…」


「信用…ない…です」


「まぁまぁ、お二人ともそれは後で問い詰めるとして、あの双子殿下ですが…恐らく亡命に近いかと」


「亡命?…なんで?2人は王族だよ!?あの2人以外には現皇帝に後継はいない筈だ!亡命する理由がわからない…」


「当然の疑問ですね…ですが、先日我が国の諜報機関が入手した情報によると既に現皇帝は亡くなっているそうです…」


「!?バ、バカな!そんな事何も知らないぞ!皇帝が崩御するなんて大事件、普通は各国に情報が行って、父上の所にだって来るはずだ、それに父上経由で僕にも回ってくるだろ!」


「普通は、そうなのですが…そうも行かない様なのです」


「どうしてさ」


「まず、帝国では皇帝の崩御は秘匿されています…そして、帝国ではあの双子殿下は行方不明になっているのです」


ちょっと待ってくれ!皇帝が死んでいて、それを隠す?後継の2人も行方不明?でも2人ともこの国にいる…別段身を隠してるわけでもないのに…それに皇帝の死を隠す理由…これは一体…いや、もしかして…


「亡くなった皇帝に兄弟は?」


「流石ですね、居ますよ…弟が…諜報機関によると皇帝は王弟に暗殺されたそうです…そして皇帝が死ぬ間際にあの二人からこちらにコンタクトを取ってきたと報告が上がっています…」


「彼等が自ら、敵対しようとしている国の諜報機関に?」


「その通りです…彼等は皇帝と違い大陸制覇には関心がないようです…自分達の安全を我が国に依頼して来ました…その見返りに帝国の情報を売り込みました…軍事力、資金力、家族の動き、王弟の暗躍など、陛下はその条件を飲んだのです、その為あの2人の行方を知っているのは現場にいた諜報員と国王陛下、宰相、騎士団長と魔法師団長と私です」


「やっぱり、父上と母上も知っていたのか…」


「お二人が知ったのは昨日の筈です…両殿下が昨日入学しましたから」


「つまり陛下はあの2人を帝国の王弟から隠してると…なら、なんで学園に?見つかるんじゃないの?」


「学園の情報は外には漏れませんよ…この学園で起こったことを外部で知るのは陛下のみです、貴方のご両親も知る術はありません…これは絶対です」


「ど、どうして…」


ここにいるのは貴族や平民、外国から来た学生だ…そこまでする理由は…それに一体どうやって


「この学園全体に魔法陣が敷かれています…いえ、魔法陣の上に学園があると言った方がいいでしょうか…この学園の創立者である初代国王は若人こそが時代を作ると考え、この敷地内での起こるあらゆる出来事を学生のみで解決して欲しいと願ったそうです…その為に魔法陣を敷き学園を作ったとされています…魔法陣の効果は大きく分けて5つです」


1.この学園での出来事を外部に漏らすことが出来ない


2.この学園には学生、教員以外の人間は入る事が出来ない


3.卒業試験を合格し卒業することで魔法陣の効果は無くなる


4.一時的に学園から外出する場合は魔法陣を施した専用の許可証が必要になる


5.途中で退学など学園を去る場合は入学してから学園を去るまでの出来事を話すことが出来ない


「こんなところですかね、他にも細かい制限も有りますが重要なのはこの4つです」


あ、ありえないぞ…こんな巨大な契約魔法陣なんて…どれほど繊細で複雑な魔法陣を敷いたらこんな制約で学園全体を縛ることが出来るんだ…それに魔力だって僕や母上、師匠を合わせても全く足りないぞ…そんな魔力を一体どこから集めたんだ…学園が出来てから今までその魔法陣を維持できてるのにも驚愕だ…


「こ、こんな事この国の全てを使っても再現なんて不可能だ…初代はどうやって…どれほどの人を集めたんだ」


「………初代国王は1人で行なったそうです」


「は?…今なんて?」


「ですから、初代国王はたった1人でこの魔法陣を作り、行使したんです」


「あ、ありえない!こんな巨大で生徒と教員全てに制約を付けてるのに魔力だって一個人の魔力量では発動さえ不可能だ!」


「それを行なったのが初代なのです…私も理事長になって陛下きらこの話を聞いた時は信じられなかったです」


「………それが事実なら初代は人ではないな……もはや神の領域だ…」


僕はシャルが告げる事実を簡単には受け入れる事が出来なかった……

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