第33話 何を考えている…


アストラル魔法学園…この国唯一の教育機関で名前の通り魔法を中心とした学業を勤しむ学園である

魔法を学ぶならこのアストラルに行くべしと言われるほど他国からも入学希望者が多い…しかし、純粋に魔法を学ぶ者もいるが、そうでない者も少なくない…他の貴族との縁を求める者、魔法技術を他国にもたらす為にくる者など様々だ

ただ簡単に入学出来るほどこの学園の門は広くはない…入学出来るのは15歳の子供が100人のみ、入学試験を突破しなければ当然門を潜ることはできない…それでも毎年600〜700人の受験者が集う…他国からもと考えると多くはないが中々にやり甲斐はありそうだ


遂に…入学試験当日になった

試験内容は…一般知識、魔力の知識の筆記試験魔力量の多さ、魔力技術の3つだ


筆記試験は既に終わり魔力量の測定の順番待ちをしている…因みに、筆記は満点の自信がある、実家でしっかり学んできたからね

あと師匠に魔力量の測定は1番最後にやれと言われている…なぜ?と思ったが魔力量を測る測定器の許容量が明らかに僕の魔力量に耐えられないな…あれ

どうしよう…壊しちゃうのもあれだしなぁ


「次、アークライド・ルグウィン受験生」


考え込んでいると僕の番が回ってきた

とにかく壊れない様に許容量のギリギリを見極めないと少しずつ魔力を入れれば大丈夫かな?

そう思い手をかざそうとすると…


「あ、待ちたまえ…アークライド・ルグウィン受験生…君の測定は魔力技術の試験で見させてもらうので次の試験会場に移動したまえ」


「え?わ、わかりました…」


何で僕だけ?でも測定器を壊さずによかった

次の会場に行こう

魔法技術試験かぁどんなことするのかな?

会場は3つに分けられている様だ僕が行く所はっとあっちかな?


「では、次の試験は魔力技術だ…君たちにはこちらで用意した的に向かって魔法を打ち込んでもらう…毎年ここで勘違いをする者がいるのだがこれは的を壊して魔法の威力を判定するのではなく、あくまでも技術を我々は重要視している事を忘れないでもらおうか…では、呼ばれたものから白線の位置に立ち魔法を行使したまえ」


受験生が次々と呼ばれて魔法を打っている…がどうもレベルが低いな…僕の年代ならこんなものなのだろうか…


「次、マリアベル・アストラル…殿下」


お、次はマリィの番か


「先生、この学園は身分による格差は禁止の筈です、お気遣いなくお願いいたします…では、参ります」


「は、はい…失礼致しました…」


あ、相変わらずの表情…いや成長して更に氷の女王みたいだそ…先生がビビってる…


「ふぅ…………ハァ!!氷鉢!」


マリィの指先から小さな氷の針が打ち出され的の真ん中に命中する…周りがざわつくが次の瞬間的から氷の棘が突き出してきた…


「マ、マリアベル殿下…今のは…」


「氷鉢…氷の針を対象に差し込み内部へと魔力を浸透させ内側から突き破ったのですわ!」


会場は呆然としていた…え、えげつない…これ生き物にやったらかなり悲惨なこ事にならないか…


「そ、そうですか…で、ではこれにて試験は終了です…結果は王城へと届けてられるので今日はお帰り頂いて結構です…お疲れ様でした…」


「えぇ、わかりましたわ」


マリィは優雅に一礼をして会場を後にする…僕とすれ違って「入学式で待っているわ」といい去っていく…自分も僕も受かるって疑ってないな…


「次、アークライド・ルグウィン受験生」


「よし……行きます」


僕は剣を抜き魔力を纏わせる

そして剣を振り抜くと……遠くの的が切れ切り口から炎が噴き出る


今のは剣に纏わせた魔力で斬撃そのものを打ち出したのだ…そこに炎の魔力付与を施し炎の斬撃を遠距離に飛ばす事ができたのだ

師匠に見せたら「意味がわからん…」って言われたけど…父上も出来るのに…


「ア、アークライド受験生…い、今のは…」


「え?魔力を剣に纏わせて斬撃を飛ばしました、直接は剣を使ってないので大丈夫だと思ったんですが…ダメでしたか?」


「あ、いや…魔力付与も素晴らしい技術なので問題はないのだが…ゔうん、アークライド受験生…魔力付与は基本的に卒業試験として3年生になった時に学ぶ物なのだが…どうして使えるのだ?と言うか斬撃を飛ばすとは一体どうやって!いや!どれだけ使い続ければあの様な…」


「せ、先生!落ち着いてください!まだ受験生は残っています、僕の試験に問題なければ次の人に…」


「あ、あぁそうだな…すまない…後は学園で聞こう…君が来るのを待っているぞ……では、次……なっ!」


ふぅ、僕は礼をして会場を後にして歩き出すと次に呼ばれた受験生の名に足が止まる…


「……ヴァニタス・ノア・ワール受験生…」


!!な、何だって!?

ワールってワール帝国の皇子!?どうして…

そこには血で塗られたかの様な赤い髪と瞳をした黒衣を纏った少年が立っていた…あれがワール帝国の皇子…

アストラル魔法国とワール帝国はここ数年間かなり険悪な関係を続けている…ワール帝国が大陸制覇を狙っている為に、我が国どころか周辺諸国も注意を払っている…ワール帝国はこの国魔法技術を得てそれを足掛かりに大陸制覇へと進める事を狙っているのは周知の事実だ…

それなのに皇子をこの国に送り込んでくるなんて…何を考えている…


確かワール帝国にはあの第一皇子と双子の姫が居たはず…それ以外に帝国の皇帝の子はいない…それなのに…


「…………闇の槍」


ヴァニタス皇子は闇属性の槍を生み出し投擲する………「は?」

的は音もなく跡形もなく消えた…


な、何だ…今の魔法は確かに槍が的に命中したけど気がつくと的も槍も消え去っていた

皇子は何も言葉を発する事なく会場を後にした…


「ふふふ…流石ですね…」


不意に横から声がした…この方へと顔を向けると…既視感がある…ついさっきだ…この赤い髪と瞳…同じ歳とは思えない綺麗な顔立ち…なのに妖艶な雰囲気が漂う様な黒のドレスを着た彼女は…


「つ、次…ッ!バカな………ア、アンゼリカ・ノア・ワール受験生…」


「あら、呼ばれてしまいましたわね…また教室でお会いしましょう…ふふ…アークライド・ルグウィン様…」


………て、帝国は何を考えている……後継者を全て他国に留学させるなんて、2人しかいない後継者なんだぞ…留学させるならどちらかだろうに…


……それにアンゼリカ皇女…何故、僕の名を…



「ふふ…では…………炎蒼」


皇女が詠唱を唱えると的が蒼白い炎に包まれた


「蒼い炎……」


なんて洗礼された魔法だ…彼女の魔法は一言で言うと美しかった…


「ふふ……」


彼女は僕を見て声は出さずに口だけを動かした…僕は何故だか何を言っているのか理解できてしまった…


「必ず、貴方を手に入れる」


そう…言っていた……






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る