第28話 遠慮はいらないな


アメリアとの蟠りを解消してから月日が流れ僕は14歳になった

12歳で社交界へとデビューも果たして、父上または母上と共にパーティーへ参加したりしていたが正直言ってつまらない…絡んでくるのは、ルグウィン家の公爵家という権力目当ての貴族ばかり…この人本当に貴族でいいのかって人もいて領民が心配だ…


2年ほど社交界に揉まれたが来年には学園へと通うためこの一年はその準備をしなくてはいけない…準備と言っても制服の採寸や学生寮や教材の手配など僕がする事なんかないんだけどね…


勉強も小さい頃からの家庭教師と師匠もいるし学園で学ぶ事は学び終えているので成績は安心だ…


そんなある日僕はアメリアとアルの3人で死の森へと足を運んでいた


「アル!そっち行ったわよ!」


「任せる…です!!」


「おぉ、流石…息ぴったりだね」


アメリアが魔物を誘導してアルが仕留める単純だが死の森の魔物相手にこれが出来るのは限られた人間だけだ


「アル、こんなもので討伐数足りるかしら」


「問題ない…です」


今回はあアルの冒険者としての依頼に同行させてもらっている

カオスグリズリーの10体討伐Sランクの依頼だ…アル1人でも難なく済ますだろうけど僕が体を動かしたかったからお願いした…するとアメリアも付いてきてしまった為、すぐに依頼達成した

僕の出番がないなこれ…


「アーク!何してるのよ!解体手伝って!」


「は〜い…今行くよ」


「アメリア…そこは…貴重…もっと…丁寧に…です!」


討伐した魔物の解体を進めていると妙な気配を感じ取った


「なんだこの気配…弱々しい魔力も感じる…近づいてくる、2人とも警戒して!」


僕が声をかけるも2人は既に戦闘体勢に入っていた流石だ

茂みを掻き分けて現れたのは


「子犬…です?」


「いえ、アーク…この子…」


「あぁ…フェンリルだ…」


討伐難度SS神獣フェンリルの幼体が傷だらけで姿を現した…


これはハッキリ言って異常だぞ


「2人とも警戒はそのまま…いやさらに周りに気を配っていざとなったらテレポートで離脱しよう…」


「どう言う事…です?」


「フェンリルが子供だけなんておかしいんだ…ましてやこんなに傷だらけなんて…」


フェンリルは子供が産まれて大人になるまで決して側を離れたりしないんだ…それに子供でも神獣だ他の魔物は本能的に避けるんだよ…一体何が…あっ!


子フェンリルが限界だったのか倒れた僕は咄嗟に受け止めた…酷い怪我だ…


「これは他の魔物による傷じゃない明らかに人の手によるものだ…」


どうして…こんなにも怒りが湧いてくるのだろう…


「見せて、アーク」


アメリアが子フェンリルの容体を確認して回復魔法を掛けた


「アメリア…良いのか?」


「私はエレナ様程、回復魔法は上手くないのよ…あまり期待しないで…この子だいぶ弱ってる」


僕はアメリアに子フェンリルを託した、茂みを確認すると血痕が続いているこれを辿れば何かわかるかも


「アメリアその子頼むよ、アル治療中の守りは任せた…僕は原因を調べてくる…」


「了解…です!」


「任せて、容態が安定したら追いかけるわ」


2人に指示を出し、地を蹴るかなり距離があるな…こんな距離をあんな怪我で…見えた!

少し開けた場所に人間と獣人、そしてフェンリルがいた

やっぱり人がいるのか…こんな場所に…

フェンリル…まだ息はある…でも動けない様子だ


人数は3人何者だ…フェンリルをあんなふうに捕らえてるなんて…


もう少し近づいてみるか…

透明化を発動し気配を殺しながら近寄ると声が拾えた


「子供を逃したのは痛いな…」


「仕方ないさコイツが思っていた以上にしぶとかったからな」


「しかし、これでオレ達にも拍が付く…なんせフェンリルを捕えたんだからな」


「さっさと街に戻って売っちまおう!」


密猟者か…確かにフェンリルは危険な魔物だ…普通は人の来れない場所で暮らしてはいるが人を襲わないわけじゃない…だから討伐する事自体は罪ではない…けれど…


あのフェンリルは子供を守った…子フェンリルも懸命に生きようとしていた…これは僕の自己満足…でも、それでも!


僕は奴らの背後に周り2人の首を掴む


「うっ!」 「ぐっ!」


「おい!どうした!」


残りの獣人に突きを放つ!


「ぐほっ!」


あっけないな…この程度でフェンリルを捕えられるはずはない…罠でも張ったのか…!そんなことよりフェンリルの拘束を解かないと…


よし、この程度なら解除できる

フェンリルを拘束している魔法を打ち消した

けと傷が酷い…これはもう…!!

僕はその場を飛び退く


「おいおい、今のを避けるのかよ!完全に死角からの不意打ちだったじゃねぇか」


「殺気がダダ漏れなんだよ…誰だお前は…」


「それはこっちのセリフだ…そいつらをのしちまいやがって…」


「コイツらの仲間か?」


「あ?コイツらはただの運び屋のつもりで連れてきただけだ、用が済んだらサヨナラさ…この世からな」


「どうやらゲスの様だ…なら遠慮はいらないな」


「なんだと…それよりてめぇみたいなガキが何故こんな所に嫌がる!ここは死の森だぞ!」


「それこそ貴様には関係ないことだ…」


「そうかよ!ならとっと死にな!」


男が剣を払う…僕は男の腕を掴み捻り上げて剣を取り上げる


「ぐぅぅ…なんだ今の動き…」


「…あのフェンリルの拘束はお前がやったんじゃないのか…それにあの傷も…」


「あぁ!?誰がてめぇなんかに!喋ることは何もねぇ!」


「なら!もう眠っとけ!!」


顔面に魔力を乗せた掌底を打ち込み男を吹き飛ばす……周囲にもう気配はない…

明らかにフェンリルに勝てる実力があるとは思えない…


「アーク!」


「アメリア!あの子は?」


「大丈夫よ、助かる…でも…」


アメリアは横たわったフェンリルに目を向ける…子フェンリルが親に擦り寄ってる…くそ!


「アーク様…コイツら…どうする…です?」


「とりあえず…連れ帰って騎士団に引き渡そう…」


「了解…です!」


「ウォン!」


「ん?…お前…どうしたんだ」


子フェンリルが僕の前に行儀良くお座りしている可愛い…


「一緒に連れて行って欲しいんじゃない?」


「でも…魔物…です?」


「……一緒に来るか?」


「ウォン!!」


「良いの…です?」


「まぁ、良いんじゃない?フェンリルは知能が高いし私達には心を許してるから、問題ないでしょ」


「よし!なら今日からお前はフェリだ!」


「クゥン?」


「名前だよ、お前の名前はフェリ!よろしくな!」


「ウォンウォン!」


こうして新しい家族ができた…出会いはいつも突然である

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