第23話 何を言ってるんだ?
お茶会より数日後マリィが師匠に会いにルグウィン家に来訪していた
あの後僕とアメリアは師匠によるありがたいお話し(折檻)を受けた…10年振りに受けた師匠のお話しは懐かしくもあり、もう2度とごめんだと思った
マリィは師匠とその弟子である母上とアメリアとエステルも一緒に庭園にあるテラスでお茶を楽しんでいる
僕は父上と一緒に第三騎士団に向かう為、馬車に揺られていた
父上が何やら急いでいたので気になってついて来た…向かう途中で話を聞くとどうやら第三騎士団と冒険者が揉めたらしく怪我人まで出たそうだ
正直僕は多少の諍いで第一騎士団長の父上が出向く事はないんじゃないかと思っている…怪我人が出ているのだ不謹慎だが聞いてみようかな…
「あの…父上、今回の件聞いた限りでは父上が行く事ないのでないですか?」
「お前は、そう思うか…」
父上はまっすぐ僕を見て問うてくる…僕も目を逸らさずに正直に答えた
「はい、諍い程度なら第三騎士団の師団長で事足りると思います…それに父上は第一騎士団長であるのですから管轄違いではないのですか?」
「確かに第一と第三に限らず全ての騎士団の指揮系統がそれぞれの師団長に別れているだが、第一騎士団長だけは陛下によって任命されるこの意味がわかるか?」
なるほど…つまり
「陛下から第一騎士団長を任されている父上は騎士団全体の総括であると」
「その通りだ、私の立場に明確な地位があるわけではないのでお前の抱いた疑問は最もだ」
「しかし、それを踏まえても今回の件は父上が出向く必要があると思えないのですが…」
冒険者と揉めただけなら、いくら怪我人が出ていようと騎士団の総括の判断が必要なのだろうか…
「確かにその程度なら部隊長で充分だ…本来ならば…だが第三からの連絡では私の判断が必要だと報告があった」
「何かがある…と言う事ですね」
話していると馬車が止まった…どうやら着いたようだ…僕達は出迎えに来た騎士と共に演習場へと向かった
そこにいたのは第三騎士団の騎士達が大勢倒れていたのである…その中心には1人の少女が身の丈以上の大剣を片手で持って立っていた…
「な、何だこれは!一体どういう状況だ!マーク!マークはどこだ!」
父上も困惑しているようだ…マークとは恐らく第三期師団長だろう……しかしどうしようめちゃくちゃ見覚えがあるなあの女の子…それにあの大剣も…
「アドルフ!来てくれたのか…助かる…」
あれが第三の団長か岩男のような人だな
「マーク!無事の様だな、早速状況を説明してくれるか…この倒れている騎士達はどうしたのだ…外傷は無いようだが…それにあの少女は…まさか…」
「倒れている奴らは全員あの化け物にやられた」
化け物だって?この人は一体何を言っているんだ…
「騒ぎを聞きつけ駆けつけたらすでに奴と騎士達が戦闘を始めてやがって取り敢えず奴を押さえ込もうとしたんだが。かなり強くてなまるで歯が立たない…」
それじゃあどちらに非があるかはわからいじゃないか…それに彼女相手では騎士団じゃ敵うわけない…
「それはそうだろう…彼女の実力は世界屈指だろうしな」
「アドルフ…奴を知っているのか!?」
「全く、冒険者ギルドからも公表されているだろう…」
そう…彼女はギルドが認めた世界にも未だに4人しかいない最高位の冒険者…
長い黒髪を後ろで束ね黒真珠の様な瞳をもつ可憐な少女
『亡国の戦姫』の異名を持つ、冒険者ランクSSSランク アルシェール・ノア・ライゼクス
かつて僕らと共に戦った彼女がそこには居た…
「そんな…SSSランクなんて国を落とせる力を持つ者だろう…なのにあんな小娘が…」
……ちょいちょいこの人の言い方に腹が立つな、それにそんな事彼女に聞かれでもしたら…
「彼女は見た目は幼いが、歳は歳はお前の息子と同じくらいだぞ」
「何!あの見た目で20を超えているのか!」
あ!そんなに大声でそんな事言ったら
「誰が、幼児体型、です?」
正に一瞬、演習場の中央に居た彼女は気がつくと父上とマーク団長の間に立っており大剣をマーク団長の首へと突き立てている
相変わらずの速さだな
「見た目に違わぬ怪力、そして神速…間違いないな……戦姫アルシェール殿とお見受けする…その男が失礼な事を言ってしまい申し訳ない…どうか剣を引いてはもらえないだろうか…」
「わかった、でも、私、子供じゃない、です…あと…もう姫でも…ない…です…私は、ただのアルシェール、です」
彼女が剣を引くとマーク団長は腰が抜けた様でその場に青い顔をして座り込んだ…
「アルシェール殿、それでこの状況は一体何があったのか…お聞かせ願うでしょうか…場合によっては貴方を拘束しなければならない」
「人を探しに来た…です…聞き込みをしていたら…騎士の人たちに…ここへ連れてこられた…です…それで…剣を取り上げられそうに…なったので…抵抗しました…です…そしたら…切り掛かって…来た…です」
これは明らかにどっちにも非があるな…騎士達は職務を全うしただけ…彼女は嘘なんかつかないけど、やり過ぎだよ……
その後、父上が彼女を連れて来た騎士達に改めて話を聞くとあんな少女が身の丈に合わない大剣を持っていることで怪しいと思い、話を聞くと言葉を詰まらせるので、疑いが強まりここへと連行したと…それで武装を取り上げようとして抵抗されたので剣を抜き切りかかって返り討ちにあったと…先に手を出したのは彼らか…
アルシェールは少し人間不信な所があった…10年で改善されたかと思ったがあの様子じゃ今だに引きずっているのだろう…話し方もゆっくりというか、ちょっと変わっていてる…でもしっかりと会話は出来るのでちゃんとお互いにちゃんと話を聞けばこんなことにはならなかったはずだ…現に父上とちゃんと会話出来ている…
「こちらにも、非がある様だ…アルシェール殿改めて謝罪を…申し訳なかった…しかし…もっと穏便には出来なかったのかね?」
父上が謝罪をするがやり過ぎているのは彼女の方だ…何人もの騎士を倒したのだから
「ごめんなさい…です…人を探していて…です…シュウ様…知らない…です?」
どうやら、悪いとは思ってる…のか?もう自分の要件を話し出したぞ…相変わらずマイペース…彼女の質問を受け僕を見ると彼女も僕を見る…あ…
「シュウ様…です?…顔…違う…小さい…でも…気配…同じ…です」
あーこれは明らかに僕ってわかってるな
でもここじゃあ…父上に目配せを送る
「……アルシェール殿、今回は互いに非があるがあり、先に手を出したのはこちらだ…だが、貴方のした行為は過剰に過ぎる…しかし、騎士達はどうやら意識を刈り取られただけの様で外傷もない…こちらも冒険者ギルドと揉め事はなるべく起こしたくはないのだ…」
「一応…手加減は…した…です…でも…やり過ぎたな…と思ってる…です…お詫びは…する…です…でも…私は…戦う事しか…出来ない…です…」
「………ならば、我々騎士団だけでは対応しきれない事態の時に貴方の腕を借り受けたい…それで謝罪として受け取ると言うのはいかがでしょうか…」
「戦闘…なら…任せて…です」
「わかりました、ではその様に……息子に話がお有りでしたら、私の屋敷をいらしてください…そこでお話をするといいでしょう」
「いいの…です?」
「えぇ、勿論」
「なら…行く…です」
とりあえず穏便に済んだようでよかった…
父上が彼女を屋敷へと連れて行くようだ
師匠とアメリアも呼ばないと…そういえばマリィはもう帰ったかな?
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