第13話 私の夢③

〜アメリア視点〜


時空超越魔法

それは時間、空間を操り世界の理へと干渉する魔法

「な、何これ…お兄さん…なんでこんな物を…もしかして調べ物って…」


ガチャ


「ッ!!!」


「!!アメリア!どうしてここに?!」


勝手に入っている所を見られたでもそんな事はどうでもいいくらい私は混乱していた


「お兄さん…これ…何?……なんでこんな物調べてるのよ…」


「…………………」


お兄さんは何も答えてくれなかった


「なんでよ!!なんで何も言ってくれないの!!私はもうこれがどれほど危険なものか理解できる!ちゃんと説明してよ!じゃないと私お兄さんが……」


「ごめん……君には関係ない事だ……」


私はその瞬間お兄さんが何を言ったか分からなかったいや、分かりたくなかった


「ど…どうして…」


どうして突き放そうとしているお兄さんが辛そうな顔してるのよ

一体あなたは何を抱えているの


「こいつはこの世界の人間じゃない」


「「!!!」」


「師匠!」「お師匠…」


扉の入り口にお師匠が立っていた


「あんた達うるさいよ、全く」


「お師匠!お兄さんがこの世界の人間じゃないって…どういう事!」


私聞かずにはいられなかった


「言った通りの意味だよ、こいつは2年前この森を彷徨っていた所を私が拾ったんだ」


お兄さんもお師匠に拾われてたんだ


「それで訳を聞いたら明らかにこの世界の認識とのずれを感じてね、こいつの体を調べたら超大型の魔法痕跡があった、その紙にある時空超越魔法並みの痕跡を」


「ッ!」


「そしてこいつに色々質問してこことは違う世界からやってきたとわかったわけさ、そしてコイツの目的は」


「ッ!!師匠!それは!」


お兄さんが怒鳴るがお師匠は構わず私に言った


「元の世界への帰還だよ」


それを聞いた瞬間私は頭を殴られた様だったお兄さんが別の世界の人間?お兄さんはこの魔法を解き明かせばいなくなるの?この世界から?そんなの…そんなの…


「せっったい!いや!!!」


バチバチッ!!!ッパァァン!!!


私はお兄さんの机に向かって稲妻を打ち出そうとすると


「家を壊すんじゃないよ」


お師匠にあっけなく止められた


「ッッ!!!」


「アメリア!!」


私は窓から外に出たお兄さんが私を呼ぶが今は聞きたくなかった


「ダメだ!アメリア!君はまだこの森では………」


お兄さんが何か言っていたが私には聞く余裕はなかった


夢中で走った走って走って走って

頭の中がグチャグチャだ

悔しかった

何も言ってくれないことが

悲しかった

いつかいなくなってしまうのが

嬉しかった

ほんとの家族と思えるくらい優しかったから

好きだった

お父さんとお母さんみたいにお兄さんと家族になれると思っていたから


全てを失った私に再び生きる希望くれたのはお師匠とお兄さんだ


なのに…なのに…


「ううっ……ハァ……ハァ……っあ!」


木の根に足を取られ盛大に転んでしまった


「ハァ、ハァ、つッ!」


足から血が出ている転んだ時に石か枝で切ったようだ


「うぅ…お兄さんの……シュウの…バカ兄弟子……」


ガザガサッ!


森の暗闇から大きな影を見た


「!え?」


グゥゥゥゥ


「う、嘘……」


それは死だった

たった一体、人里に降り立つと国が総力を上げて存亡をかけて討伐しなければならない化け物

討伐難度SS神獣フェンリル


私はその圧倒的な存在感に息すらできずにいた


「ア………ウゥ………」


もう終わるの?こんな所で?お兄さんに何も伝えてないのに…


フェンリルがゆっくりと近づく口を開け私を噛み殺そうとして


「おい、犬コロ俺の家族に何してる」


ゴォォォォォォォ


大きな炎の渦がフェンリルを包む


「アメリア!大丈夫か!」


お兄さんが私に声を掛けてる


「足!怪我してるじゃないか!」


私は目が離せなかったあの大きな炎を

やがて炎は治りフェンリルは灰となっていた


そこでようやくお兄さんの顔を見ると


「お、お兄ざん……ご、ごわがっだよ〜」


緊張の後が解けたのか、安心したのかお兄さんに抱きついた


「ア、アメリア、ホント心配したよ」


「ごめんなざい〜おにーざんがいなぐなっぢゃうと思っでわたし悲しくてぐやじぐで〜お兄さんのごどだいずぎだがら〜おどーざんとおがーざんみたいにお兄さんとなりだいがら〜」


「えぇ〜アメリアそれって」


「うぇぇぇぇん〜……」


私は感情のまま思った事を伝えて人生で初めての酷い告白をした


「……落ち着いたか?」


「う、うんもう大丈夫」


わ、私一体何を言ってるの〜物凄く恥ずかしい……あんな顔グチャグチャにしてお兄さんに告白するなんて最悪だよぉ顔見れないよぉ


「…アメリアあのさ俺家族がいるんだよ向こうの世界に」


「え?」


お兄さんが突然言った


「父さんと母さん、それからアメリアと同じ歳の妹が」


「そ…なんだ…」


そうだ、なぜ気づかなかったのだろうお兄さんにだって家族がいるんだこの世界に迷い込み誰もどこも知らない場所にただ1人でそれでも諦めずに家族のもとは帰ろうと


家族を失う事、知っている人達が誰もいなくなる辛さは私が1番わかってたはずなのに


お兄さんがいなくなるという恐怖でそんな事考えもしなかった


「お兄さん、ごめんなさいお兄さんの気持ち私わかるよ、寂しもんね会えないのは…」


「アメリア……」


お兄さんが私の頭を撫でる


「俺さ2年前に家で寝て朝起きたらこの森にいてさ魔物に追いかけられて死にそうな所を師匠に助けて貰ったんだ、それでそこから師匠に弟子入りして元の世界への帰還方法を探してる今までずっと」


私は黙ってお兄さんの話を聞いた


「師匠は俺がこの世界に来た理由に興味があるらしく協力してくれてる、それで師匠と2人で研究を重ねたどり着いたのがアメリアも見た時空超越魔法だ」


「アメリアも言っていたが、あれは危険だ使い方を間違えれば時空は歪みこの世界どころか俺の世界まで消えてしまうかもしれない…」


「でも、俺は諦めない必ずあの魔法を完成させて家族の元に帰る」


私の心がまたズキズキと痛む


「俺はこの世界では異物だ、本来いてはならない存在なんだ…だから…アメリア俺を深く抱え込まないで欲しい」


「いや」


即答だった自然と否定の言葉が出た


「いやしかし俺はこの世界「そんなの知らない!」


お兄…いやシュウの言葉を遮り私は立ち上がった今言わなきゃ!


「私が好きになったのは別の世界の人間じゃない!今ここで家族の為に必死で帰ろうとするシュウあなたよ!」


涙が溢れる構うもんか

そういえば村がなくなってから初めて泣いた

皆が死んだ時泣かなかったのにきっと心が壊れてたんだ

直してくれたのは今目の前にいる私の好きな人


「私はこの想いを捨てない!あなたにも否定させない!あなたがいつかいなくなったとしても私はあんたにシュウに恋をした事を忘れたりなんかしてやるもんか!」


「でもアメリ「うるさい!黙って聞け!」は、はい!」


「いい!もう私は遠慮なんかしない!自分の心のままにあんたを落とすわ!たとえアンタが帰っても私を忘れられなくしてやるんだから!これは宣戦布告よ!覚悟しなさい!バカ兄弟子!!」



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