老人二人

東北地方に拠点を構える【スタジオ・Coco】。

ケーブルテレビとして東北を拠点に活動し今日も今日とて仕事に勤しむ…


「だーかーら!! やる必要ねぇって!!」

「やろうって!!」


そのスタジオ・Cocoにて二人の男が言い合っていた。

一人はスタジオ・Coco代表の綾瀬川あやせがわ 鳴。

元は第50代トップアイドル舞薗のマネージャーだったが

後に独立しスタジオ・Cocoを立ち上げた。

独立後に結婚し綾瀬川姓となる。

もう一人はスタジオ・Cocoの総合マネージャー薄墨うすずみ タカラ。

綾瀬川の義弟であり、 彼も結婚し婿入りし薄墨姓となっていた。

彼等はもう既に70を超えた老人なのに未だに現役である。


「デスゲーム系の番組は良いって!!

もうネット上の殺人番組スナッフチャンネル

とか一杯あるんだし、 飽きるって!!」

「いやいや

名企画者鳴の企画したデスゲームが見たいって声が結構多いんですよ!!

アイドルデスゲーム参加アイドルのマネージャーだったし!!」

「ぶっちゃけアイドルなんてもんはマネージャー無しでも上手く行くんだよ!!」

「いやいや!! 鳴義兄さんの担当アイドル有名どころ多いじゃないですか!!」


ピタ、 と止まる綾瀬川。


「連中は俺のネームバリューで何とかなった連中だ

実際大した事無い奴等だよ、 今も現役の奴居ないだろ」

「そりゃあ70超えでアイドルやってる女は確実にどっか可笑しいでしょう」

「芸能界に居るって事だよ、 アイドルじゃなくても

芸能界に居る事は出来るだろう」

「難しいんじゃないですか? 70超えの芸能人って

本当に大物しかいないじゃないですか、 というか居るんですか?」

「照星 よばりが居ただろう」

「誰ですかそれ」

「・・・・・」


はぁ、 と溜息を吐く綾瀬川。


「お前、 アイドルとか見ないのか? 俺と同年代だろう」

「2個下ですよ」

「それでもほぼ同年代だろう、 照星よばり、 知らないのか?」

「さぁ、 知らないですねぇ・・・」

「よばり知らないで良くもまぁ・・・」


はぁ、 と溜息を吐く綾瀬川。


「まぁマーケティングとかを専門ですからアイドル関係は疎いですかね」

「俺の担当アイドルとか知っていた様だが?」

「そりゃあ義兄さんの経歴位は調べますよ

大事な姉さんの結婚相手ですし」

「唐突に俺の前に出て来たのはビビったな

マジで心臓止まるかと思ったな」

「ははは、 驚かせてすみません」

「お前の姉も良い女だったよなぁ・・・」


遠い目をする綾瀬川。


「義兄さん・・・」


すると携帯電話が鳴った。


「もしもし?」

『あぁアンタ? 悪いけど帰りに生姜買って来て』

「はいよ、 今日は生姜焼き?」

『そ、 速く帰って来なよ』

「はーい」


電話を切った。


「姉さん生きてるんですからそう言う事言うの止めて下さいよ」

「良い女だったな、 って話」

「じゃあ今は?」

「良い妻だ」

「のろけですか」

「のろけだよ、 お前の所の女房は如何した?」

「まだ仕事ですね」

「そうか、 それは大変だな、 晩飯一緒に食うか?」

「生姜焼きですか? 無理っすよ、 っていうか良く肉喰えますね」

「肉喰う方が長生きするってよ」

「聞いた事ありますけども、 義兄さんどんぶり飯とか平気で喰うじゃないですか」

「まぁね、 食えるうちが花さ」

「100年後も言ってそうですね」

「100年後は流石に墓の下だろ」

「いやいや、 今の医療技術は凄いんですよ

200はイケるんじゃないかって話です」

「200歳は流石にキツイだろ・・・」


けらけらと談笑する二人。


「でも何でデスゲームが嫌なんですか? 前からずっと嫌ってましたよね?

舞原さんの事引き摺っているんですか?」

「馬鹿を言うな、 もう70年も前だぞ、 流石に引き摺って無いさ

俺がデスゲームを嫌っているのは面白味が無いって事だよ」

「面白味が無い?」

「そう、 ゲームが面白ければ死ぬ必要は無いだろう

要するに企画のつまらなさを死ぬって言う緊張感を持たせて

無理矢理面白くしているって言う所が気に食わないって事

それで面白くなっている物もあるよ

殺人番組スナッフチャンネルでのデスゲーム企画とか

でもまぁ、 それでも一握りだろう

過激な事して『面白いでしょ?』とか言いたげな番組だ

そして俺達はケーブルテレビだ

使える手駒アイドルは殺さずに長く使いたい

手駒アイドル無くして素寒貧な事務所も有ったしな」

プロピープロダクション・ピーチですか?」


プロダクション・ピーチは舞原の死後、 急激に名をあげた。

アイドル候補生が殺到し大きなプロダクションとなったが

社長の桃葛ももくずが引退し後を引き継いだ本葛ほんくず

テレビ局と揉めてインターネット上で殺人番組スナッフチャンネルを設立。

殺人番組スナッフチャンネルでは人気チャンネルとなったが

所属アイドルを多く殺した結果

プロダクション・ピーチから多くのアイドルが脱退。

困った本葛は素人宅に強襲し皆殺しにするという企画

『突撃!!隣の殺人ショー!!』を始めるも反撃に遭い死亡したのだった。

プロダクション・ピーチはその後、 債務過多により倒産したのだった。


「流石にアレは酷いな、 仕事辞めて独立して良かった」

「でも本葛がマシンガンで撃たれるのは笑いました」

「ハッキリ言って無謀だよなぁ・・・何で反撃されないと思ったんだろう?」


不思議に思う綾瀬川だった。


「三強以外に残っている事務所も少ない現状だ

アイドルは大切に育てていきたい」

「三強以外には、 あとは・・・パッと出るのはともよしとか?」

「金銀寺かぁ・・・今は三代目だっけ?」


金銀寺 玉蘭はアイドルデスゲームの後にもアイドルとして活動を続け

地味だが必須と言うポジションを得て長年活躍したが

引退し、 今は孫娘の金銀寺 極彩ごくさいが後を継ぎ

今でも孤島でのアイドル活動に勤しんでいる。


「昔は島々を泳いでいたのに、 今は豪華客船で巡業か・・・」

「あぁ、 この間沈没して結局泳いでの巡業になったらしいですよ」

「それは大変だなぁ・・・」


画して彼等はグダグダと喋りながら

これからの企画を如何するのか考えているのだった。





西暦4600年、 日本放送はアイドルデスゲームの人気低迷を受けて

アイドルデスゲーム60回大会を節目に終了する事を決定した。

そしてヴァーチャルアイドルにフルコミットする事を決定。

この事が切欠となり人類はサイバー空間に対しての関心を強め

西暦5000年、 人類は遂にサイバー空間へと

意識ダイブを行えるようになるのだがまたそれは別の話だった。


いずれにせよアイドルデスゲームが無くなろうとも

人類は変わらずに過ごすのだった。

乙女の生の叫びは世界に何ら動かす物では無かった。


アイドルデスゲーム★乙女の生の叫びを聞け・完

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アイドルデスゲーム★乙女の生の叫びを聞け @asashinjam

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