社長室にて

日本放送本社、 社長室。


「アイドルデスゲーム決勝の最中だと言うのに私に用とは何だね?」

「貴方が一番御存じの筈だが?」


梅干と杉野、 二人に対面する個個と京谷。


「舞原のマネージャーとして納得がいきませんね」

「私も欄の父として納得が付く説明を求めたい」

「説明、 とは?」


首を傾げる杉野。


「こんな事態になっていると言う事ですよ

何故よばり様暗殺犯を殺す事が勝利条件と言う設定にしたのですか?」

「私も同意見です、 下世話な話をさせて貰えれば

私は杉野さん、 貴方が裏で手を引いているのではないかと疑っています」

「私が? 何故?」

「先程欄とランミとか言う奴が話していましたが

ランミとやらがよばり様を暗殺出来る理由が無いでしょう」

「ランミの実力を貴方は理解していると?」

「さぁ、 存じませんね」

「ならば「しかし!!」


杉野の言葉を遮る京谷。


「私が言いたいのはランミとやらが

暗殺者としてのスキルが卓越しているかもしれない

それは別に良い、 だがその暗殺者として卓越なスキルを持った者が

アイドルになりよばり様を殺したのは納得がいかない」

「何故? 戦闘能力を上げるのはアイドルでもやっている筈」

「そうでしょうとも、 だがしかしここで肝心なのは

戦闘能力を幾ら向上してもアイドルではよばり様には

絶対に叶わないと言う事です」

「ちょ、 ちょっと待って下さい!!」


梅干が制止する。


「今の時代、 いやこの世全てははインフレーションするんですよ?

10秒の壁の様に人類は100m走を10秒切れなかった。

ジム・ハインズがこの記録を破ってからは続々と10秒切りが増えていった

人類はインフレーションを起こしてどんどん先に行くんです

よばり様は凄いが現在のアイドルも」

「確かに君の言う通りだがよばり様にはその法則は当てはまらない」


ぴしゃりと言い切る京谷。


「彼女は自分以外の人間が歌って踊っていると不安になって

動画投稿を初めて即席ライブをする様な上昇志向と緊張感を持っている

彼女がインフレーションの最前線だったと言って良い

だがしかし戦闘力関係無い暗殺者ならば殺されても

まぁ得心が行く、 それでも超一流の暗殺者だろう

話しは戻るが暗殺者として卓越なスキルを持った者が

アイドルになりよばり様を殺したのは納得がいかない

明らかに何らかの意図を感じるのは不思議な話では無い」

「それが私の企みだと?」

「この国で起こった事なのだから貴方を疑うのは当然かと

そもそもよばり様を殺せる暗殺者を育てられる機関なんて政府位だと思うが?」

「全て憶測ですね・・・残念ながら全て勘違いですよ」

「信じられないな」

「本当ですよ、 もしも殺すのならばもっとドラマチックに殺しますよ

その方が盛り上がって国民の追悼ムードで支持率と金が稼げる

そうでしょう梅干社長」

「え、 えぇ・・・」

「京谷さんの話は興味深いのですが僕が想定しているのはもっと別な話です」


個個が話しに割って入る。


「よばり様を殺した人間を彼女達に殺せると思っているのですか?

私ども芸能関係者にとってはよばり様はまさに太陽の如き絶対強者

そのよばり様を暗殺とは言え弑逆しいぎゃくした相手を殺せるとは

私には到底思えない、 余りにも無茶が過ぎる」

「いや、 少年、 それは違うぞ」


京谷が断言する。


「暗殺者は暗殺こそが本領だ、 面と向かえば大分弱まる

現に良い勝負になっているではないか」

「・・・・・」


モニターを見ると確かに三者三様のいい勝負になっている。


「・・・ですがもしもランミが生き残った場合は如何するつもりですか?」

「照星よばり記念船舶コンサートホールごと爆破して殺す

衛星軌道上から天照あまてらすを既に準備してある」

「・・・・・」


天照あまてらす

日本が誇る衛星軌道兵器で原理的には通信装置であり名目上も通信衛星である。

しかし通信量が凄まじく、 破壊兵器としても転用可能であり

嘗ての宇宙戦争では各国がノーマークだった天照あまてらすの活躍で

日本の勝利と相成った。

天照あまてらすでの超ビッグデータ送信砲の威力は核に比肩する代物であり

確実に照星よばり記念船舶コンサートホールごとランミは死ぬだろう。


「そうなった場合、 トップアイドルは如何なります?」

「一人生き残りが居るだろう、 何だっけ?」

「金銀寺ですか? 一回戦敗退の?」

「彼女で良いだろう」

「そんな適当な・・・」

「少年、 あまり不安がるな」


京谷が個個の肩をぽんと叩く。


「どうせ私の娘の勝ちなのだから君が不安がる必要は無い」

「それは如何でしょうかね、 ランミとやらがついでに殺したチーフADは

舞原の姉です、 モチベーションでは此方が上ですよ」

「モチベーションか、 残念だが欄との差はその程度では埋まらない・・・

そして杉野さん、 私の疑いはまだ晴れていない

納得の行く説明と調査をお願いしますよ」

「それは問題無い、 公安に命じて背後関係の調査を既に行っている

抜かりはない」

「そうですか、 では後は欄の勝利を待つだけですかね」








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