決勝戦スタート

「ハァトハシツレイデスネ」


入って来たのはランミだった。


「お前が来たと言う事は・・・」


最低でもモフは死んだと言う事である。


「白百合、 死んだのか・・・」


意外と言えば意外な展開だったがむしろ好都合。

舞原が生き残ってもランミと二人がかりでも自分の勝ちは揺るがない。

舞原を殺せないのは少し残念だが・・・


「ヨット・・・」

「・・・・・」


当たり前の様に欄の隣に座るランミ。


「・・・・・おい、 私はアンタの友達か?」

「マッサカァ、 テキダヨテキ」

「じゃあ何で隣に座るんだ? お友達になりたいのか?」

「マァイイジャナイカ、 ハナシガシタカッタ」

「話ぃ? 何でアンタと話さなきゃいけないんだ」

「何でアンタアイドルなんてやっているの?」


言葉が急に流暢になった。


「・・・・・キャラ付けか」

「当たり前でしょ、 日本暮らしは望まないにしろ長いんだ

普通に喋れるよ、 フィリピンパブの嬢みたいにキャラだよ」

「え、 フィリピンパブの女のカタコト喋りってキャラ付けなの?」

「当たり前でしょ、 委員長全員が三つ編み眼鏡じゃない様に

フィリピンパブの嬢も演技の人は大勢居るよ」

「何だか凄い騙された気分・・・」

「お気楽な人ね、 で、 如何してよ」

「何が?」

「何でアンタアイドルなんてやっているの?」

「・・・・・母親がトップアイドルやってたんだけどさ

よばりを超えられないって焼身自殺したのよ」

「!!」


驚くランミ。


「アイドルに殺された、 みたいな事?」

「うん? 如何言う意味?」

「アイドルと言う虚像に殺されたって事でしょ?」

「殺されたんじゃなくて焼身自殺ね」

「そうじゃなくてさ、 君がアイドルになったのは母親の無念を晴らす為なの?」

「違うよ、 お母様は自分が歌うステージに火を放ったの

そして最後に思い切り歌って、 踊って・・・それがとても美しく感じたの」

「・・・・・」


信じられないと言う表情のランミ。


「ありえない・・・美しい? 母親が焼け死んだのに? それを美しい?」

「最後のショーは間違い無く美しかった・・・・・

私もあんなショーがしたいって言うのが原動力ね」

「・・・・・アンタ可笑しいよ」


ランミは立ち上がって離れた。


「命を使い切ったのよ、 お母様は

私も命を使い切るって決めたのよ」

「ただの虚像だ、 アイドルなんて物は所詮

資本主義がでっちあげたキャラクター商売に過ぎない

アイドルは金儲けの道具だよ」

「金儲けの道具ね、 資本主義経済社会に参加しているのならば

人類全てが金儲けの道具じゃない、 サラリーマンも

八百屋や魚屋の様な個人営業主も

フリーターもインフルエンサーも、 誰も彼も資本主義からは逃れられない

気に食わないなら山の上にでも篭って仙人みたいな生活でもして

『山の下の人間の眼が死んでる』とか偉そうに言っていればいいよ」

「アンタは誇れるの? アイドルを

自分と同業の女の子を殺してトップを勝ち取るこの現状を!!」

「・・・・・日和ひよってるの?」

「そうじゃないよ!! 人間としてこんな事間違っているって思わないの!?」

「アンタ第二回戦突破しておいて今更そんな事言うの?

アンタ馬鹿じゃないの? 殺し合いが嫌なら参加するなよ」

「・・・・・」


殺意の篭った眼で欄を見るランミ。


「アンタは殺す、 アンタはこの世に居ちゃいけない人間だ」

「殺すのが目的だろうが」


一触即発の空気になったと思ったらガタン、 と船が揺れた。


「?」

「如何やら出発の様ね」


船は自動操縦で何処かに向かっていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


重苦しい空気が流れているが欄は冷静に分析していた。


(このスピード・・・結構遠くに行くな

・・・一体何処に行くつもりだ?)


決勝戦の舞台が何処になるのかは分からないがかなりのスピードである。

恐らくは90ノット時速166.68㎞は出ているだろうと推測される。

明らかに早過ぎる。


(・・・・・まさか・・・)


欄はふと思いつく、 まさかあの場所・・・・に行くつもりなのか?

幾ら何でも・・・・・いや、 しかし・・・

そうこうしている内に辿り着いた場所は・・・・・


「やはりここか!!」


やってきた場所は照星よばり記念船舶コンサートホール!!

50年前に照星よばりがアイドルデスゲームを勝ち抜き

トップアイドルとなった地である!!

元々は大量の戦艦が集まった海域であり、 その戦艦上で戦っていたのだが

よばりの勝利後に改装され巨大な船舶コンサートホールになったのだ!!

ここは1年に1度よばりがコンサートを行う以外、 立ち入り禁止の筈だ!!


「遅かったじゃない」


既に来ていた舞原が仁王立ちしていた。


「・・・・・ここで決勝戦、 って事ね」

「・・・・・」

「そうね」


三者三様に睨み合う。

すると


『集まったようだな諸君』


杉野が3Dホログラフで現れた。


『決勝戦は舞原と華激の二人で戦って貰おう』

「・・・二人?」

「え?」

「ドウイウコト?」

『決勝戦は『仇討ち競争』だ!!』

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