中国地方:ゴールデン・バス③
実家に帰ったゴールデン・バス。
だがしかし。
「見兼か、 御帰り」
テレビを見ながらゴールデン・バスの兄が出迎えた。
「お兄ちゃん? だけ? 皆は?」
「葬式だよ」
「誰の?」
「姉貴の会社の上司の」
「上司? 何でそんな人の葬式に?」
「何でって結構世話になった人なんだぞ
アイドルやるって実家飛び出したお前とは違って姉貴を気にかけてくれたし」
「棘が有るわね」
「当たり前だろ、 実家飛び出してから音沙汰が無かったんだ
アイドル諦めて帰って来たのか?」
「諦めてって・・・悪いけどデビュー済みよ」
自分のアルバムCD【Memorial】を見せるゴールデン・バス。
「・・・・・」
CDジャケットとゴールデン・バスを見比べる兄。
「あぁ、 これね、 バンドの方が好きだからお前の事見てなかった」
「酷ッ!? 付け合わせの方が好きって如何言う事よ」
「付け合わせってお前の方が付け合わせだろ
ほら・・・えっと・・・センチメンタル? だっけ?」
「黄金のセンチメンタル?」
「そう、 それ殆どタケのギターソロじゃねぇかよ」
「・・・確かに多いけどもさ、 私の歌有ってのバックバンドじゃない」
「言ってろ、 で? 尚更何の用だよ、 今まで顔を出して無かったのに」
「まぁ、 ちょっと暇が出来てね
あ、 そうだ聞いて聞いて、 今度アイドルデスゲームに出るのよ」
「は?」
テレビから向き直る兄。
「山陰ミュージックだろ? 確かお前の所属は
Messiahが出るじゃないか」
「あの人の事は良いでしょ」
「いや、 無理だろ、 Messiahよりもお前は格が低い」
「いーや、 ライブじゃあ私のステージの方が客は沸いてる」
「いやいや、 それはバックバンドに沸いてるんだろう?」
「そんな事は無いわ、 私の才能が有ればMessiahにも勝てる」
「Messiahに勝ててもINAZUMAが居るだろ」
「奴も倒すよ」
「・・・・・」
呆れたと再びテレビに向き直る兄。
「勝手にしろ、 元々俺はお前がアイドルになるのは反対だったんだ
お前が何処で何をしようと好きにすれば良い、 だがとっとと出てってくれ」
「何でよ、 泊めてよ」
「親父が悲しむだろう、 無惨にも場違いな所に出て行った娘が惨敗するのは」
「・・・・・場違いかどうかはステージでハッキリするわ」
「ふん、 男一人魅了できない女が何を言うか」
「何の話?」
「蒼、 って奴居ただろ」
「蒼君? 蒼君が如何したの?」
「お前が出て行って・・・2年位か、 もりちゃんと結婚したぞ」
「は?」
ゴールデン・バスは土足で上がり込み兄を締め上げた。
「私の恋人がもりちゃん如きの夫になったですってぇ!?」
「うお!? な、 何だよ!?」
「ふざけないで!! 私達の愛情はそんなに安っぽい物じゃない!!」
「離せって!!」
振りほどいた兄。
「はぁー・・・はぁー・・・あぁ、 驚いた
兎に角詳しい事が知りたいならもりちゃんの実家の工場に行け
今、 蒼はそこで弟子入りしてるから」
ゴールデン・バスはそこまで言うと走り出した。
一方その頃、 話題になったもりちゃんの実家の工場にて
電車と駅で騒いでいた女が
もりちゃんの父である工場長に図面を見せていた。
工場長は18個の工学義眼で図面を凝視していた。
「・・・・・・・・・・アンタさぁ、 この図面
プロが書いた物かい?」
「あぁ!! その道のプロのプロ、 まさに職人が書いた逸品さ!!
まぁ書いたのは良いけども作る技術が無いのがネックでね
国家の第一線で働いていたアンタなら出来るんじゃないかって」
「ふん、 俺の
マジでプロかよ、 狂人のラクガキと一蹴してやりたいがね」
「あん? 狂人のラクガキだぁ?」
「あたりめーだろ、 ハイパワーが出せる様に排気口を作るって何だよ
速さを出したいならヘリコプターの方が良いだろう、 空飛んでるし」
「へりこぷたぁ? あんな物なんか乗りたくないね!!」
「乗りたくないね、 ってこれアンタが乗るのか?」
「モチのロンよ!! 後はパーツを作ってくれればこっちで組み立てる」
「・・・・・良いだろう、 だけども金がかかるぜ?」
「1億用意してる」
ドンッ!! と札束が入ったトランクを出す女。
「ほへぇ・・・随分出すなぁ・・・分かった、 じゃあ早速取り掛かろう」
「んじゃ、 3日後にまた来る」
「は? 3日?」
「うん、 3日」
「ざけんな、 パイプ1本2本なら兎も角この量を3日で出来るか」
「短期間での以来だからそれも含めて1億払うって言ってんの」
「・・・・・おい!! 蒼!!」
「はい、 師匠!!」
エンジンオイルで汚れながらも整った顔立ちの男。
彼が蒼である。
「お前も手伝え!!」
「ちょっと、 こんな若造にも手伝わせるの?」
「手が足りねぇんだよ!!」
「・・・・・流石に心配だからちょっと見張らせて貰うわね」
「見張りだぁ? ・・・・・まぁ若いから心配になるもの無理ないか良いだろう」
「信用して下さいよぉ、 師匠ぉ」
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