オーディエンスが求める物
玉蘭は街中を走り回っていた。
「くっ・・・」
完全な失態だった。
玉蘭は節約の為に滞在先のホテルにずっと留まり続けていた。
ホテル内のサービスを堪能で来ていたので退屈はしなかったが
その結果、 土地勘が生まれなかった。
「出ていれば問題は無かったのに!!」
そう言いながら襲い掛かって来た男を掴んでジャイアントスイング。
周囲に肉片と血飛沫が舞い、 周囲の群衆は露と消えた。
「一体如何すれば・・・」
自分は完全に出遅れた、 ここからの逆転劇は難しい。
そもそも気が乗らない、 これで本当に良いのか?
自分は別に殺人が如何とかは言わない、 アイドルは自宅に押し掛けた
ストーカーの2,30人は殺すのが常の時代である。
「これ
彼女の不安はまさにこれである。
そもそもの話、 玉蘭はテレビ出演よりもライブ派のアイドルである。
レコーディング収録よりもオーディエンスの前のライブの方が
キレが良いアイドルである。
それ故にオーディエンスが居ないこの状況。
果たしてウケているのか?
テレビの前の状態が分からない以上、 不安で仕方ない。
「くっ・・・一体如何すれば・・・ハッ!?」
このトップアイドルを決めるアイドルデスゲームの舞台。
想起されるのは最初の撮影であった。
デビューして初の撮影。
宣材写真の撮影である。
「どッーしたッ!! お前のポテンシャルはそんなモンじゃねーだろッ!!」
友義自ら写真撮影を行う。
「い、 いや、 だ、 大丈夫かなって」
「大丈夫かなだとォ!?」
「路上ライブ時代は結構ウケているって分かるんですけども
こういうのは・・・」
「ウケてるよッ!! この俺がウケてるよッ!!
持ち味は悪くねぇんだッ!! 持ち味を活かせッ!!」
「えぇー・・・」
「じゃあSNSにアップしてみるか?」
「お願いします」
宣材写真をSNSにアップする友義。
「な、 何ィ!? 一気に高評価数100!?」
「おぉ!!」
SNSで承認欲求を満たしている様で可笑しい話だが
これで自信が付いた玉蘭。
それから、 友義の配慮により、 なるべき客を入れて活動を行う様になったのだ。
「封印を・・・解くっ!!」
現代、 この状況を打破する為に玉蘭は今まで封印していたSNSを解禁する!!
「これは!!」
現在アイドルデスゲームの実況を行っているアカウントが何個も!!
自分の名を検索すると・・・
「くっ!!」
『この大舞台でケータイ弄ってんなよ』
『何やってんだコイツ』
「ね、 ナガティブ過ぎる、 ガハッ!!」
吐血する玉蘭。
『仕方ないよ、
「・・・・・それだああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
持ち味を活かす、 それに尽きる!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
即座に周囲の敵を皆殺しにする!!
なるべく血が噴き出す様に!!
結果顕現するのは血の海!! その血の海を泳ぐ!!
近畿の荒波を泳ぐ彼女は正に人魚!!
だがしかしただ泳ぐだけでは無い!!
「な、 なんd」
血の海で泳ぐ彼女の泳ぐ力は凄まじく海流、 否、 血流を作り出し
次々と立ちはだかる者達を皆殺しにしながら勢いを増し
まさに激流と化した!! その勢いはアスファルトをも引きはがし!!
超ド級の破壊流として東京を駆け巡った!!
「東京中を全て破壊する!! これでターゲットも始末できる!!」
荒っぽい作戦、 しかしド派手な演出に視聴者も心躍った!!
日本放送本社、 一旦パワードスーツも日本放送の敷地内に対比し
破壊流から逃れる、 日本放送自体はシールドを展開する事で破壊から逃れた。
「何と恐ろしい破壊の渦か」
内閣総理大臣の杉野は日本放送内の社長室にて
東京を襲う災禍を見下ろしながら呟いた。
「まことにその通りでございます」
漆の後釜の日本放送社長、
「しかしながらやり過ぎでは?」
「心配要らん、 この破壊の責任は全て連中の問題だ
遺族に全額負担させる、 『社共党』にも責任を負わせるから
連中の党会費から捻出させる、 鬱陶しいゴミ共を掃除出来てせいせいする」
「い、 いえ、 東京では無くアイドル達が
巻き添えを喰らうのではないかと・・・」
「この程度で死ぬ連中では無い、 それよりも」
梅干を指差す杉野。
「よばり殺しの犯人は分かったのか?」
「よばり様の体内のナノマシン解析は9割方終わりました」
トップアイドルはそのカリスマ性、 戦闘能力から
国家転覆を企てる恐れがあるとして首輪をつける感覚で
体内に監視用のナノマシンを注入している。
これは暗殺された場合の対処も可能である。
但しこれはトップシークレットであり、 よばり本人も知らず
その為、 暗殺者も把握していなった事だろう。
「残りの解析結果は残り10時間もかからず終わると推測されます」
「・・・・・梅干、 私の話を聞いていたか?」
恐ろしく不機嫌になる杉野。
「『よばり殺しの犯人は分かったのか?』という質問に
『よばり様の体内のナノマシン解析は9割方終わりました』?
これは質問に答えていると言えるのか?
あんまり
『よばり殺しの犯人は分かったのか?』に対する質問の答えの模範解答は
『はい、 分かりました』か『申し訳ありません、 まだ分からないです
今解析中です』の二つの一つだ、 そうだろう?」
「お、 仰る通りです」
「宜しい、 ではよばり殺しの犯人は分かったのか?」
「も、 申し訳ありません、 まだ分からないです、 今解析中です」
「よろしい、 お?」
外を眺めていた杉野が声を上げる。
「どうかなさいましたか?」
「ランミが帰って来た、 手に朝倉の首を持ってな」
「では残りは舞原、 華激、 カートゥーン、 金銀時の4人ですか・・・」
「順当に行けば華激とカートゥーンの二人が勝ちあがる筈だが・・・
どうなるか・・・神田とか言うのが大番狂わせすぎるんだよな」
「確かに・・・神の力恐るべしですね」
「神の力か・・・っっふっふ」
笑う杉野だった。
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