ケース6 田園の一軒家③

 

 卜部達一行は地域で一番大きい図書館に足を運んだ。

 

 三人で伝承や地域史、古い地図などを引っ張り出しては片付け、また引っ張り出しては片付けたがめぼしい情報は見当たらない。

 

 やがて日も落ちて閉館の時が近づくと、職員は卜部たちの方をチラチラと見ながら片付けを始めた。

 

 その気配に追い出されるようにして三人は帰り支度を始める。

 

 

「気になる記述がある本は一冊も無い……!! いたって平凡な田園地帯だ……!!」 

 

 そそくさとエントランスを閉める職員を、卜部は恨めしそうに睨みながら口にした。

 

 

「土地神や祟が原因じゃないってことですか?」

 

 かなめは自分の顎に手を添えて考え事のポーズを取りながら尋ねた。

 

「そうとは言い切れん。あの残穢は異常だ。何かしらの災害か忌まわしい歴史が無いとは思えん……」

 

 

「だがなぁ……そんなもん国家レベルじゃなきゃ隠蔽なんて出来んぞ? 人の口には戸は立てられんからな」

 

 

 泉谷がぼりぼりと頭を掻きながら言った。

 

 

「そうだ……人の口に戸は立てられん……明日は地元の連中に聞き込みをする……」

 

 

「その前に……」

 

「そうですね……」

 

 卜部とかなめは真剣な表情を浮かべた。

 

 

「どうした? 何かわかったのか?」

 

 泉谷は二人の顔を交互に確認する。

 

 

「決まってるだろ?」

 

「決まってるじゃないですか!?」

 

「晩飯だ!」

 

「晩ごはんです!」 

 

 さも当たり前のように声を揃えて言う二人を泉谷は口をぽかんと開けて見比べた。

 

 

 

 結局三人は食事の前に、駅前の小さなビジネスホテルでチェックインを済ませるとにした。

 

 

 それぞれの部屋に分かれる間際、卜部が思い出したように言う。

 

 

「どうせ今夜はまともに眠れんだろうが先に忠告しておく。女の顔が現れても絶対に目を見るな。俺からは以上だ。荷物を置いたらフロントに集合して飯だ」

 

 不吉なアドバイスを残して、卜部はさっさと自分の部屋に消えてしまった。

 

 

 

 取り残されたかなめと泉谷は顔を見合わせる。

 

 

 少し間を置いてから泉谷が口を開いた。

 

 

「一緒の部屋に泊まるかい?」

 

 

 泉谷は呆気にとられた表情のままかなめの方を見る。

 

 

「遠慮しておきます」

 

 かなめも呆気にとられた表情のままつぶやくとすすすと自分の部屋に入っていった。

 

 

「そりゃそうか……」

 

 

 一人廊下に残された泉谷は誰に言うでもなく独りごちるとドアノブにカードキーを通してとぼとぼと部屋に入っていった。 

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