第2話
雫は早速鍵を使って舞衣の家に入った。
サプライズパーティーの準備用に持ってきた大きな紙袋を玄関に置かせてもらってから中を見渡す。舞衣の見た目から想像されるような、可愛らしく飾られた部屋。間取りは1Kで、ごく普通の大学生の一人暮らし向けの部屋だ。パステルカラーの家具で揃えられた部屋からは温かみが感じられた。
「舞衣さんらしい部屋ですね」
雫は思わず微笑んでしまった。本当はゆっくりと部屋の中を確認しておきたいところだけれど、今は時間がない。奨里から鍵を借りた時間が4限の時間なので、舞衣が帰ってくるまでに急いで作業をしてしまわなければならない。舞衣の家の鍵を閉めることも忘れて、作業の段取りを考えていく。
「パーティー用の料理を作って、部屋を飾り付けて……。これはなかなか大変な作業になりそうですね」
舞衣の台所に置いてあるキッチン用品でさっそく調理を始める。舞衣はたしか唐揚げとハンバーグが好きだったはずだから、その2つをメインディッシュにする。
「舞衣さんは味覚が子どもっぽくて可愛らしいですからね」
鶏肉に衣をつけながらクスクスと笑った。
料理は滞りなく進んでいるけれど、やっぱり準備に手間取ってしまう。
「まったく、奨里さんが食堂に来るのが遅かったせいで!」
理不尽な文句をつけながらお皿を並べていく。最優先で料理を作ったので、まだ部屋の飾り付けは全然進んでいない。けれど、時刻はすでに18時を回っていて、舞衣がいつ帰ってくるかわからない時間になってしまっていた。
「急がないと……」
そんなことを呟いていると、部屋の玄関ドアが開く音がした。
「もう帰ってきたんですか!?」
慌てて玄関のほうに向かう。だけど、立っていたのは舞衣ではなかった。
まったく知らないけど、少しだけ既視感のあるスーツ姿の女性。その視線は、なぜか雫に対して敵意剥き出しのものだった。
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