8. 十一月のパングラタン(2)

 −−−変わりまして、XX区のニュース


 「……お客さんの女の子?」

 慶は自分が答える言葉も遠く聞こえるように感じた。

(ずるいのか?どうせ振られるのが分かってるなら、誰でもすることじゃないか?)

−−−東京では明日は雪が―――

「あの子たち、告白だったんでしょ?」

「ああ……そうですよ」

(よく知ってますね)

−−−ニュースは……

「付き合うの?」

「……」

(何の話だっけ?オレだってずるい、先生が断れないのを知ってて−−−オレだって?オレがなんだって?)

−−−年末のニュースは

「慶、私、あの子たちに慶を取られたくない」

(オレだって、なんだ?オレは……オレだってずるい、なんでオレは先生に対して)

「慶!」

−−−クリスマスが−−−

「慶、あんたってひどい奴!」

 (そう、オレはひどいやつ−−−)

 ドン!と左肩に衝撃があった。

「え?」

 慶は左側を見た。先輩は顔を真っ赤にして、目に涙を浮かべていた。

「ごめん、ごめんなさい、永井先輩……なに?」

 彼女は「もういい」とだけ言って、立ち上がって、そのまま扉から出ていく。帰ったのだ。

 −−−年末の−−−

 テレビのニュースは続いていた。

 「そうだよな、ひどい話だ」

 パングラタンは冷えて、チーズが固まっていた。


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