6. 十月 かぼちゃのスープ(1)

「またいないのか」

 慶は、パンの袋を下げて反応のないドアを見つめた。

 九月下旬になんとなく気まずくなって以来、樹には会えてなかった。樹は在宅が多かったのに、十月になってからは三回来ても、留守だった。

「修論で忙しくなるから」

 というようなことは、なんとなく言われていたと思う。

 でも、全然会えないとは慶は思っていなかった。

 諦めきれずにもう一度チャイムを押す。

 ―――ピンポーン……

 中でかすかにチャイムの音がしている。しばらく待ったけど、反応が無い。

(距離、詰め過ぎたのかなあ……)

 慶は、無音のドアにため息をついて、踵を返した。

  

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