Rosetta/First contact
粟野蒼天
エピソード1 未知の惑星
「……さい……起きてください!」
頭上からする音によって少女は長い眠りから覚めた。
その少女は頭からは角が二本飛び出ており、とても神秘的な容姿をしていた。
睡眠ポットの扉が開くとクリオネと呼ばれてた、かつて地球という星にいたとされる貝の形を模したアンドロイドがプカプカと宙を舞っていた。
小さくて可愛いそれを少女はじっと見つめていた。
「おはよう、クレイオーあれから何年経ったの?」
少女は目を擦りながら、数年ぶりに再会したそれと軽く会話を始めた。
「おはようございますソニア。ソニアが人口睡眠に入ってから六年が経過しました。ってこんなことを話してる暇は無いんです! 急いで必要なものをまとめて脱出ポットに乗ってくだい!」
「ちょっと待ってよクレイオー。何があったの?」
アンドロイドの焦り様は尋常じゃなかった。
「今から数十分前ほど前、この宇宙船は突如出現した宇宙船と衝突しました。損傷が激しく航行は不可能と判断しました。これより脱出ポットに乗って付近の惑星に不時着します。なので急いで必要なものをまとめて脱出ポットに言ってください」
「わ、分かった」
突然のことで戸惑いながらも少女は必要なものを集め始めた。
少女は宇宙船中を駆け回る。宇宙船内は物が散乱していて、様々なものが少女に向かって飛んでくる。
少女はふと窓を眺める。窓の外には衝突して爆散している宇宙船の一部が惑星に流れ落ちていった。
その惑星は青と緑が目立つ地球に似通った美しい星だった。
必要なものを集め終え、少女は脱出ポットに乗り込んだ。
「衣服に食料、医療キット。スカイブーツに簡易居住カプセル。予備バッテリーこれくらいかな?」
「脱出ポットの耐えられる重量的に最高の選択です。さぁ急いで!」
「あっ待って。グラディウスが無い!」
少女はひどく狼狽した。きっと大切なものを忘れたのだろう。
「……残念ですが諦めないと」
「駄目! あれだけは、絶対に持ってかないと。ちょっと待ってて」
「ソニア!?」
クリオネの静止を振り切って、少女は脱出ポットの入口に立つと手を胸の高さまで持ってるると虚空に向けてこう叫んだ。
”来い”
数秒後、暗闇の中から円柱型の物体が少女目掛けて飛んできた。
少女はそれを手にすると脱出ポットの扉を閉じた。
「それでは行きますよ!」
クリオネから触手が伸び、脱出ポットの操作をし始めた。
脱出ポットが宇宙船から切り離されてた刹那、宇宙船は炎に包まれ爆散した。
脱出ポットはそのまま船の残骸と共に惑星に落ちていく。
「クレイオー」
少女は力強くクリオネを抱きかかえる。
「ソニア離してください! ソニアの力で抱きかかえられたら私は粉々になってしまいますよ!」
クリオネがそういうと少女は素早くクリオネを離した。
「ソニア掴まってください! まもなく地上に着陸します!」
「うん……!」
「だから私には掴まらないでください!」
少女は渋々別の物に掴まった。
次の瞬間、強い衝撃が脱出ポット中に響き渡った。
「……」
「ソニア大丈夫ですか?」
「馬鹿力と言われて傷ついたこと以外問題はない」
少女は頬を膨らませてクリオネに素っ気無く接した。
「……それはすいませんでした」
クリオネが謝ると少女は機嫌を直したのかバックパックから保存食を取り出して黙々と食べ始めた。
「……味がない」
「保存食ですから仕方がないとしか言えませんね」
「この星に美味しいものってあるのかな?」
「その可能性は大いにあります。この星は地球と似通っている。生命体がいて文明が出来ていてもおかしくないです」
「そっか」
少女は頬に着いた食べかすを指を使って口に含んだ。
「じゃ外に出ないとだね」
「え……?」
「ん?」
「その格好で外に出るつもりですか?」
少女の格好は下着一枚を纏っているだけだった。その下着も先の衝撃で破れさり、少女は全裸に等しかった。
「なにか問題?」
「大アリでしょ」
「別に私は防護服が無くても大体の環境には対応できるから大丈夫だと思うんだけど……」
「ソニアには羞恥心というものはないのですか?」
「羞恥心? なにそれ」
「……」
クリオネは呆れながらバックパックから数着の服を取り出して見せた。
「せめてこのどれかは着てください。外傷から身を守るためです」
「分かった」
少女は服を受け取り、そのどれもに頭を通した。
「ねえ、クレイオー」
「なんですか?」
「きつい……」
少女が着た服はどれもきつ過ぎたようだ。主に大胸筋辺りが。
少女は服を脱ごうとするが中々脱げないようで、ついには服を破り捨てた。
「……やっぱり服はない方がいいと思うんだけど」
「駄目です」
結局、少女はサイズを自在に変えられる服を着ることとなった。
特殊な靴を履き、バックパックを背負い、腰のベルトに大切なものを携え少女はクリオネと共に脱出ポットから飛び出した。
「凄い……」
「ですね。これほどまでに生命で潤っている星があるとは……」
そこは緑で生い茂ったとても神秘的な場所だった。
くらげのように宙を舞う謎の生き物。覆い重なりながら飛び交う蟲。
三百六十度見渡す限りの緑に少女達は衝撃を受けていた。
「クレイオー、ここってお兄ちゃん達が言っていた地球なの?」
「いいえ、この星は地球から遥か彼方の銀河に位置しています。しかしこの星は地球と勝らずとも劣らない数の生命で溢れかえっています」
「綺麗だね」
「えぇ……」
二人はその光景に見とれていた。
「……信号を受信しました」
突然、クリオネの色が青く点滅し始めた。
「ん? なにを受信したの?」
「この星に墜落する前に宇宙船からこの星に向かって救難信号を送っていたのです。その信号が何者かによってキャッチされ、こちらに信号を返してきました」
「つまり、私達以外にも人がいるってこと?」
「人でない可能性もありますが、そこに向かってみる価値は十分にあるかと」
「そっか、じゃ向かってみようか、その信号の発信地ってどこら辺?」
「えっと、ここから二万㎞ちてんですね」
クリオネが出した距離を聞き、少女は絶句した。
「それって……」
「ご察しの通り、この場所の丁度反対地点ですね」
「歩くよね?」
「はい、途方もない距離を歩くことになります」
少女は悶絶したかに思えたがすぐに立ち上がった。
「つべこべ考えてもなにもならないか……」
「ソニアにしては珍しい反応ですね」
「ここで助けを待つより、そこまで行く方が速そうだしね。私はいち早くお兄ちゃん達に会いたいんだよ」
少女の目には強い決意が宿っていた。
「私は歩くよ、歩いてお兄ちゃん達が待ってる地球に行くんだ」
「分かりました。それでは先導はこのクレイオーに任させください」
「頼りにしてるよクレイオー」
二人はゆっくりと歩み出した。
これは謎の少女と一体のアンドロイドが地球を目指して歩き続ける物語である。
Rosetta/First contact 粟野蒼天 @tendarnma
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