6話目 再びの襲撃

「ティア様、今日は来ないのかな……」

いつもの公園の噴水の縁に座っていた俺は、はぁ、とため息をついた。

ティア様を待ち続けてもう30分ほど経った。

暇を潰すように、空を見上げ頭の中で昨日のことを思い出す。

昨日、ティア様の暴走を俺がなんとか抑えたあと、ティア様は気絶した。

その後すぐにいろんな人があわてた様子で駆け寄ってきて、ティア様は数人に抱えられ運ばれていった。

まだ、目覚めてないのだろうか。

ティア様のことで不安な気持ちもあるが、それと同じくらい衝撃を受けたことがある。

「俺って、人間じゃないんだな……」

つい、思っていたことが口から漏れる。

あの時はいろいろありすぎて驚いている暇がなかったので、今自覚する。

ずっとただの人間だと思っていたのに、まさか魔人だとは……

信じられない気持ちもあるが、この首の痣があることで信じざるを得なくなる。

大きな出来事が多すぎて、現実じゃないみたいだ。

「来ないみたいだし、もう帰ろっかな」

考えるのをやめ、ゆっくりと立ち上がって公園を出ようとする。



「そこの少年!止まれ!」



その時、公園の外から怒鳴り声が聞こえてきた。

その声とともに、たくさんの足音が鳴り響く。足音はだんだん大きくなって、この公園についた途端に止まった。

公園の出口が数十人に塞がれた。全員、鎧のようなものを着用している。

刺すような視線が俺に集まる。

「はっ?!」

俺は混乱した声を出す。

なんでこんな急にいっぱい人が来たんだ?!

しかも俺に向かって「止まれ」と言った……

これはもしかして国王の仕業か?昨日俺にとどめを刺せなかったから、また襲いに来たのか?

俺の疑問に対して答えるように先頭にいた男が怒鳴った。

「あの少年を殺せ!国王様のご命令だ!」

俺はうなだれた。

あぁ。やっぱり国王の仕業なのか。俺のどこがそんなに気に食わなかったのだろうか。

考えているうちに鎧を着た傭兵らしき人たちが襲いかかってきた。

とにかくここから逃げたほうが良さそうだな。

急な状況なのに、なぜか俺は冷静だった。

「近くに噴水があって助かったな。」

そう、つぶやく。

直後に噴水の水を引き寄せ、傭兵たちの顔めがけてその水を飛ばす。

「うわあっ」

「なんだこれは?!」

「みっ水?」

傭兵たちは、顔に水をかけられ混乱している。効果覿面だな。

この隙に……!

出口へ力走する。

出口を塞ぎながら指揮をとっていた男にありったけの水をかぶせ、怒鳴り声を背に公園を出た。



しばらく走って、城下町を抜けた狭くて薄暗い道で息を整える。

どこに逃げれば安全なんだ?

家は……危険だな。たぶんアイツらは俺の家を知っている。

───ということは………

「父様が危険……?」

走り続けていて赤くなっていた顔がさっと青ざめる。

「父様っ!」

振り返って家へと走り出す。

もう一度アイツらに会って襲われるかも、という恐怖心は消え失せていた。

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