第5話「図書館攻防戦4 ゴブリンキング戦決着」

     1


 東王大学、総合図書館そうごうとしょかん3階閲覧室。

 勉学はゴブリンキングに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 口から血を吐く。

 

 オリーブが助けに入るも、ゴブリンキングの斧を何とか受け止める事で精一杯だった。


 「賢者の杖よ」

 勉学は、杖を手元に引き寄せる。「槍となれ」

 杖の先端に青白い刃が顕現し、槍になる。


 その槍で体を支え、何とか立つ。

 そして、ゴブリンキングの背中に飛び、背中を斬った。


 「うォォォ」

 とゴブリンキングが絶叫する。

 

 勉学が横目でゴブちゃんを見ると、詠唱を完了していた。

 今だな。


 「跳べ、オリーブ」

 と勉学は指示を出しながら、自らも後ろに跳ぶ。


 「うん」

 オリーブも背後に跳んだ。


 「炎火大爆殺球大ファイヤーボール

 ゴブちゃんの炎魔法がゴブリンキングを襲い、爆音が鳴り響く。


 「うっし、いったろ。カスが」勉学が興奮しながら言う。

 立ち込める煙。

 その中から、ゴブリンキングがボロボロになって現れた。

 まだ、死なないのか!


 ゴブリンキングが、ゴブちゃんの元へ飛ぶ。同時に斧で斬り裂く。

 ゴブちゃんは消滅した。


 「タフかよ」

 勉学は右手を前に出して「パニックハウス。指定ゴブリンキング」と叫んだ。

 ゴブリンキングの頭が光る。


 「炎火大爆殺球(大ファイアボール)、習得」

  脳内で男の声が響き渡る。


 「だろうな、今一番怖ぇのは」

 勉学はニヤリとする。

 

 ゴブリンキングは勉学に向かい、突進してきている。

「詠唱はロエモ、ロエモ、ムホララです」

 脳内男が解説してくれる。


 「ロエモ、ロエモ、ムホララ」

 勉学の右手に、巨大な炎の玉が出来る。


 「え、詠唱時間短っ」オリーブが目を丸くする。

「賢者なので、貴方は。スキル『詠唱時間短縮』を持っています」

 謎男の声が補足してきた。


 「炎火大爆殺球ファイヤーボール

 勉学は、巨大な炎を放った。

「何て、炎!」オリーブは口をぽかんと開ける。


 「ぐ、ぐわァァァ」

 炎が炸裂したゴブリンキングは、丸焦げになり、倒れた。

「東大に入ってから、出直せ、カスが」


 勉学は、ゴブリンキングを見下ろしながら、言う。

「あ、アンタ、マジ強いわよ。本物」

 オリーブは、腰を抜かす。「ゴホゴホ。にしても凄い煙」


 図書館の中は、炎と煙に包まれていた。

 もうここは駄目そうだ。

 生徒達も全員クリスタルになっている。


 「俺達以外全滅か」

 勉学は、ローブを口に当てながら話す。

「う、うん」


 オリーブは、騎士団の死体を見て、涙を流す。


 「とりあえず、1階に降りねぇとな」

 勉学はオリーブの肩に手を置く。「大階段突っ走るか」

「今のアンタの力なら、いけるかもね」

 二人は、大階段の方へ走った。


 「オリーブ、図書館にいる人は、これで全部か?」

 勉学は訊ねた。

「そうよ。生き残りはね」


 「車椅子の子。金髪の男。赤髪の女。そいつらはここにいない。絶対だな?」

「く、車椅子の子? 赤髪の女!」

 オリーブは目をむく。


 「ど、どうした」と勉学。

「見た」

「何!」


 「魔獣に、連れ去られてた。赤髪の子が、それを追ってた!」

 オリーブが後悔交じりに述べた。


 「何だと! なぜ助けなかった!」

 勉学が怒鳴る。

「あ、アンタを助けてたのよ!」

 オリーブも吠える。「誰よ、その子達!」


 「俺の弟と友達だ!」

「友達いたの、アンタ!」オリーブは目を点にする。


「黙れ、沢山いる!」

 勉学は唇を噛み「弟を探しに行くぞ」


「ま、待って! 私とアンタだけじゃ無理。死んじゃう」

 オリーブが説得に走る。「安岡講堂に行って、戦力を集めましょう!」


 その時、大階段から黒い犬が現れた。

 

     2


 吉村英二は、法学部4号棟3階、トイレ個室に隠れていた。

 震える手で刑法の本を読む。


 ギィとトイレのドアが開く音がした。頼む、頼む、気付かないでくれ。

 ドッ、ドッ、ドッと足音がする。吉村の個室前で足音が止まる。

 

 バァンとドアが破壊される。

 犬の顔をした魔物がいた。剣と盾を持っている。

 RPGで見た事あるコボルトとか言う奴だ。


 「た、助けてくれ」吉村は懇願した。「さ、3人以上の殺人は。死刑だぞ。間違いなく」

「そウ、お前、死刑ィ」コボルトは剣を振り上げた。


 「ロエモ、ロエモ、ホムラ」

 吉村は慌てて呪文の詠唱を始めた。

 

 手遅れだった。コボルトの剣が吉村の頭に振り下ろされた。

 ビシャッと壁に血がふりかかる。


 東大軍残り655人、死亡者数345人。


     3


 総合図書館3階ホール。

 勉学とオリーブの前に、巨大な黒い犬が立ち塞がっていた。


 犬の上には犬人間? 亜人? が乗っている。

 鋼の鎧にマントをはおっていた。


 「ま、魔人!」オリーブは叫んだ。

「ノノノ。ゴブリンキング、倒したチャンかぁ」

 犬の亜人が笑いながら、言葉を発した。「弱いチャンだな。死ねよ」


 黒い犬が、ゴブリンキングの頭を踏み潰す。

 口に黒い閃光を溜め始めている。


 「貴様は、誰だ?」

 勉学は、睨みながら質問した。


 「俺ちゃんは、獣魔軍、副軍団長。フリー・ライダー。フリーって呼ばれてる」

 亜人は下を指差し「そして、コイツはペット。ブラックドッグ」


 「ぐ、副軍団長?」

 オリーブは絶句する。

 何だよぉぉ、副軍団長ってぇぇぇ。説明してぇぇ。


 「お前ちゃん達は、誰よ」フリーが訪ねてきた。

 副軍団長って何か、説明お願いしますぅぅぅ。

「俺は、東大神、神だ」

 勉学はオリーブを指差し「コイツは俺のペット。オリーブドッグ」


「だ、誰がペットよ」オリーブは、怯えながらも一応ツッコむ。

「へぇ、神様」

 フリーは不気味な笑みを浮かべた。「お前にも、乗りてぇなぁ」


 「こ、こいつは魔人! 今までの敵とは! レベルが違うからね!」

 オリーブは冷や汗をかきながら、勉学に助言する。


 「魔人とは何だ!」勉学はオリーブに尋ねる。

「魔物の上に立つ者。高い知力と魔力を持っている、人類の天敵」

 な、なんか、ヤバ気な奴か? アサガオを早く助けたいのに。勘弁してくれ。


 「死なねぇ、程度に頼むぜ。ブラック」

 フリーはブラックをムチで叩いた。

 

 ブラックは口から黒い閃光を吐き出す。

「やばい、やばい、やばい」オリーブは慌てふためく。

「恐怖のパニックハウス」勉学は四角い膜、テリトリーを展開する。


 図書館3階で大爆発が起きた。

 東大軍残り509人、死亡者数459人

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