第6話「副軍団長、襲来。フリー・ライダーvs勉学」

 東王とうおう大学「総合図書館」3階ホール。


 勉学とオリーブは、獣魔軍じゅうまぐん副団長フリー・ライダーと彼のペット「ブラックドッグ」と戦闘を始めていた。


 「俺ちゃんの、乗り物になりなぁ」

 フリーがブラックドッグをムチで叩く。


 巨大な黒犬くろいぬは、勉学達に向けて黒い閃光を吐き出した。

爆殺黒閃破バーストブレス


 「やばい、やばい、やばい」オリーブは慌てふためく。「闇呪文よ」


 「パニックハウス」

 勉学は四角いまく、テリトリーを展開する。「召喚獣ゴブリンキング!」と  

 ゴブちゃんを召喚した。

 

 黒い閃光がゴブちゃんに当たり、大爆発が起きる。

 い、威力がやべぇ。し、死ぬかも。

 

 勉学はオリーブを抱きしめ、かばった。

 爆風により、二人は窓に叩きつけられる。


 バリン!


 勉学とオリーブは、図書館の外に吹き飛ばされた。


 「えぇぇぇぇ。ちょっ、ちょっと。死ぬ、死ぬ」

 オリーブが恐慌きょうこう状態に陥った。

 

 確かにヤバイ! 考えろ! 考えろ!

 

 持っている能力は「召喚獣ゴブリンキング」「大ファイヤーボール」「賢者のツエのヤリと剣・ムチと斧モード」だっけ。

 そうだな、うっし!


 「杖よ、ムチとなれ」と勉学は叫んだ。

 杖の先端せんたんがムチになる。

 そして、それを3階の窓にふるった。サッシに巻き付く。

 

 そのまま二人はターザンの様に図書館1階の壁に向かって、風を切っていく。


 「ぶつかる! ぶつかるわよ、勉学ぅぅぅ」

 オリーブは涙目でわめく。

 安心しろ、多分、大丈夫だ。


 「パニックハウス、召喚獣ゴブリンキング」

 勉学がそう呟くと、壁と二人の間にゴブちゃんが現れた。


 ボンッ


 とゴブちゃんにぶつかった後、二人は図書館前広場の地面に落ちた。

「た、たしゅかった、たしゅかった!」オリーブは泣いて喜んだ。


 「これからだ、オリーブ。パニックハウス」

 勉学の周りに四角い領域りょういきが浮かぶ。

 大量のゴブリンがこちらに向かってきた。


 「ま、また、こんな感じぃぃ」オリーブは溜息をつく。


「召喚獣ゴブリンキング解除」

 勉学が小さく呟くと、ゴブちゃんは消えた。続けて「ロエモ、ロエモ、ムホラ

ラ」と勉学は右手を差し出す。「炎火大爆殺球(大ファイアボール)」


 巨大な火の玉が飛び、ゴブリン達は燃え上がった。

「やった! やった! 私とアンタで、ついに広場のゴブリン一掃いっそうね」

 いやいやいや、お前は何にもしてないだろぉぉぉ。


 喜ぶのもつかの間、3階からフリー・ライダーとブラックドッグが飛び降りてきた。


 そう、問題はこいつ等だ。


 「お前ちゃん、やるチャンだな」

 フリーはそう言うと、ブラックドッグにをムチをふるった。「使役しえきの紋章発動」

 奴の紋章が光り始めた。


 「ムーボ、ムーボ、ハツバク」

 ブラックドッグは、そう唱えると口に黒い閃光を溜め始めた。

 

 「ロエモ、ロエモ、ムホララ」勉学も呪文の詠唱えいしょうを始める。

爆殺黒閃破バーストブレス

炎火大爆殺球大ファイヤーボール

 二人の魔法が宙でぶつかり、轟音ごうおんが鳴り響く。辺りは煙で包まれた。


 数秒して煙の中から、勉学が現れた。

炎火大爆殺球大ファイヤーボール

 ブラックドッグに大きな炎の玉が飛ぶ。しかし、避けられた。


 「惜しい!」オリーブは悔しがる。

「アイツには遅すぎるか、カスが」勉学は舌打ちする。


 「それ以前チャンよぉ」フリーはニヤリとする。

「何だと?」勉学は顔をしかめた。


 フリーは、ムチでブラックドッグを叩く。

「ロエモ、ロエモ、ムホラ。炎火爆殺球ファイヤーボール

ブラックドッグがそう叫ぶと、火の玉が勉学を襲う。


 「ロエモ、ロエモ、ムホララ」すかさず勉学も詠唱し、大ファイヤーボールをぶ  

つけ、相殺そうさいする。ドゴォンと大きな音と共に、強い風が吹き荒れる。


 「炎耐性ほのおたいせいあるチャンな訳、コイツ」

 フリーがブラックドッグを指差し笑う。「当たっても、無駄チャン」


 「なるほどな。なら、パニックハウス。指定ブラックドッグ」

 ブラックドッグの頭が光った。


 「習得付加。彼の恐怖は、魔人フリー・ライダー。よって、習得不可」

 脳内の声が漏らす。


 「な、何だと!」

 勉学は焦った。


 そ、そう言えば、恐怖が魔人だった場合、習得不可。とか言ってたな。

 いやいやいや、こういう事ぉぉぉぉ。


 「爆殺黒閃破バーストブレス

 ブラックドッグが更に攻撃を続けてくる。


 「召喚獣ゴブリンキング」

 大爆発と共に、勉学は宙に浮き、地面に叩きつけられた。「ぐはぁ」


 かなりヤバイ状況だな。しかし。

 こういう異世界物って、主人公無双出来るんじゃないのぉぉぉ。

 さっきからずっと、ピンチ、ピンチなんですけどぉぉぉ。


 「そんなもんかぁ? お前チャン」

 フリーはがっかりしている。


 「私だって、いるんだからぁぁ」

 オリーブがブラックドッグに突っ込んだ。

 援護射撃えんごしゃげきナイス!


 「爆殺ばくさつのムチ」

 フリーはオリーブにムチを振るった。

 オリーブは剣で受け止めると、爆発し、吹き飛んだ。


 頑張れよぉぉぉ。ダメージ位与えてくれぇぇぇ。

「ぐぅ」オリーブは地面に転がった。


 「爆殺黒閃破バーストブレス

 ブラックドッグの呪文がオリーブを襲う。


 「お、お父様、お母様」

 彼女は黒い光を見つめ、呟いた。覚悟を決めた感じだ。

 クソッ! 流石に一人は寂しい! コイツに死なれたら困る。

 

 勉学は閃光につっこみ、バーストブレスを食らった。

 けたたましい炸裂音さくれつおんが辺りに響く。砂煙すなけむりが舞った。


 冒険はここで終わり……か。

 

     2


  高橋由美子ゆみこたち経済学けいざいがく研究科けんきゅうかの生徒8人は、エレベーターの中にいた。


 ここは、経済学研究科・学問交流棟こうりゅうとう

 主に大学院生だいがくいんせいが経済学の研究の為に、使っているビルだ。

 

 全階にモンスター達があふれていて、由美子達はエレベーターの中に逃げ込んでいた。

 その窮地きゅうちの中、由美子は必勝法ひっしょうほうを発見していた。


 モンスター達はエレベーターの使い方が分からない。

 仮にボタンを押してきたとしても、由美子達が魔法を使えば、普通に倒せた。

 このまま、エレベーターの中にずっといれば……、意外といけるのではないか?


 ボタンの1階が光ると、エレベーターは下っていった。


 「ま、またモンスターが」

全階ぜんかい押さえられてますし、もう無理ですよ」

 他の院生いんせい達が悲嘆ひたんにくれる。


「大丈夫、大丈夫。皆、頑張ろう!」

 由美子は皆を励ました。「ほら! 魔法の準備お願い」と続ける。


 中にいる院生達は氷呪文の詠唱を始めた。

 1階に着いて、扉が開く。クマのモンスターがいた。


 すかさず、閉じるボタンと11階ボタンを押す。

 更に「せーの!」と由美子は号令ごうれいをかけた。


 「氷殺氷槍破アイスランス

 由美子達は一斉いっせいに魔法を発動した。

 クマのモンスターに氷の槍が突き刺さり、倒れた。


 扉は閉まり、エスカレーターは上に登っていく。

「うっしゃぁ」

「やりました!」生徒達が歓喜する。


 東大は避難所ひなんじょとして、72時間は電気が使えるシステムになっている。

 このまま、モンスターが引き上げるまで、交代制でこの戦法を使えば……生き残れるかも。

 

 アイスとか言う神が言うには、夜には1回敵が引き上げるんだっけ?


 お願い、どうにか、お願い。死にたくないよ。


 また、全員で氷呪文の詠唱を始める。

 11階のドアが開いた。クマのモンスターがいた。今度は緑色。

 急いで、閉めるボタンを押すと共に、氷呪文を放つ。


 キィン


 と言う音が響き、アイスランスは由美達の元へ弾き帰ってきた。

 氷の槍が院生達に突き刺さる。

 な、なんで。痛い、痛いよ。


「おデ、魔法弾き返せル、凄イ」

 リフレクベアはニンマリとしながら、言った。

 

 由美子は床に倒れた。

 死にたくない、死にたくないよ。

 

 高橋由美子など8名死亡。

 東大軍残り597人、死亡者数371人

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