第4話「図書館攻防戦3 ゴブリンキングVSパニックハウス」

    1

 

 燃えさかる図書館3階・閲覧室えつらんしつエリア。

 勉学とオリーブは、ゴブリンキングと対峙していた。

 

 ゴブリンキングは、呪文の詠唱えいしょうをしている。

「ロエモ、ロエモ、ムホララ」

 さっきの炎魔法のやつか。


 「俺って呪文は使えんの?」

 勉学はオリーブに尋ねた。

「紋章次第ね」オリーブは即答する。


 「貴方の紋章は、恐怖紋きょうふもん賢王紋けんおうもん

 謎男なぞおとこの声が説明してきた。「恐怖紋の方は使えます」


 「何だよ、恐怖紋って」

 勉学は、謎男に聞く。


 「炎火大爆殺球大ファイヤーボール

 ゴブリンキングが空気を読まず、魔法を放ってきた。


 勉学とオリーブは、右手に走って逃げる。

 背後で轟音ごうおんが鳴り響く。

 二人は吹き飛ばされ、図書館右端の壁に叩きつけられる。


 「痛ってぇ」

「うぐぐ」

 オリーブと勉学は悶絶する。

 剣で体重を支えて、何とか立ち上がる。


 「固有魔法こゆうまほうが使えます。恐怖のパニックハウス。指定した敵が、今一番恐れているもの、能力を習得する事が出来ます」

 謎男が、親切に答えてきた。


 「なるほど、分からん」

 勉学は困惑する。「分かりやすく言え、カス」


 「あ、アンタ。独り言多いわね」

 オリーブがドン引きしている。「誰と話してんの、さっきから」


 「知らん。脳内でずっと、謎の男と女が話しかけてくる」と勉学。

 「男と女……?」とオリーブはハッとする。「あぁ。異世界人には、そういう声聞こえるらしい」

  前方からゴブリン達が襲って来た。


 「手を差し出し、唱えなさい。パニックハウスと」


「恐怖のパニックハウス

 勉学が叫ぶと紋章が光った。

 自分を中心に、半径10メートルの四角いまく? テリトリー? ができた。

 目に照準器しょうじゅんきが映る。


 「指定先していさきを言いなさい。ゴブリンか、ゴブリンキングか」

 謎男が指令する。


 「指定先、ゴブリン」勉学は戸惑いなら口を開く。

 ゴブリンに照準が当たった。


 その間もゴブリンは迫ってきている。

「おい、ヤベェぞ」と焦る勉学。


「パ、パニックハウスと、もう一度言いなさい」と謎男も焦って返答へんとうする。

「パ、パニックハウス!」

 ゴブリンの頭が光った。


 勉学の前に、ゴブリンキングが召喚される。


 「しょ、召喚魔法?」オリーブは目を見開く。

「召喚魔法ゴブリンキング、習得」

 男の声が勉学の脳内に響き渡る。


 「召喚魔法?」勉学は狼狽する。

 目の前に現れた召喚獣ゴブリンキング。

 召喚獣は、目の前に来たゴブリンを刀で切り裂いた。


 「ど、どういう事だ? 謎男」

「あのゴブリンが今一番怖いもの。それは、ゴブリンキング、と言う事でしょう」

 

 なるほど……。

 勉学の能力は「指定した敵が、今一番恐れている物や能力を習得できる力」

 ゴブリンが一番恐れていたのは、ゴブリンキング。味方も炎魔法で殺しまくってるからな。

 それで、ゴブリンキングを勉学は召喚出来たと。


 「一番恐れているのが、モンスターの場合、召喚魔法になるんだな?」と勉学。

「そうです。しかし、魔人は召喚出来ません。召喚魔法で使えるモンスターだけ 

です」と謎男は断言だんげんした。


 敵のゴブリンキングが、炎魔法の詠唱をまた始めている。

「主、御命令ヲ。無いなら、勝手に戦いまス」

 召喚獣の方のゴブリンキングが、勉学に語りかけてきた。


 「フン。カスが。あの、ゴブリンキングを殺せ」

 勉学は、召喚獣に命令した。

 召喚獣は、敵のゴブリンキングに向かっていく。

 

 敵のゴブリンキングは、炎呪文を勉学のゴブリンキングに放った。

 大爆発が起き、召喚獣は消えた。


 「おいおい、消えちまったぞ」勉学は嘆く。

「魔力がある限り、何回でも召喚可能。ゴブリンキング! と唱えなさい」

 謎男は、助言する。


 「召喚獣ゴブリンキング」

 目の前に再び、勉学のゴブリンキングが現れた。

「すごい!」オリーブが感心している。


 「なるほどな」

 勉学は固有魔法の要領を掴んできた。

 敵のゴブリンキングが走ってこちらに向かってきている。


 「うっし、お前は今日からゴブちゃんな」

 勉学は、召喚獣ゴブリンキングに語りかける。

「分かっタ」ゴブちゃんは首を縦にふった。


 「ゴブちゃんは、炎魔法の準備」

 勉学はオリーブとゴブちゃんに指示を出す。「オリーブは左、俺は右からアイツを攻撃する。合図したら、後ろに跳べ」


 「わ、分かった」オリーブは首肯する。

「行くぞ」勉学は、オリーブとゴブちゃんに発破をかけた。「ゴブリンキング、攻略戦だ」

 

 ゴブちゃんが魔法を詠唱する。

「ロエモ、ロエモ、ムホララ」


 勉学とオリーブは、ゴブリンキングに刀で斬りかかる。


 「うォォォォ」

 ゴブリンキングが斧で縦切りを仕掛けてきた。

 手が痺れ、刀に変化した杖を落とす。


 「や、ヤベェ」

 勉学がそう言うが早いか、ゴブリンキングの左拳が勉学の腹に食い込む。

 血を吐きながら、勉学は壁に叩きつけられる。


 「だ、大丈夫?」

 オリーブはゴブリンキングの右肩に剣を振り下ろし、ダメージを与える。

 ゴブリンキングは怒り、オリーブに斧を叩きつける。


 「お、重い!」

 オリーブは、何とか受け止めている。が、限界を迎えそうだ。


 「我、獣魔軍・部隊長ゴブリンキング。死ぬの、お前ラ」

 奴は更に力を入れている。


 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。二人共死ぬぞ! どうする。

 せっかく、ゴブリンキングを倒す作戦を思い付いたのに!


   2


 東王大学コミュケーションショップ。

 金田マサルは、店のおみやげをオーク6匹に食べさせていた。


 「どうぞ、どうぞ、食べちゃって下さい」

 金田は冷や汗を垂らしながら言う。「どうか、私はお助け下さい」


 コミュケーションショップは、東王大学のおみやげ屋だ。

 東大のネクタイやシャープペン等のグッズが所せましと飾ってある。

 金田はそこのアルバイト。普段は東大理学部の地学科3年生をやっている。

 

 今日もアルバイトだったのだが、急にモンスターが襲撃。

 他の店員は殺され、クリスタルになってしまった。

 金田は、とっさにクッキー等のお菓子をオークに差し出した所、何故か命拾

いする事に成功した。


 「もう、無ィ」

 猪の顔をした巨大な魔物が金田に話しかけてきた。

「はい、それはもう品切れでございます」と金田は丁重に答えた。


 オークは立ち上がり、槍を振りかぶり、金田に突き刺した。

「あぁぁぁぁ」金田は叫んだ。


 「なら、用無しィィ」

「やめてくれ、頼む」

 オークは再度、槍を金田に刺し、息の根を止めた。


 金田マサル死亡


 東大軍残り692人 死亡者数 276人

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る