第3話「図書館攻防戦2 虐殺の図書館」

    1

   

 図書館3階のホールに、勉学とオリーブは辿り着いた。

 見渡すと騎士が5人位、奥の大閲覧えつらん室には50人以上の学生がいた。

 が、学生? ゆ、夢だよな、これ?


 「リチャード! ジョンソン! トニー! 皆! バリケードを」

 オリーブは、騎士達と学生達に指示を出す。


 「ハハッ」

「かしこまりました」

「皆、やるぞ!」


 騎士や学生達が、イスを大階段に投げ込む。

「はぁ。はぁ。どうしよう、どうしよう」

 オリーブが、青ざめた顔で言った。


 「こ、これって夢だよな?」

 勉学はオリーブに話しかけた。


 「夢じゃないわよ! 現実! ここは現実の世界!」

 オリーブが断言した。「死んだら、本当に死ぬから! 向き合って! 現実と」


 「現実って言われてもな……」

「異世界転生したの、アンタ。学校ごと」

 ひ、光? 確かに、そんな事あった様な。

 え、マジで現実、これ。


 「あー、スマンが、状況が呑み込めん」勉学は頭を押さえる。「現状を説明し

てくれ。要点だけ」


「そんな暇無いわよ!」オリーブは溜息を付く。

「頼む」と勉学はオリーブの目を見つめる。


「あぁ、もう、手伝いながらね!」

 オリーブは、大階段にイスを投げ始めた。


 勉学も椅子を大階段に放る。「で、何が起きている?」と促した。

 

 オリーブは、溜息を付いたあと「戦争。人類と大魔王の」と説明を始めた。

「アイスバーグと言う地方を賭けたね」と続ける。


 「何だ? アイスバーグって」

「ここはセブンストーンって世界。その一番北の地方。それがアイスバーグ」

「セブンストーン? アイスバーグ? 聞いた事ないぞ、そんな場所」

 勉学が をひそめる。


 「アンタの世界とは……、別の世界」

 オリーブは大階段にイスをぶん投げる。「異世界って言ったでしょ」


 「それで?」

勉学も、イスを放り込みながら、続きを催促する。


 「アイスバーグは戦争中なの! 大魔王率いるデスマニアと、反乱軍の新政アイスバーグで」

オリーブは、息せき切りながら言う。「平和なアイスバーグをね。デスマギアって大魔王が、めちゃくちゃにしてるの」


「お前らが新政アイスバーグ。で良い奴。あの魔物達がデスマニア。で、悪い奴って事?」

「そういう事」

 勉学とオリーブは、イスを大階段に叩きつける。


 「ここは新政アイスバーグって国なんだな?」勉学は聞いた。

「だから、そう」オリーブは叫ぶ。


 「環境については、何となくわかった」

 勉学はフゥーと息を吐く。「で、俺達がここにいる理由は?」

「私達だけでは、勝てない。一緒に戦って欲しいの。だから召喚したの」


 「……はぁ? 意味が分からん」


「アイス様が予言したの! 知力……、つまり魔力が高い、東大って人達を召喚したら! 大魔王を滅ぼせるって!」

 オリーブが熱弁する。「で、アンタらを呼んだら、何故か獣魔軍が奇襲をかけてきたの」


 「何故かって」

 勉学は、呆れた。召喚されて、いきなり襲われるとかたまったものじゃない。

 「私達は、安全な場所で。騎士団200人用意して。万全の策を取ってたのよ!」


 ドッカーン。


 大階段に投げたイス達が大爆発した。辺りが煙で包まれる。

 一体、何が……。


 ドスン、ドスン。


煙が晴れると、ゴブリンキングがホールに現れた。大量のゴブリン達を連れて。

「あ、あぁぁぁ。モンスターだ」

「キャー」

「や、や、やべぇ」

 学生達が恐慌状態に陥る。


 ゴブリン達はニヤっと笑うと、学生や騎士達に襲いかかった。

「みんな、戦って!」

 オリーブが大声で叫ぶ。


「む、むだダ。全員、死ヌ」

 ゴブリンキングは、炎の呪文を唱え始めた。「ロエモ、ロエモ、ムホララ」

「な、何か、ヤバイ系の呪文か」勉学は青ざめる。

 

 ゴブリンキングの右手の紋章が輝く。

 すると巨大な火の玉が出来あがった。

炎火大爆殺球大ファイアボール

刹那、火の玉が大閲覧室の学生に向けて放たれる。


「わ、あぁぁぁ」

 学生達は恐怖で尻もちをついている。

 逃げろ! 早く!

 

 火の玉は、大閲覧室の本棚を貫通。

 長机エリアにいた学生にぶつかると大爆発を起こした。

 

 20人位の学生達が一気に死に、クリスタル化した。

「な、なんだ、あのクリスタルは?」

 勉学は、小さい声で問うた。


 「魔力が高い異世界人が死ぬと! クリスタル化するの」

 オリーブが、答える。「理由は分かんない」

 一息つく間もなく、ゴブリンが勉学とオリーブに襲いかかってきた。


 勉学は、逃げた。


 オリーブは、ゴブリンのナイフを剣で受けながら

「逃げないで。お願い! 一緒に大魔王と戦って。皆を助けて」

 と勉学に懇願する。

 

 勉学は立ち止まり、振り返って

「む、無理だ。これは現実で。死んだら、リアルに死ぬんだろ?」


 一匹のゴブリンが、ナイフで勉学に切りかかってきた。

 仕方なく、賢者の杖で受け止める。槍モードにし、応戦する。


「貴方、凄い強い! とんでもない魔力量、知力を感じる」

 オリーブは、回転してゴブリンを斬る。


「フン。まぁ、東大首席だからな」

と勉学は満更でもない表情をしながら、槍でゴブリンを刺し殺す。


「それに、予言の! 青い鳥の戦士だし」

「何だ、予言って?」勉学は尋ねた。


 「アイス様が言うには、青い鳥の戦士が、大魔王を倒すんだって!」

 オリーブは勉学のネックレスをじろじろ見る。「アンタ、それっぽくない?」


 勉学もオリーブの制服にある青い鳥の紋章を見つめる。青い鳥ね……。

 「さあな」と答えた。


 「お願い。魔王を倒したら! アイス様が! 願いを1つ叶えてくれるんだよ」

「願い?」


 「そう、何でも願いを1つ叶えるって」

オリーブは続ける。「あと、アンタ達を元の世界に戻すって」

「何だと!」

 勉学は、初めて興味を示した。


 若干、緊張を解いたからかゴブリンに後ろから少し切られる。「い、痛ぇぇぇ」

 すかさず、槍で突き刺し、殺す。


 うぎゃぁぁと大きな叫び声が聞こえた。


 「お、お、お、オリーブ様ぁぁ。お逃げ下さいぃぃ」

 騎士が、ゴブリンキングに右腕を斬られていた。

 ゴブリンキングは笑うと、騎士の背中に斧を叩きつけた。


 「リチャード!」

 オリーブは涙を流す。

 

 ゴブリンキングはすかさず呪文を唱える。

「ロエモ、ロエモ、ムホラ。炎火爆殺球ファイアボール

 オリーブに向かって火の玉を放った。


 「危ねぇぞ、カス」

 勉学は、オリーブに体当たりし、一緒に床に倒れこむ。

 後ろでドゴォンと言う音がする。


 「クソ。クソ。私がもっと強かったら! 落ちこぼれじゃなかったら!」

 オリーブは目から涙をこぼした。

「早く、立て」

 勉学は、オリーブを立たせる。


 「……ありがとう、クズ」オリーブは涙を拭う。

 じっとオリーブを見た後、勉学は溜息をつき


 「その願いってのは、内定でもOKか?」と尋ねた。

「な、内定ってのは知らないけど。多分、大丈夫」


 目の前からは、真っ黒な毛に覆われた、ブラックゴブリンが迫ってくる。

 いっちょ前に、二刀流の様だ。

 勉学は、槍でブラックゴブリンの剣を受け止める。

 「我は獣魔軍、副部隊長ブラックゴブリン」

 と奴は語りかけてきた。あ、そう。興味無し。


 勉学はクリスタル化した東大生達をチラッと見て

「フン。内定を貰えるなら! この神が、大魔王を倒してやる」

 ニヤッと笑いながら、言った。


 「うォォォォ」

  ブラックゴブリンが2つの剣を勉学に振り下ろしてきた。

 

 「刀となれ」勉学がそう呟くと、賢者の杖は縮み、剣となった。

「東大の名に懸けてな」


 勉学は、「賢王東大剣」と叫ぶとブラックゴブリンを横に一刀両断した。

「しなぶ」と叫びと、ブラックゴブリンは爆発した。


 「あいつ、殺ス。強い殺ス」

 ゴブリンキングは再度、呪文を唱え始めた。


 やばい、やばい、あの呪文か!? どうする!? どうする!?


 東大軍残り 533人 死亡者数 435人 誘拐・逃亡32人。

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