第一章 現代編

第1話「異世界へ」

      1


 ハーハッハ。俺こそが神。東大とうだいの神にふさわしい。

 

 羽柴勉学はしばべんがくは、クイズ番組「東大神とうだいしん」決勝戦に挑んでいた。


 「東大神」とは、年に1回放送される超人気クイズ番組。

 全国で一番頭が良い大学生を決める為、予選よせんを勝ち抜いた7人がしのぎを削る。

 

 決勝戦の舞台は、最高学府さいこうがくふ東王大学とうおうだいがく」の安岡講堂前やすおかこうどうまえ

 ザ・クイズ番組と言うセットが設置され、その前には多くの観客が押し寄せていた。


 「日本史にほんし問題10問目。9代目の総理大臣そうりだいじんは誰?」

  アナウンサーが問題を読み上げた。


 クク、簡単過ぎる。神にとってはこんな問題、簡単過ぎるぞぉぉ。

 勉学は、ボタンを押した。


 「東大法学部の羽柴君、答えは?」

 アナウンサーが元気よく聞く。


 「山形有朋やまがたありとも」勉学はドヤ顔で答えた。

 「正解」とアナウンサーが微笑む。

 

 「うっし」勉学は両手を握る。これが神の力だ。

 勉学の前のパネルが85点から90点になる。


 「続いて第9問、室町むろまち時代、日明にちみん貿易を中断ちゅうだんした将軍しょうぐんは?」

足利義持あしかがよしもち」ボタンを押し、勉学は即答そくとうする。


 「つ、強過ぎる!」立中りちゅう大学の学生がうなった。


 「第10問、聖武しょうむ天皇の皇后こうごうは?」

光明子こうみょうし

 すかさず答えた。これが東大首席しゅせきの力だ、君達。


「レベルが違ぇ」慶明けいめい大学の学生がイスにもたれかかった。

 とうとう、勉学のパネル点数が100点になる。


 「2032年、東大神優勝は、羽柴勉学君です!」

 とアナウンサーは声を張り上げる。

 勉学の頭の上で、くす玉が割れ、紙吹雪かみふぶきが舞う。


 「はーはっはっ。東大神をあがめろ! クズ共。はーはっは」

 勉学は、喜びにひたる。続けて「こんな問題も分からんのかぁ、カス共は」と付け足した。


 「カスはてめぇだろ」京王きょうおう大学の学生が歯ぎしりした。

「東大にあらずんば、人にあらず。黙っていろ」

 勉学はうんうんと頷きながら言う。


 ファイナリスト達は、怒りを露わにし

「ツイッターで、内定ないてい募集ぼしゅうしてる奴が言うなや」

就職活動しゅうしょくかつどうどうしたんだ、ゴラァ」と罵声ばせいを勉学に浴びせる。


 「あぁ? 内定? 一杯持ってますぅ。アレは冗談ですぅ」

 勉学は言い返す。「つか、人のツイッター監視すんなや」


 正直、内定は0だった。

 4月から就活を始め、早4か月。

 100社、200社どれだけの企業きぎょう面接めんせつを受けただろう。

 

 なのに、内定0。優秀過ぎて、嫉妬しっとされている。間違いない。

 東大の神が入社にゅうしゃしたら、誰だって怖い。出世の邪魔じゃまと言う事か。


 アナウンサーは、学生達の口喧嘩くちげんかに気付くと慌てて

「で、では、また来年の東大神で。さようなら~」と収録しゅうろくをしめた。


 「フン。全く、人格攻撃じんかくこうげきとは情けない」

 勉学は不平を言いながら、席を立ち、歩き始めた。


するとどこからか 「助けて! 助けて! 大魔王デスマギアを倒して」

と、言う女の声がした。更に「青い鳥の戦士よ」と言ってきた。


 辺りを見渡してもそんな事言っている学生はいない。

 ふぅ。就活しゅうかつのストレスによる幻聴げんちょうか。

 早く就活終わらせないとな。

 

     2


 7月24日。勉学は中小企業「糸村商事いとむらしょうじ」の面接を受けに来ていた。

 オラァ、内定貰ってやるぞ!


 ノックをし、応接室おうせつしつに入り、着席ちゃくせきをする。カバンをイスの足元あしもとに置いた。

 机には総務部長そうむぶちょうが座っていた。


 「お名前と大学、学部がくぶ名を」総務部長は優しく、たずねてきた。

「は、は、はし、はしば。べ、べ、べんがくです。と、とうだい。ほ、ほうがくぶです」

 

 勉学は全身をカチコチに緊張させながら、答える。


 「緊張しすぎですよ」総務部長は笑う。「次は、弊社へいしゃ志望理由しぼうりゆうをお願いします」


 「い、い、いとむら商事の、社訓しゃくんに、た、た、大変共感したから、れす」

 な、なんでこんな緊張するんだろう。勉学は泣きたい気持ちだった。


 「どんな所に共感したんですか?」

「しゃ、しゃ、しゃ、社員を大切にしたいと、言う、言う所に」

 勉学は、ガチガチと歯を震わせながら答える。


 「社員を大切にする所? 他にもそういう会社ありますよね?」と総務部長。

「あ、あ、ありますけど。その、あの、ええと」

 勉学は頭の中が真っ白になった。「わ、わ、分から……ないれす」

 

 ブウォーン。


 唐突に総務部長を青いモヤが包み、神々こうごうしい青髪の美少女が現れた。

「助けて下さい、勉学」


 「い、いや、いや、誰?」

「7月25日、東大へ来て下さい。王の力を持った3人を連れて。4人で。世界は繋がります」


 「いやいやいや、行かねぇよ。神に命令するな」続けて「王の力? 何だよ、王の力って」とわめいた。


「青い鳥、青い鳥が目印です。幸せを運ぶでしょう」

 と女性は告げると、青いモヤと共に総務部長の姿になった。


 「では、次の質問です」と総務部長はまた冷静に質問してきた。

 な、何だったんだ、一体。


 青い鳥とか、王の力を持った人とか。

 勉学は、ワイシャツの下に付けている青い鳥のネックレスを触る。

 青い鳥……、ね。


 何だか、嫌な予感しかない。


     3


 7月24日夜、勉学は自宅で皿洗いをしていた。


「いつもありがとな、勉学」

 じいちゃんが礼を言ってきた。「あと。アサガオをベッドに連れて行ってくれや」


「分かったよ。じいちゃん」

 勉学は、皿置き場に皿を置いた。

 

 そして走って、車椅子くるまいすで寝ているアサガオの所に行った。

 車椅子を引き、寝室しんしつに連れていく。


 アサガオは、12歳の弟。めちゃくちゃ運動神経しんけい良くて、バスケのスタープレイヤーだった。

 ただ10歳の時、交通事故に逢ってしまった。

 

 それからは車椅子生活。昔の明るさが嘘の様に……、暗い性格に。

 何とか、元気になって欲しい。


 アサガオをベッドに寝かせる。すると靴下に青い鳥の刺繍ししゅうがあった。

 「あ、青い鳥!」と勉学は叫んだ。

 ただの偶然なのだろうか。胸騒ぎが止まらない。


 「うるさいよ、兄ちゃん」

 アサガオが目をこすりながら、言ってきた。

 「ス、スマン、アサガオ」と勉学は謝った。


 「青い鳥がなんだって?」

「い、いや。靴下、何で青い鳥なのかなって」

「夢が叶いますようにって。ばあちゃんが。叶う訳ないのに」


 「……。そうだったのか」

 勉学、目をほそめる。

「その子が2人目の王です」と謎女が脳内で囁く《ささやく》。


 「ふ、二人目の王?」

 また幻聴げんちょうか、クソッ。勉学は頭の中で舌打ちした。

「どうしたの? 兄ちゃん」アサガオが心配そうに尋ねる。


「いや、何でもない」勉学は続ける。「夢は叶うよ。アサガオ」


 「じゃあさ! 僕はバスケで、オリンピック出られるの?」

「……。出られる! 俺は内定、お前はオリンピック選手。絶対だ」

 勉学は、アサガオの頭を撫でた。「リハビリ頑張ろうぜ」


 アサガオは首を横に振る。「夢は叶わない」


 不意ふいにギィィとドアが開いた。白いフードを被った謎の男が立っていた。

「お前の夢は小説家だろ? 勉学。東大転生はどうした?」


 「な、なんだ、貴様は?」

 勉学は絶句ぜっくしながら言い放った。「なぜ、東大転生の事を知っている」


 勉学はずっと小説家になりたかった。小学生の頃から構想こうそうノートも作っていた。

 

 ただ、受験勉強、大学では採点のバイト。忙しくて結局1話も書けずにいた。

 なぜ、それをこの男は知っている。


「お前、両親の事、異世界の事覚えているか?」と謎の男。

「両親? 異世界、何の事だ?」勉学は動揺どうようした。


 「親の記憶はあるか?」

「し、知るか! 10年前に蒸発じょうはつして。それ以前の事も覚えてねぇし」


 勉学は両親の事を一切知らなかった。10年近く一緒に暮らしていたのに……だ。両親の記憶だけゴッソリ抜けて落ちていた。


 一緒に暮らしている弟とじいちゃんに聞いても何も答えてくれない。

 記憶に無いらしい。何が何だか。


 「そうか。なら、俺は、ヌケガラだ。勉学」と告げた。

「ヌ、ヌケガラ? 誰だよ!」

「お前を大切に思っているものだ。お前を救いたい」


 「に、兄ちゃん、怖いよ」

「大丈夫だ、アサガオ」勉学はアサガオを身をていしてかばう。

「良い兄貴になったな」


 ヌケガラはアサガオの頭部とうぶを狙い、手をかざす。「スマン、アサガオ。時間が無い」

 アサガオはガクンと眠りについた。


 「あ、アサガオ!」勉学は叫ぶ。

「さぁ。青い鳥のネックレスをよこせ、勉学」

 や、ヤバぇ。恐怖で体が動かねぇ。


 ヌケガラは今度は勉学に手をかざした。

 勉学は壁にふっとび、叩き付けられる。痛ぇぇ。

 奴は近づいてきてネックレスを握った。


 「異世界から帰ったんだ。もう、これは捨てろ」

 青い鳥のネックレスは正体不明。ある日、勉学はこれを付けて東大に倒れていたらしい。何か分からんが、大切な物かもしれんので、付け続けていた。


 「い、い、いいよ。やるよ、それ。だから、助けてくれ」

 勉学は懇願こんがんした。


 「この子の力は必要です!」

 脳内のうないで謎女の声が響く。「気持ちは分かりますが、消えて下さい」

 青い鳥のネックレスが光り輝き、ヌケガラは壁に吹き飛んだ。


 「明日、東大には行くな! チャラとアサガオも連れていくな」

 ヌケガラは更に「人柱ひとばしらになるな! デスマギアの」と言った。言い終わるとガクっと頭をれた。


 そしてシュウゥゥと、じいちゃんの姿になった。


 「じ、じいちゃん」アサガオは目を丸くする。

 ヌケガラは、じいちゃん? じいちゃんのドッキリだったのか?


「い、いえ。や、闇の軍勢です。貴方あなたを殺しに来たのです」

 謎女がささやいてきた。「このまま、現世げんせにいたら、殺されますよ、勉学」

 こ、殺されるだと?


 勉学は、じいちゃんを介抱かいほうをした。生きてるよな?

 するとランランランとスマホの着信ちゃくしん音がした。


 ラインを見ると、友達の茶羅ちゃらヒグラシから、「遊ぼうっす」と連絡が来ていた。

 ピースをしている茶羅ことチャラの画像付きだった。


 勉学は写真を見て息を呑んだ。チャラが青い鳥のTシャツを着ていたからだ。

 ま、また青い鳥! 2度も偶然はあるのか? 女の声はガチなのか?


「チャラが3人目の王です。明日絶対連れて来て下さい。死にたくなければ」

 謎女の声が呟いた。

 

 すると青い鳥のネックレスが光り輝き、宙に浮かぶ。勉学の首元から離れた。


 「話しかけてくんなぁぁ、謎女」勉学は叫んだ。「な、何か、怖いから、明日、東大には行かん事にした」とも宣言せんげんする。


 「東大に来ないと死にますって、アナタ」ネックレスは呟く。「家にいると、またヌケガラに襲われます。生きたければ、東大に来なさい」


 「東大に行けば、助かるのか?」勉学は半信半疑はんしんはんぎで尋ねる。

「そうです。チャラとアサガオも連れてきなさい」


 「チャラとアサガオは勘弁かんべんしてくれよ!」

「二人を助けたければ、連れてきなさい! 助ける為です!」


 勉学はハァと溜息ためいきをついた。

 震える手で「チャラ、明日東大に来い」「飯食うぞ」「アサガオも行く」と言うラインを送った。   


「ありがとう、勉学、ネックレスも忘れずに。もう、外せませんけど」

 青い鳥のネックレスは、また、勉学の首元くびもとにかかった。


 「痛たたた」とじいちゃんが背中をさすりながら、目を覚ました。「何で、俺、ここで寝てんだ?」と呟く。

 アサガオも目を覚ました。「?」


 明日、何が起きるんだ。一体。もう、怖ぇよ、色々。

 何が起きるんだぁぁぁぁぁ!!


     4


 新政アイスバーグの荒野。

 

 オリーブは、指に付けた青い鳥の指輪に魔力を注いでいた。

 10年、長かった。これでやっと、大魔王デスマギアに一矢報いる事が出来るかも。


 「アイス様、準備は整いました」

 オリーブは、空に向かって報告する。

 新政アイスバーグの騎士団は、静かにオリーブの事を見守っている。


「オリーブ、ありがとう。一瞬だけ、貴方の体を借ります」

 謎の声がオリーブに告げる。


「喜んで」オリーブは微笑む。

 するとオリーブの目が青色に光り始める。


 「何て魔力だ」

 騎士団員達は、息を呑む。


 「旅立ちのトラベリングマン

 オリーブは、魔法を発動する。辺りが光に包まれていく。

 

 これで、東大の人達が、大魔王と戦ってくれる。


     5


「何で、このスーパーエリートが、内定貰えんのだぁぁ!」

 

 勉学は、東王大学の社会科学しゃかいかがく研究所の前で叫んでいた。

 今日はチャラとアサガオの3人でキャンパス内を散歩中。


 青門あおもんから銀杏いちょう並木なみきを進んでいる。

しかし、その矢先……。糸村商事からの不採用ふさいよう通知がスマホに届いていた。俗に言うお祈りメールだ。

 

 誠に遺憾いかんに存じますが、採用さいようを見送らせて頂きますだと。

 フン。中小企業の癖になめおって。こちらから、願い下げだ。


 「クスクス。東大神、まだ就活中なんだ」

「もう、夏なのにねー」

 通りがかりの女学生達が、ののしってくる。


 「黙れ、カス共!」

 勉学はアサガオの車椅子を押しながら、応戦する。


 アサガオはスマホのゲームをしていてこちらに興味ない。

 チャラは何だか、そわそわしている。


 「そんなだから、内定貰えないんだよー」

 女学生達も笑って反撃はんげきしてくる。


 「か、かわいい」

 チャラが小さく呟く。

 そして勉学に近寄って来て「な、ナンパしようっす。勉ちゃん」と耳元でほざいてきた。


 「貴様一人でやれぇぇ、チャラぁぁ」

 勉学は、雷を落とす。「親友がコケにされたんだぞぉぉ。何か言ってやれぇぇ」


 「一人じゃ、無理っすよぉ」とチャラは泣き言を言う。「彼女欲しいっすよぉぉ」


 チャラは、開王高校からの友達だ。東王の経済学部に通っている、金髪にオシ

ャレな服をした自称チャラ男。


 ただ、とんでもないヘタレで全然チャラ男ではない。

 女性と上手く話せない臆病者だ。かわいい奴め。


 黒髪の女学生が溜息を付く。すると白いモヤがかかり、ヌケガラになった。

「おい、勉学。東大には行くなって、いったよな?」

 と胸倉を掴んできた。


 「ヌ、ヌケガラ!」

 勉学は振り払うと、アサガオの車椅子を押して逃げ始めた。


 チャラも一緒に逃げる。

「な、何すか? あの不審者」


 「早く、東大から出ろ! 勉学、チャラ、アサガオ!」

 叫びながら、ヌケガラは勉学の後を追って来る。

「ぼ、僕も狙われてるの」アサガオが焦る。


 ヌケガラは凄いスピードで勉学達に追い付いてきた。


 「誰か! 誰か! 助けてくれ!」

 勉学は周囲に叫ぶ。東大にまさか、こんなヤバイ奴がいたとは。

 辺りを見渡す。


 するとボクシングの練習をしながら、ランニング中の赤髪ショート女がいた。

 幼なじみのアネゴだった。

 周囲には女性達が群がっている。


 「東体大のアネゴさんですよね? 総合格闘技の!」

「イケメンすぎ!」

「ライン教えてください」

 とキャーキャー言ってる。


 「勘弁してくれだぜ」

 とアネゴはスマホを見せる。「何かあったら、相談しな」


 「します、します!」

「王者になるの応援してます!」

 と女学生達は目をハートにして話す。


 「ハハ、最近は全然ダメだぜ。限界感じてるかもだぜ」

 悲しそうにアネゴは呟いた。


 「アネゴ!」勉学は叫んだ。

 おっという顔をした後、彼女は近寄ってきて、言った。


 「勉学、チャラ、アサガオ! 何してるんだぜ?」

「アネゴ! 不審者に恐れているのだ! 助けてくれ!」

 勉学は絶叫ぜっきょうする。

 

 ヌケガラが、勉学の肩をつかんでくる。

「おいおい、うちの幼馴染を、いじめんじゃねぇぜ」


 合気道の小手返しをアネゴは使い、ヌケガラを地面に倒してくれた。

「アネゴ~」勉学は歓喜かんきする。

 

 アネゴは東体大4年生。総合格闘技の選手で凄ぇ有名な人。

 勉学の家の近くに住んでいる、幼馴染おさななじみ


 面倒見の良い親分肌だ。イケメン系美女で女子人気が凄い。

 最近は試合で負けが続き、限界を感じてる様だ。


 「あのなぁ。勉学、お前もお前だぜ? 思いやりや優しさが足んねぇからさ。こうなるんだぜ?」

 アネゴが右手を肩に置いてきた。

 

 !? アネゴは青い鳥のリストバンドをつけていた。

 青い鳥!?


 「おめでとう。4人目の王です」謎女が脳内で告げる。「これで異世界へ、レッツゴーです。あと2分です。」


 ヌケガラは白いモヤに包まれると黒髪女に戻っていた。目をぱちくりさせている。

「痛たた。何したの? アンタ」


 「貴様、被害者ひがいしゃ面か」勉学は怒った。


 「流石だな、アネゴ」

 近くの男子学生がヌケガラになり、そう言ってきた。そして、勉学達の元へダッシュしてくる。「東大から、早く出ろ。時間がねぇ。アネゴもだ」


 「な、何だぜ、コイツ」

 アネゴがヌケガラの前に立ちはだかる。しかし、地面にフラフラと倒れる。


 「メニエール病か? アネゴ?」勉学が心配そうに叫ぶ。

「めまいが、クソ」アネゴは悔しがる。


 「せめて、ネックレスをよこせ、勉学」

 ヌケガラが追って来る。


 「きょ、恐喝きょうかつは犯罪だぞ」

 勉学とチャラ、アサガオは再び逃亡する。

 

 しばらくして、総合図書館前に辿り着いた。

「いい加減にしろ、勉学。お前を助ける為なんだよ」


 ヌケガラは勉学にタックルをしかけてきた。二人で倒れ込む。

「貴様が、いい加減にしろ」

 勉学は声を張り上げた。


 アネゴが勉学達を追って、走って向かってきている。

 勉学の胸元で青い鳥のネックレスが光り始めた。


 「クソッ! 時間か! クソッ」ヌケガラが大声で悔しがる。

「な、何だ。いきなり」勉学は動揺した。 


 「う、上に何かあるよ」

 アサガオが口をぽかんと空けながら、言葉を発っす。

 

 空を見ると……、東大上空に大きな扉が現れていた。

「そ、そんな。何でまた」チャラが、地面に膝をつく。


 天空の扉が光った。

 光の矢が降り注いだ。

 勉学達4人は、光に貫かれ、絶命した。


 そして東大全体を光が包み込んだ。


     6


 勉学は、光の川の様な場所を流れていた。


 しばらくすると服が光り輝き、黒い軍隊風のコートとパンツに変わる。

 右手の甲には黒い不気味な紋章(もんしょう)と杖の様な紋章が浮かび上がった。


 おいおい、目立つ部分に入れいれずみとか勘弁かんべんしてくれよ……。

 意識が朦朧もうろうとしたまま、勉学は川に流されていった。


     7


キィン。キィン。ドゴーン。

騒がしい音がする。

勉学は赤いカーペットの上で目を覚ました。

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