東大転生~大学ごと転移したら魔王軍に襲撃されたのでチート魔法で倒します~

綾城輝元

プロローグ

プロローグ 「パワートロルvs勉学」

 東王とうおう大学は燃えていた。


 魔王軍が東大を急襲きゅうしゅうしてからはや2時間。

 東大軍1000の内、既に500人が死亡。

 

 殺害さつがいされ、クリスタル化した東大生の死体があちこちに散見さんけんされた。

 キャンパスは次の獲物えものを探す魔物の群れで、すし詰め状態になっていた。


 そんな中、羽柴勉学はしばべんがくは東大のど真ん中、安岡講堂前やすおかこうどうまえ中庭なかにわに座っていた。

 安岡講堂前は、この戦いの激戦地げちせんちの1つ。魔王軍と騎士団の兵があちこちで戦っていて、多くの死体が転がっている。

 

 勉学はその激戦を横目よこめに、仲間であるオリーブと敵パワー・トロルの戦いを分析ぶんせきしていた。

 メモ帳にどんどん分かった事を書きこんでいく。


 「初手はほぼ右手の棍棒こんぼう攻撃だな」勉学はうんうんと頷く。


 「ちょっとぉぉぉ。アンタも戦いなさいよぉぉぉ」

 オリーブが、パワー・トロルの攻撃を剣で受けながら、絶叫ぜっきょうした。

 

 パワー・トロルとは、トロルの上位種じょういしゅ

 醜い顔、3メートルはあるであろう巨体。

 腰布こしぬの1枚で寒くないのであろうか


 「おォォォォ」

 パワー・トロルは、左手でオリーブを殴る。

 オリーブはしゃがみ、それを避けた。


 「棍棒の次は左手で殴ると……」

 引き続き、勉学はメモを取り続けた。


 「お姫様、死にそうなんですけどぉぉぉ」とオリーブ。


 「黙れカス。今、分析中だ」

 勉学、メモ帳を眺めながら答える。「魔力を節約せつやくせんといかんしな」


 「2人で戦おうぅぅぅ」

 オリーブは懇願こんがんしながら、パワー・トロルの左腕を斬る。


 「痛いィィ。おでの腕、痛いィィ」

 激昂げきこうしたパワー・トロル、棍棒を横に払いオリーブを弾き飛ばす。


 「助けなさいよぉぉぉ」と涙ながらにオリーブ。  

 おもむろに立ち上がった勉学、飛ばされたオリーブを身体で受け止める。

 「フン。手のかかる奴隷だ」


 「何様? 本当アンタ何様?」

 息せき切りながら、オリーブが毒づく。


 勉学はニヤッと笑い、メモ帳を見せびらしながら

「アナリシス・コンプリ―テッド。分析完了ぶんせきかんりょうだ」と呟く。

 

 メモ帳を上着のポケットにしまうと今度は「賢者の杖よ!」と呟く。

 すると右手に賢者の杖が顕現けんげんする。

 「槍となれ」と命令すると、杖の先から青白い刃が出現しゅつげんした。


 危険を察知さっちしたのか、パワー・トロルは勉学に襲い掛かる。

「お前、何か、ヤバイィ」


 「ほう。カスだが、少しは頭が回る様だな」

 勉学は不適ふてきな笑みを浮かべ「右から棍棒を振り下ろす確率かくりつ。0・84」と小声こごえで述べた。


 パワー・トロル、右手の棍棒を上段じょうだんから振り下ろす。

 勉学は、左手に跳び避ける。

 それと同時に賢者の杖の刃をパワー・トロルの右腕に一閃いっせんした。

 パワー・トロルの右腕がドサッと地面に落ちる。


 「うがぁぁぁ」とパワートロルは絶叫ぜっきょうする。

「左手で殴ってくる確率かくりつ、0・91」勉学は小さく呟く。


 言うが早いか、パワー・トロルは左手で勉学に殴りかかってくる。

 「殺ス、お前だけは、殺ス」


 右手に飛び攻撃を避けた勉学。杖の刃でパワー・トロルの右手を切断せつだんする。

 続けて「な、なんでェと言う確率0・97」と口に出す。


 「な、なんでェ」

 パワー・トロルは反射的はんしゃてきに言葉を発する。


 「固有魔法こゆうまほう発動。恐怖のパニックハウス

 勉学が、右手を前に出す。10メートル位の四角いまくが辺りを包む。


 「な、何ィ、やばィ、これやばいィ」

 パワー・トロルは顔を青白くする。


 「ロエモ、ロエモ、ムホララ」勉学の手から大きな火の玉が出る。「炎火大爆殺球大ファイアボール

「あァァァ。た、助けてェ、助けてぇ」

パワー・トロルに火の玉が当たり、大爆発を起きた。


 勉学は焼死しょうししたパワー・トロルを眺めた後、

「東大に逆らうとこうなるのだ」と満足気まんぞくげに言い放つ。


 「ま……、まあまあって所ね」

 オリーブはぎこちない笑みを浮かべながら、勉学を賞賛しょうさんした。

「フン、行くぞカス」勉学はオリーブに声をかける。


「約束、分かってるわよね? クズ」とオリーブ。

「ああ、大魔王デスマギアのカスは俺が倒す」


 勉学は安岡講堂に向け、歩き出す。オリーブもその後を追った。

 

 この話は「とんでもない地獄を見ていく物語」だ。

 そして、「本当の自分を想い出す物語」でもある。


     2


 同じく安岡講堂前。

 工学部2年、田中健司けんじは死んだフリをしていた。


 そうして、少しずつ少しずつ安岡講堂に向かい、這っていった。


 へへっ。天才だろ、この作戦。戦う必要ないなんて無いんだよ。

 動物に死んだフリが効くってマジなんだな。


 少しして誰かの足を触っている様な感触が指に伝わってきた。何だ、これ。

 顔の向きを変えるとゴブリンがいた。


 ゴブリンはニヤッと笑うと、田中に刀を振り下ろした。

 地面に血が広がる。


 田中健司、死亡。


 東大軍残り499人 死亡者数465人、誘拐・行方不明者36人。

 最後に生き残るのは、果たして……。


 そして、時間は少し遡る。

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