目の前の『非現実』に困惑する。

 今日一日を振り返ってみても、普段と変わらない日々である。突然飛び込んできた目の前の『非現実』に困惑するようなことは起きるはずがなかったのである。この現実を受け止められないでいる。初めて目にした存在だが、『それ』は全身から「自分は『スライム』です。」と訴えかけている。よって、目の前の『こいつ』は間違いなく『スライム』なのである。そうとしか考えられない。


 まずは落ち着くためにも、考察を続けてみることにしよう。精神安定上、じっくりと考えを巡らせた方がいい。


 まずは外見的特徴から。色は……緑色だろうか?ところどころ光の反射によって発色を変えている。こんな背中の昆虫がいた気がする。名前は思い出せないが。


 次に大きさなのだが、思っていたよりでかい。近所の野良猫とほぼ同じ体高ではないだろうか?この大きさになると、異次元さも相まって、強い恐怖を感じてしまう。


 目に見える特徴は以上。ではここからは、いくつかの疑問点について考えてみよう。


 一つ目として、「なぜいる?」である。どうして、たった今帰ってきたばかりだというのに、私の部屋にこんな大きなものがいるんだ?完全な密室だったはずだろう。犬猫の大きさもある存在が、どこかから入り込むなんてありえない。何の前触れもなく登場したのか?やはり、ありえない。


 次に、「これは、現実なのか?」である。「『スライム』は空想上の生き物。」それが絶対の定義であると思っていた。だが実際に目の前の存在を見てしまうと、仮想と現実の境がわからなくなってしまいそうである。


 最後に、「『これ』は安全か?」だ。アニメやゲームなどであれば、表情の変化やステータスなどで、相手が敵対している状態なのかどうかまで、手に取るようにわかりそうであるが、残念ながら目の前の存在からは表情が読み取れない。というより、顔が見当たらない。まったくもって、なんとも不思議な存在である。


 かといって、このまま何もしないでおくこともできない。テーブルの上に居座られてしまうと、こちらも日常生活を送ることができない。


 さて、どうしたものか……。

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