第8話 親指 アケミは父親を犯している。
重い自転車のペダル。私は一人、歯ぎしりしながら家路を急ぎます。
ぐぅぎぎぎぃ、うっとうしいわ!
それにしてもあのウルルめ、何が新しいスマホよ!
まあ、落ち着こうじゃないの。まずは彼女が海外へ行くって確約よね。つまり、先輩の動きが一番になる。それからの支払いか。
で、………30万円と。
普通に、ありえない出費だわ。だけど、絶妙に設定してきた。私だって入り用だった。入学もひかえて最近、二回も旅行に出かけて貯金もあとわずか。ここは、お父さんに相談するしかない。
ぐぅぎぎぎぃ、この落とし前は必ずつける!
ハンドルを強くにぎる。同時にブルッと、寒気。私は帰宅と同時、シャワーを浴びていました。
その夜。
また、雨に打たれたのでしょうか? ぬれた紫のスーツケース。私の愛すべきお父さんが帰宅します。
自慢ではないのですが、私のお父さんは銀行の重役でした。そのおかげで春先は特にいそがしく、外での会食が多くなります。自然と自宅で夕食をとる回数も減るのですが、今日はあらかじめ話があると伝えておきました。
だから、ごらんの通り定時です! 私は制服に着替えて、玄関で出迎えます。
「お帰りなさい! 夕食にする? それともお風呂にする?」
ええ、そうしましょうか。バスルームにはまだ、私の残り香があるですもの。それをデザートがわりにね。今はスマホを切ってとお願いしました。
キッチンでは四角い皿を二つ用意。
「今日はサラダロールよ」
きれいに盛りつけます。タマゴ、かにかま、アクセントにキムチとか。そこでふと、気づきます。
「ねぇ! このサラダロールで思い出したんだけど。同じクラスのミドリって子。
体育館倉庫にある長ーいマットって、あるじゃない?
あれにミドリを巻いてやったの。人間ロールってね。メチャクチャ苦しくて臭くて、でもミドリは絶対に動けない。そこで中心のすき間からクモとか、カエルとか、入れるわけよ。
エッ? それは大丈夫だって。遊びなんだから。
でも、なかなかミドリは気づかないのよね。前にも言ったとおり鈍感だからさ。それでこっちもいろいろ用意していた分、反応ないって面白くないじゃない?
だから、最後に熱湯を入れてやったの。そうしたら、馬鹿みたいに悲鳴を上げちゃってさ。
ヒギギギギィイ!
だってさ。私たちは大笑い。その後は解除したとき、毛虫のようにピクピクするミドリもケッサクだったよ」
皿の上には、のりで固められたサラダロール。
よく見ると、真ん中にはクモのちじれた足が四本。逆側からはカエルの足が力なく飛び出していました。
ああ、混在しちゃったのね。でも、かにかまやらキュウリみたいなものでしょ?大丈夫。熱湯消毒するからね。お茶漬けにして全部、召し上がってくださいな。
私は素の顔に戻ります。
「ええ、面白くなかった? ミドリがかわいそうだって?」
別に、知らないけど。
そもそも
実際、あの女は許せなかった。途中から現れて、私が見たことないお父さんの笑顔ってある? どかどかと私物を持ち込んだ。知らない臭いも持ち込んだ。
しまいには、
「今日からお母さんって、呼ばれるようにがんばるね」って?
がんばるって、それは自分に対してだろうが! がんばる自分を愛せってことだろうが!
押しつけがましい。私のこと、ぜんぜん眼中になかった。
だから毎日、毎日、同じ名前のミドリをいじめることで、食卓で話題に上げてやったのよ。
ああ、せいせいする。食器棚、調理器具。以前、新しくそろえたものはすべて処分したの。香水といった化粧品、持ってきたクローゼットの洋服もすべて処分したの。残り香一切、消し去った。
ただ、カーペットには長い髪の毛がからまる。
まあ、落ち着いて。私は夕食を取りながら、ていねいにウルルの話を切り出します。その中で、薬師寺妃来(ヒラリ)がお父さんの銀行に来たことを知るのでした。
なるほどね。私はそこでひらめきます。
「確か今、ヒラリの家族って選挙中だったよね? それでヒラリもいろんな会社を回っているんだ。逆に、ヒラリならウルルの家とか先輩の実家とかも、その口実で回れるかな」
彼女にはウルルと先輩の二人を調べてもらい、確証をつかんでもらいましょう。
ええ。もし断わるようなら、おどせばいいだけです。なぜなら、私はあの変態家族。裏で恐ろしい選挙活動をしているのもお父さんから聞いています。それは信じがたい身売りという票固めでした。
ヒラリがいつもいろんな薬を持ち歩く理由は何でしょう。それは清楚、清潔、精錬を売りにしながら、選挙支援という名前で姉弟が売春していることを意味していました。
お金で投票はとっても危険な話。
だって、足がつきやすいですから。そこで売春による秘密の共有なのです。お互いが同意の上で黙っていれば、バレないことですからね。
それにしても幼女趣味や同性愛者ってのも結構、たくさんいるようです。役員にはプレッシャーを生きる中で、いびつな性癖に目覚めることが多いようです。
それをネタに今回も協力してもらいましょう。ヒラリには、ついでにピル(避妊薬)も頼んどこっと。
晴れた顔。私はお父さんに甘い声をかけます。
「今日は安全日だから♥ お風呂上がったら、待ってるね」
お父さんは優秀な銀行役員。私はスカートをちらつかせながら、夕食の後片付けをしていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます