抱いてやろうか

 逆光に映し出された姿は神々しい。銀のショートの髪には、緑のメッシュがいくつも入っている。直線的で美しい眉。優しげだかどこか醒めた目。薄い唇。白い衣は平安貴族の着る狩衣に似ている。

「いくら神だからといって、初対面の人間を口説くヤツがいるか!」

「ほう、人間のくせに生意気じゃのう」

 刹那、神の背後から数多の細い肉の棒が伸びでて身体を絡めとられてしまう。

「なにをする!」

 必死に抵抗したが、触手ががんじがらめに巻きついて抜け出せない。

「ふふ、可愛いの。ほれ、抱いてやろうか」

 肉の棒にたぐりよせられ、神の胸に抱かれた。意外と華奢な身体つき。

(身体が、暖かい……)

 見上げると、神の可憐な顔があった。

 神は微笑むと、唇を重ねてきた。柔らかく、ひんやりした感触。何が起こったか理解できなかった。

(キスされた……!?)

 頭が混乱する。逃げなければいけない。そう思って神をつき飛ばそうとした。だが、触手が腕に絡んで固く締めつける。

 異常な状況。人ならざる存在に無理やり襲われている。恐怖で脚が震える。だが、唇から伝わる高揚感と幸福感が、麻薬のように脳の機能を麻痺させる。だんだんと心が蕩けていく。

(怖い。けど、気持ちいい……)

 顔が火照る。神は満足げに、ゆっくりと唇を離した。

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