永遠の祝祭 ~神主は淫神に凌辱される~
眞山大知
第1章 神主は淫神と邂逅す
邂逅
燈台の灯りが、心もとなく揺らめいている。
奥にふるめかしい祭壇がある。清秋は祭壇の前で深呼吸をした。肺に入る空気は冷たい。かじかんだ手で脇のバチを取り、神楽太鼓を打ち鳴らす。手のひらのマメからひりついた痛みが走った。
羽岩神社は平安時代中期、
課せられた宿命はあまりに重かった。
太鼓を打ち終え、バチを置く。手がふと滑りそうになった。
懐から祝詞をとりだして、読みあげる。緊張で手が震えていた。この後、本殿に入らなければならない。新しい神主に就いて二年目の日に課せられる、一生に一度だけの義務。
目線をあげる。祭壇の奥、壁に大きな扉がある。本殿への入り口だ。扉の舟型錠をあけて扉をゆっくりとひらく。
「嘘だろ……!」
四畳程度の本殿のいたるところがピンクの肉塊で覆われていて、中央には黄色の球体が浮かんでいる。その球体からは糸のようなものが放射状に伸びて、肉塊に繋がっていた。
見てはいけないものを見てしまった。扉を閉じようと手をかけたが、思いとどまった。もう後には戻れない。それが神主としての宿命。
覚悟を決めて足を踏み入れる。肉塊を踏むと雪駄が深く沈みこんで、粘液がじわりとにじみ出る。粘液が足袋に染みて気持ち悪い。
「肉の塊だらけじゃねえか」
「誰じゃ」
突然、透き通るような声が聞こえた。声のする方は黄色の球体。これは神の声だと悟った。おじけづいていけない。
「あなたが常世瑠璃羽磐船神か」
「そうじゃ。お主こそ、名を名乗れ。燕矢の人間にしては若すぎる。まさか、盗人ではあるまいな」
「断じて違います。私は燕矢清秋。歳は二十三ですが、燕矢家の三十代目の当主です」
「……そうか。若いのに、家を継いだのか」
悲しげ声がしたあと、球体から光が放たれた。目がくらみそうなほど強烈な白い光。本殿全体を照らし、だんだんと強くなる。やがて視界は光だけになった。奥に影が見える。
「若いヤツは久しぶりじゃ」
影はゆっくり歩いてくる。
「儂だって、オスなんじゃ。若い体を思い切り貪りたいのう」
清秋は、神の言った言葉が理解できなかった。
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