第14話
俺は・・・
高校生活に馴染めなかった・・・・。
もともと勉強は苦手だったし・・・・。
学校も好きではなかったんだ。きっと。
カズヤがいたから
カズヤに会えるから
俺は学校に行くのが好きだった。
高校で
カズヤがいない高校で
おまえがいなければ 俺は学校へ行く目的は無くて
休みがちになり
すぐに退学した。
俺が
学校をやめても
おまえは深く理由も追及せずに
いつもと変わらず接してくれて
週末に会って
俺は楽しかったし
ますますおまえが好きになったけれど
おまえを好きになればなるほど
自分がみじめに思えて・・・。
こんな俺・・・・
こんな俺はおまえに不釣り合いだと
思うようになったんだ。
そんなことで・・・
って思うだろ。
俺も今ならそう思える。
だけどあの時は
俺も子供だったし
思春期ってやつ?
カズヤは俺より
マサユキやジュンといるほうが
一緒にいて幸せになれるんじゃないかと思って
そうしたら
たまたまおやじが転勤になって
単身赴任の話も出たんだけど
姉貴はもう働いて家から出ていたし
俺も高校やめていたから
一家で引っ越すことになって。
それで
もうカズヤの事はきれいさっぱり
忘れようと・・・・
カズヤも俺の事は忘れて
マサユキやジュンや新しく出会う仲間と
幸せに暮らしてくれ・・・・。
そう思って
連絡先もすべて削除して
俺のアカウントも新しくして
俺は
引っ越し先で
まったく新しい生活を始めようと決意したんだ。
はじめはパン屋に勤めたんだ。
でも長続きしなくて。
あの頃・・・
俺は
カズヤと会えなくなったことで
ひどく、不安定だったから・・・・
おかしいだろ・・・
自分から連絡を絶ったのに
俺はおまえに会いたくて仕方なかったんだ・・・。
いろいろ職を転々として・・・。
なんたって中卒だからね・・・。
アルバイトみたいな仕事しかなくて
そして、
結局水商売が長くなって
何個目の仕事だったかな・・・俺が
ホストしてる時、
画廊の男と会ったんだ。ユーリの叔父だね・・。
俺・・・絵を描くのは好きだったから
相手が画廊のおやじだからね。
営業トークで
俺、絵を描いてます。画家を目指してます・・・なんてね。
話してたら、
今度、絵を見せてくれっていう事になって
プライベートで会って
そしたら
『俺と寝てくれたら絵を売り出してやる』って・・・・。
半信半疑だったけどね。
カズヤ・・・
俺、そんな生活してたんだ。
寝て、金もらって・・・。
他の男とも何人も・・・。
なんだかね・・・
人生どうでもよくなってた頃だな・・・・。
軽蔑した・・・?
だけど、
それが俺の転機。
俺の絵は・・・
売れた・・・。
絵のうまい人なんて五万といる・・・。
要はどうやって売り込むか・・・。
彼は
俺を覆面画家として話題を作ったんだ。
まずは謎の新進女性画家として
作品を少しづつ売って行って
軌道に乗ってきたら
男性だった・・・
というシナリオだったんだけど
思った以上に絵が売れて・・・・
って言うと聞こえはいいけど
彼とベッドを共にすると
そのたびに絵が売れるんだ・・・
俺の絵の力というより
彼の力だね・・・・。
絵が売れて
そのうちに
名声が付いてきた・・・。
oto sasigataが有名になって
それで
結局
女性のまま作品を発表し続けた。
しばらくそんな生活を続けていたけど
いつか
彼の元から解放されて・・・
彼無しでも絵が売れるようになったら
カズヤを迎えに行きたい・・・・
俺はそのころずっとそう思っていた。
調子いい奴と思ってくれてもいい。
俺の方から連絡を絶ったくせに・・・な。
そして
彼が心臓発作で急死した。
なんだかんだいって
彼は俺の恩人だったし
やっぱりショックだったかな・・・。
彼がいなくなって少ししてから
ユーリと暮らし始めて
ユーリは不登校で学校行ってなくて
彼はユーリの事すごく気にかけてたから。
彼の代わりに
俺のマネジメントをユーリに頼んだ。
その頃
俺
昔のカズヤんちに行ってみたんだ・・・。
一回。
おまえんち
跡形もなくなってた・・・。
その時
俺はもう40に近かった。
ってことはおまえだってそうだろ?
カズヤにはカズヤの生活がある。
世間では働き盛りだし
結婚や子育てや人生の変化の多い年頃だし。
あまりに年月が経ち過ぎたと思ったんだ。
ずっと
俺が一人前の大人になったら
カズヤを迎えに行くって
真剣に思ってたんだけどね。
おまえの家が無くて
現実をまざまざと見せつけられて、
目が覚めたというか・・・。
俺は
カズヤを迎えに行くという夢を捨てた・・・。
ただ
おまえがもし
俺に会いたいと思ってくれていたら
虫のいい話だけど
俺は
カズヤに会いたいと思って、
あの絵・・・
ソファに横たわる抽象画の人物。
中学生の時描いたカズヤの絵を
今の俺の画風に変えて描いたあの絵を
俺の個展の時には
必ず展示した。
もし、カズヤがこの絵を見たら
ピンとくるだろうと思って。
俺・・・
いつまでも
なかなか積極的に動けなくて
こんな運待ちみたいなことしか出来なくて
俺は、昔のまま情けない男で
だけど
今日俺は
カズヤに会えて
おまえに会う事が出来て
今俺は最高に幸せで最高に嬉しい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます