第5話
俺は頭の中が真っ白になる。
女性だと思っていた画家が
実はサトシだったなんて・・・・。
こんな現実離れした話があるのか・・・。
ああ・・・これは現実ではないのかもしれない・・・・。
俺は・・・新しいゲームを考えてるんだっけ・・・?
これは
ゲームなのか・・・・?
何故俺は今ここにいるんだっけ・・・?
この男に騙されたのか・・・・?
「にしのかずや。」
チバ氏の声で我に返る。
「そう名乗る男性がいたらすぐに連絡を・・・と
ずっと言われていた・・・。」
チバ氏が話し始める。
小柄な彼には似合わない低いハスキーボイス。
「だけど、10年近くそんな男性とは巡り合わなかった。
探偵を使って探せばいいのにと助言したこともあったけど
そんなことは受け入れもせずただただ待っていた。
そんなんだから
俺は一生巡り合うことは無いと思っていたけど
まさか本当に
にしのかずやが現れるとは・・・。
驚いたね。
こんなドラマのようなことが本当に起きるなんて。」
チバ氏の話が
真っ白になった脳みそに響く。
俺を待っていた・・・・。
サトシが・・・。
俺が見つけるのを待っていた・・・。
「・・・・でも・・・・同じ名前の別人かもとは思わなかった・・・?」
俺はまだ不安がぬぐえない。
「西野和也、歳は緒方さんと同じ年。
中学生のあなたを描いた絵が何枚もあるから、
面影がありますよ。
眼差しとか。」
俺の絵・・・。
中学の時
サトシは俺をモデルに絵を描いた。
俺はサトシのモデルになるのが好きだった。
俺はサトシが
・・・好きだった。
あの頃の感情が
急に溢れ出した。
俺の絵が何枚も残ってるという事実が
サトシも俺との思い出を
大切に思っているのだろうと感じ
俺は
もう不安など何もなく
ただただ
サトシに会いたいと強く思った。
「着きました。」
車が小さな駐車場に止まった。
「ここからは船に乗ります。」
「船!?」
「そうです。緒方氏はここからすぐの無人島に住んでいます。」
「無人島!!!!」
チバ氏がさっさと歩いて行くので
俺は急いで後を追いかけた。
「待って、無人島って・・・どのくらい遠いの?
私・・・ちょっと・・・・船に弱くて・・・・。」
チバ氏が立ち止まって振り返る。
あきれたような声で
「船酔いですか?」と聞いた。
俺はそうだと返事をする。
「大丈夫ですよ。
無人島といったって、すぐそこです。
見えますよ。10分ほど乗るでしょうでしょうか。」
チバ氏は歩くのが早い。
俺は急いで後を追いかける。
少し行くと
小さな船着き場が見えて
一台のモーターボートが止まっていた。
「あそこです。」
チバ氏が指さす。
意外と大きな島が見えた。
「無人島と言っても
ずっと以前は人が住んでいましたから
電気は通ってます。
水は井戸ですが。
さあ、行きましょう。乗って。」
チバ氏が軽々ボートに飛び乗る。
10分くらいなら大丈夫だろう・・・。
恐る恐るボートに乗り込むとっぐらりと揺れた。
そのひと揺れで
すでに気持ち悪いんだが・・・・。
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