第2話 鎖

「はあ~今日もかわいかったな~灰兎きゅん♡」

{なんか日を追うごとに気持ち悪くなっていってるね君}


初めて恋をした日から1週間がたったある日、私と七瀬は電話で夜のガールズトークにいそしんでいた。

まあこの一週間で私の生活が劇的に変わったっていうこともないのだが、それでも彼について分かった点がある。まず名前、彼の名前は鏑木灰兎、これは七瀬に聞いたら普通に教えてくれた。

二つ目に彼は高3からここに転校してきたこと

三つ目に彼の好きなもの、彼はヒーロー番組が好きなようだ...

彼はよく帰宅中におもちゃ屋なんかに立ち寄ったりしている、そして最新ヒーローの変身アイテムの箱を見て目をキラキラ輝かせてる姿は正に女神すごく眼福ものだ。

まあ後は得意教科は科学、最近のひそかな楽しみは購買の焼きそばパンを一番に買うことなど様々なことだ。

ただ...わからないこともある、彼の家だ。

彼の家がこの学校から電車で2駅ほどまたいだところにあるのは知っているのだが、そこから先が全く分からない...

毎日つけているのに、駅のホームを降りてすぐの曲がり角で何故かすぐ意識を失ってしまう。一応鏑木と書いてある表札を探したりもしているのだが、あの区画一体にはそんな表札一個もなかった...


「恋って...難しいね...」

{あんたの場合なんかいろいろと恐ろしいことになってるけどね}

「そー?」

{そーだよ、普通、お近づきになりたいからってストーカーはしないよ?}

「ストーカー?してないよ?ただ後をつけていっただけ!」

{それをストーカーというんだバカタレ}

「とーにーかーくー私はけれのお家を知りたいの!知ってあいさつしたいの!」

{まず付き合ってもいないのに突然あいさつされてもビビるでしょそれは...そーいうのはもっとお話して告白して恋人になってからとかさー}

「そんなの無理だよ...恥ずかしい」

{なに急に乙女みたいなこと言ってんすかw}

「はったおすぞてめー」


恋というのは本当に悩ましい...彼のことを考えただけで胸がどきどきして下腹のあたりがきゅんってして心が苦しくなるのに...また会いたいって思ってしまう...自分のものにしたいと思ってしまう...でも話そうとするとそれはそれで緊張で胸がドキドキしてしまう...


「あー!この気持ちはどうすればいいんだー!」


私、悩む



~※※※~



じゃら...じゃら...

鎖同士がこすれるような音がする...僕はこの音が大嫌いだ...

この六畳の子供部屋が大嫌いだ、僕の意思でこの部屋から出られない...トイレに行くのすら姉に許可をもらわなきゃいけない...僕は生まれてこの方自由だと感じたことは一度もない...姉たちにこの部屋に閉じ込められ続けてきたから...

学校は好きだ、ある程度自由に動ける。“嫉妬”されちゃうから、恋人はおろか友達も作れないけど...それでも家にいるよりはましだ。

ガチャ


「灰ちゃーん♡」


扉を開けていやな声が僕の耳に入って来る、でもここで嫌な顔しちゃいけない、“おしおき”される...それは嫌だ


「黄名子姉ちゃん...どうしたの?」

「どうしたもこうしたも、私がここに来る理由、頭のいい灰ちゃんならわかるでしょ?あの女、なんで殺してないの?」


......間違いない、傘谷里香のことだ...


「いや黄名子姉ちゃん!別にちょっとつけられてるだけだし...そのたびにちゃんと【ガードマン】がうまく気絶させてくれてるんだから...いつかは諦めるよ...」

「だーめ♡誰であろうと私達の灰ちゃんを狙ってるやつらは殺さなきゃ♡」

「でも...」


パン!!!!!!


痛い、思いっきり頬をぶたれた...ひりひりする頬の痛みの中でさっきまでのことを後悔する、なんで僕は逆らったんだ...自分のせいで人が死ぬなんてもう当たり前でどうしようないことだったのに...


「なんで?なんでお姉ちゃんに逆らうの?私達は灰ちゃんになんでもあげてきたよね?おもちゃも、愛も、勉強も、快楽も、ご飯も、何もかも、やっぱり学校に行ったせいなんだ!高2までは自宅で過ごさせてたのに!赤姉の気まぐれで学校に行ってからの灰ちゃん...おかしいよ...壊れちゃったよ...」

「あ...ごめんなさ」

「もういい!もういいよ!壊れちゃったなら直すだけだよ!今日はずっとお仕置きだから!」

「待ってごめんさい!間違ってました!ごめんなさい!それだけは!」


身体からみるみる血の気が引いてゆく...

バチバチという音がこの部屋に鳴り響く...僕はその音に身をすくませながら必死に許しを請う


「もう...反省してます...許して下さい...」

「いいよ!どうせ明日学校休みでしょ?だったら問題ないじゃん!このビリビリお仕置き棒で愛を注入してあげるから!しっかりと反省して!」

「やだ!いやだ!ごめんなさい!ごめんなさい!もう言いません!もう言いませんから!」


強引に服を脱がされ、お仕置きが始ろうとする

「いいから!おとなしくしてて!」

「やだ!いやだ!ゆるして!やだああああああああ”あ”あ”ア“ア“ア“ア“ア“ア“!!!!!!」



~※※※~



「ゼェ、ゼェ、ゼェ、はあ...はあ...」

「あーーあ灰ちゃんったら、うつぶせのままびくびくしてお尻から血流しちゃって可愛いな♡反省した?」

「はい...じまじだ...」

「もう私に口答えしない?」

「しません...」

「じゃあ【ガードマン】に伝えてくるね♡」

「ゼエ...ゼエ...」


ダン!!!!!!!!


「うえ!おえ!おろろろ」


急に黄名子姉ちゃんは僕の背中を勢い良く踏みつけてくる。その衝撃に僕は思わず嘔吐してしまう...


「行ってらっしゃいのちゅーは?」

「はい...ごめんなさい...」


僕はげろまみれの唇で黄名子姉ちゃんとキスをして、そのままうつむせに倒れ伏せる。


「それでよし、灰ちゃんのげろ、おいしかったよ♡着替えとかは【ササゲール】に頼んどいてね♡」

「はい...」


ガチャ...

扉の閉まる音がする...黄名子姉ちゃんは今頃【ガードマン】に指令を伝えに行ったのだろう...【ガードマン】の暗殺技術は超一流、傘谷里香なんて一瞬で殺される...


「里香さん...僕のせいで...ごめんなさい...」


そのまま僕は意識を失う...また...僕のせいで人が

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る