第26話 ハンターチームの拠点
セシルはグレンに促されて拠点に入る。
拠点の入り口は広い空間となっており机や椅子が置かれている。
その部屋の端に二階に通じる階段がある。
セシルは天井を見上げてその広さに驚愕する。
「広いですね。」
「基本この部屋に皆いる。今は誰もいないが会議とかはこの部屋でする。」
グレンはそう説明すると、入り口から見て左に延びている通路に向かう。
通路を歩いていると右の壁がガラス張りになる。
建物の奥に位置する庭がそこに広がっている。
セシルはその庭を見ると、立てられた藁やいくつもの的といった様々な道具が見えた。
「ここは練習場だな。クエストで体がなまって動けないなんてあってはいけないからな。その為にしっかりと体を動かす必要がある。で、体を動かした後は、向かいにあるシャワーで汗を洗い流したり食堂で食事をする。」
振り向いてセシルを見たグレンは、練習場とは反対の場所にある部屋を親指で指した。
それに合わせ扉についてある窓ガラスから部屋の中を見るセシル。
確かに、部屋の中には食堂とおぼしき空間が広がっている。
となると、通路の奥にある扉にはシャワー室があるのだろう。
「時々、ユーリアか裏方勢かが、小竜を庭で遊ばしたり体を洗ったりしている。セシルも見かけたら手伝ってやってくれ。」
「分かりました。小竜達とも早く仲良くしたいです。」
「うむ、あいつらは良い奴らだからな。直ぐに仲良くなれるさ。」
そう断言するグレン。
クレハ村でもハンターの指示をしっかり聞いていたし、セシルのした事にも良く答えてくれていた。
賢く人懐っこいのだろう。
「そういえば小竜は何処にいるんです?」
「この通路の先にある小屋だ。ここからも見えるだろ?」
グレンが指さす先を見ると大きな建物がある。
小竜専用の小屋なのだろうか小屋は大きく入り口らしき場所も大きい。
その小屋に向かって二人は歩き出す。
通路の奥に行くと、そこから外に出る。
「あれ、誰か出てきましたよ?」
「ユーリアか。世話をしてたんだな。」
二人が小屋についたと同時にユーリアが人用の扉から現れる。
その動きはゆっくりと音を立てないように動いているようだ。
ユーリアも二人の接近に気づいた。
「よぉ、ユーリア。お疲れさん。」
「しー、今寝たところ。」
口の前に指を立て騒がないよう指示するユーリアにすまんと謝るグレン。
セシルは小竜に合って挨拶をしておきたかったが寝たのなら仕方ない。
ユーリアを加えた三人は拠点の建物に戻る。
「セシルに合わせたかったんだがな。」
「仕方ない。今回、無理させた。」
小竜達は長距離なのも勿論の事、ほぼ一日走りっぱなしだった。
いかに丈夫な生き物とはいえ楽な移動では無かったはずだ。
そういえばとセシルはふと沸いた疑問を聞く。
「そもそも小竜って高いですよね。どうやって手に入れたんですか?」
村長から小竜は高いと教えられたセシルにとって、グレンのチームが小竜を二匹も占有している事に疑問に思う。
「元々、私の家の子達。」
「ユーリアは元貴族の家の物でな、色々あって我々で使うことになったんだ。」
小竜の世話に混ざっていたセシルは、ユーリアが小竜を気にしていた事を思い出す。
しかし、詳しい理由を聞けば納得だ。
一緒に過ごしていたのなら心配するのも仕方がないだろう。
「それで、拠点に誰もいないようだがユーリアだけか?」
「皆、解散していない。カリネはいる。」
「なるほど、作業場にでもいそうだな。丁度いい。」
セシル達は食堂に向かったユーリアと別れ、入り口の広間に戻ってくる。
次に向かうのは入り口から見て右側の奥に伸びる通路。
練習場に飛び出る様にある建物の一部に向かう。
通路に入って右側にある部屋に入る。
「やはりここにいたか。」
「リーダーとセシル? やぁいらっしゃい。」
グレンが声をかけると、カリネは顕微鏡のついたゴーグルを上げ二人を迎え入れる。
何らかの作業をしていたらしく、作業台から身を離し立ち上がった。
近づくカリネはグレンに質問する。
「それで、何か用でも?」
「セシルに拠点の説明をしている所でな。ついでに、このあとの買い物に着いてきてもらおうかと思ったが、今忙しいか?」
「セシルの準備を手伝うんだね。私も行くつもりだったから大丈夫だよ。」
事情は既に分かっていたようだ。
カリネは、ゴーグルを外し準備に移る。
「用事でもあるのか?」
「今回使った道具の材料を買い足すんだよ。それに、準備をしなくちゃいけないのは私達も同じだしね。」
「助かる、そういうのはお前たちに任せっぱなしだからな。」
「裏方の仕事をこなしているだけだよ。」
グレンのお礼に対し、なんて事もないと答えるカリネ。
これからは、今まで通りが通用しない。
新たなステージに行くために、裏方達はやる気に満ち溢れてるのだ。
「俺も頑張りますよ。」
「そうだね、びしびし行くから覚悟してね。」
「がっ、頑張ります。」
カリネのにこやかな顔に嫌な気配を感じるが、セシルは否定はしない。
セシル自信、自分が一番頑張らないといけないと知っているからだ。
セシルもやる気に溢れてるのは同じなのだ。
「じゃあ、必要な物はこっちが用意しておくから、残りの説明済ませちゃいなさい。」
「分かった。入り口で合おう。」
カリネと別れ、作業場を出ると入り口の広間に再び戻ってくる。
広間にある階段を登り、壁沿いにある通路に出る。
ここから、二階の各通路に行けるようだ。
ちなみに、下を覗くと一階の広間を見渡せるようになっている。
「説明と言っても、後はセシルの住む部屋だけだな。」
「他のメンバーも済んでるんですか?」
「いや、基本バラバラだな。それぞれ自分の住みやすい場所に住んでいる。だから、セシルも住みやすい場所を見つけたらそっちに移っていいぞ。」
あくまでも、この場所は拠点という事らしい。
メンバーにもプライベートはある。
この町に住む為に都合の良い場所を選ぶのも必要になっていくのだろう。
とはいえ、セシルにはまだ早い話。
「急ぐ必要はない。ゆっくりと決めていけば良い。」
「そうですね。先ずはこの町の事を知らないとですよね。」
そんな話をしている内に、練習場側の上の階。
丁度、食堂の上の部屋に案内される。
ベッドや棚といった最小限の物しかないシンプルな部屋となっている。
「しばらくはこの部屋に住んでもらう。変えたい所があれば好きにいじってくれて構わないぞ。」
「分かりました。」
セシルはベッドの上に荷物を置く。
荷物からお金だけを取りだしズボンのポケットに入れると部屋を出る。
詳しく見るのは帰ってきてからで良いだろう。
「さて、これで一通り説明したかな。竜車を止める車庫は見えてたから問題ないだろうし。」
グレンは、しばらく悩むと納得したかのように、うんと頷く。
無事、拠点の説明が出来たと満足したのだろう。
「さぁ、買い物に行こうか。カリネも待ってるかもしれないしな。」
「そうですね。行きましょう。」
部屋を出ると、広間に戻り一階に降りる。
すると、入り口にはカリネが二人を待っていので合流する。
ここにいるということは、カリネも買い物の準備は出来たらしい。
「それで、何処まで話しは進んでいるの?」
「あらかた説明は済ませてある。後は、町の案内を軽くして武器屋でセシルの装備と俺の武器を注文するつもりだ。」
「それで、私の出番ね。任せてちょうだい。」
「恩に着ます。」
自信満々に言うカリネにセシルは頭を下げる。
カリネは武器やアイテムを管理していたので詳しいのだろう。
なにも知らないセシルに専門家が付いてくれるのは頼もしい。
「まずは、何処にいくの?」
「そういえば、考えて無かったな。近くの店から案内するか。」
「それが良いかもね。」
目的地が決まると一同は歩き出す。
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