第27話 お買い物
グレンとセシルは新たにカリネを加えて目的の店に向かう。
町の一部の場所に様々な店が集まっており、その店の塊が町の至るところに出来ている。
一同は、拠点から近い場所に向かう。
「改めてなんだけど。買うものはセシルの装備、リーダーの武器、後は雑貨もろもろで良いよね。」
「ついでに、セシルの生活道具とかな。」
「お金はあるの?」
「はい、手持ちは少ないけど持ってきてますよ。」
セシルは、そう言って手に持った袋をカリネに見せる。
その袋の中に、親から貰ったお金を入れている。
カリネは、フムと納得したようで話を続ける。
「ギルドから出すつもりかと思ったけどそれなら安心だね。」
「流石に、そこまでお世話になるつもりはありませんから。」
セシルの、ほんのわずかなわがままだ。
ハンターになるため着いてきたのに、何も用意していないんじゃあ情けない。
自分の分は自分で用意出来ない様では、この先が思いやられてしまう。
「アリアもその辺気にしてそうだからね。ちゃんと、後で説明しとかなきゃね。」
「チームのお金の管理を任せてるからな。今回の買い物も一緒に来て欲しかったが。」
「アリアの事だから忙しいんでしょ? 今は、専念させとこうね。」
今頃、まだ研究所でドラゴンの骨を研究しているだろう。
そっちより優先してもらう程ではないので、わざわざ呼ぶ必要も無いだろうとの事で一同は一致する。
「先に寄るのは武器屋からで良いでしょ。雑貨で荷物増やしても邪魔なだけだしね。」
その後に、私も持ち歩きたくないしと付け加える。
カリネに反論する者もいなく、行き先が武器屋に決まった。
そんな話をしている内に、様々なお店が並ぶ場所までたどり着く。
「武器屋に行くまでに軽く見て周ろうよ。」
「そうだな。少し遠回りになるが、道を覚えるのには説明するより見た方が良い。」
セシルのために、お店が並ぶ道に入る事になった。
入り口から店の中を覗きながら歩いていく。
服を売っていたり、本を売っていたり、料理に使う道具が売っていたり。
初めてお店と言うものを見たセシルには、その空間にある全てが新鮮に見えた。
「あ、あの食器。」
急にカリネが食器が並んである箇所を指をさす。
セシルとグレンは、その方向を見る。
「これ、クレハ村の食器だよ。人気なんだよねこれ。」
「入り口近くに専用スペースを作るぐらいだからな。」
「ありがたいです。」
セシルは、目の前にある光景に照れ臭く感じる。
自分の村の作品がこうやって商品として並んでいる姿は何だか嬉しいものだ。
何人かのお客さんが手に取る姿を見て誇らしく感じる。
「っと、ついたよ。ここが武器屋だよ。」
歩きを再開してしばらく歩き、一同は他の場所とは少し離れたお店の前で止まる。
今までのお店とは違い人を選ぶお店ゆえに、他のお店とは少し離れた場所にあるのだ。
グレンは、そのお店の扉を開く。
店の中に入ると様々な武器が至るところに並べられている。
「店長、いるか?」
「何だ、グレンか。新しい武器でも新調しに来たか?」
「それもあるが、この少年の装備を予約しにな。」
返事をしたと言うことはこの人が店長だろう。
グレンは、セシルの肩に手を置き店長に説明する。
「見ない顔だな。」
「新人だよ、今度うちのチームに入ることになってな。」
店長は入り口に立っていた一同に近づきセシルを見る。
グレンが肩に手を置いているセシルの頭から足までをじっくり見る。
「なるほど、用意するのはどの装備だ?」
「まだ役割を決めてないからな。とりあえずは革装備一式で。」
うむと、納得した店長はついてくるようセシルを促し奥に向かう。
その後をついていくと、その場に立たされる。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。この店の店長のグリードだ。よろしくな。」
「俺はセシルです。よろしくお願いします。」
「セシルだな、じゃあ早速だが体のサイズを計る。腕を上げてくれ。」
セシルは、店長の言う通りに動き体を計られていく。
装備を作る上で必要なことだ。
じっと動かず、計り終えるのを待つ。
「新人でいきなり中級チームに参加するとはな。これから大変だぞ。」
「覚悟はできてます。」
「そうかい? まぁ、死なんように祈ってるよ。」
店長は、セシルに笑顔を向ける。
一方、セシルを見送ったグレンとカリネは武器を見ていた。
大剣が並ぶエリアで、一つ一つの固さや重さを調べている。
「もとあった武器と比べると丈夫なのが多いが、ドラゴンと渡り合えるかと言えば難しいな。」
「そうだね、そもそもこの地域に出る奴らを基準にした武器しかおいてなさそうだし。」
グレンは大剣を一つ持ち構える。
難しい顔をしながら大剣を見ると、元あった場所に戻す。
どうやら、納得のいく物は見つからないようだ。
「どうだ、グレン。」
声がした方を見るとそこに店長がいた。
セシルの計測が終わって戻ってきたようだ。
「駄目だな、もっと丈夫なものは無いのか?」
「そこにあるので全部だ。そもそも、そんなもん担いで何しようってんだ。」
「ドラゴン退治だ。」
グレンの言葉を聞いた店長は目を丸くして驚くと笑いだす。
唐突な言葉に驚いたのか笑いが止まらない。
「それじゃあ無理だ。もっと堅い鉱石を取り寄せんと。」
店長はひとしきり笑うとにやりと笑う。
何やら楽しそうだ。
「こんな場所でドラゴンの名を聞くとは思わんかった。」
そう言って、何かの書類を取り出しページを捲っていく。
しばらく見ていると納得したかのようにうむと頷く。
「ドラゴンの鎧を砕ける武器か。ちょっと値は張るがどうだ? 久しぶりに良いもんうってやるよ。」
グレンは、一言返事で了承した。
セシルを迎え、武器屋を出る。
その直後、店の中からどたばたと騒がしい音が聞こえる。
「勝手に決めてしまってすまないな。」
「良いんじゃない? お金を惜しんで後で後悔しても手遅れだからね。」
これから足を踏み込む場所を考えると、手を抜いた準備は許されない。
武器は強いに越したことは無いのだ。
「さてと、じゃあ次の場所に行きますか。」
武器屋を出た一同は、次の目的地に向かう。
武器屋から少し戻った場所にその目的地がある。
「おいっす。」
最後の目的地であるアイテム屋につくと、カリネが扉を開く。
すると、棚の整理をしていた男が、入ってきた一同に気づきそちらを見る。
「おっ、買い物か? いくらでも見てってくれ。」
「んじゃあ、私は店長と話すからセシルは必要な物を見てきて。」
セシルは、分かりましたと店の商品を見て周る。
カリネはメモを取り出し店長に渡す。
「何時ものだな、ちゃんと用意してあるぜ。」
店長は、メモを見ながらカウンターに向かうが、ふと足を止める。
メモに書かれている中に、何時もと違うものが書かれているからだ。
「これで、間違いないんだよな?」
「そうだよ。あるよね?」
確認すると言い残し店長は、店の奥に引っ込んだ。
グレンは、店長の反応に疑問を持つ。
「何かするつもりなのか?」
「うん、上手くいくかは分かんないから今はまだ言えないけどね。」
にっしっしと、カリネは何かをたくらんでそうに笑っている。
こうなると、何を言っても答えないのをグレンは知っているので特にこれ以上言及するつもりはない。
「何かあったんです?」
「何でもないよ。」
買い物を済ませたセシルが戻ってきたので適当に答えておく。
それと同時に、店長も戻ってくる。
「例のものあったぜ。確認してくれ。」
「どれどれ。」
手に持っていた籠をカウンターに置くと、カリネは中を確認すしだす。
その間に、セシルの買い物を済ませる。
店長は、先程から気になっていたセシルについて質問をする。
「新人さんかい? ようこそ! 是非、今後も俺の店をご贔屓に。」
「セシル、相手しなくてもいいからね。」
「冷たいなぁ。俺とカリネちゃんの仲じゃなねぇか。」
「そうだね、余計な物を押し付けてくる仲だね。」
カリネは、嫌そうに皮肉を言う。
だが店長は気にもせず笑っている。
「仲がいいこそじゃあないか。今後もよろしくね。」
「はぁ、全く。」
カリネは、呆れてため息をつく。
店長に押し付けられたものが役に立つこともあるので否定は出来ない。
「よし、こんなものかな。これ全部でいくら?」
店長が出した紙を受け取ったカリネは、ペンを取り出し紙に何か書き出す。
ペンをしまうと紙を店長に突き返す。
「こんなもんでどう?」
「流石にこれは・・・。」
どうやら、値切るために値段を書き換えていたようだ。
紙を受け取った店長の口が引きつっている。
「聞いたよ? 私を金ずるとか言ってたらしいじゃない。」
「ぐっ。」
「何時も在庫処分に付き合ってるのは誰かな?」
「ぐぬぬ。」
カリネの怒濤の攻めに店長は押されている。
グレンとセシルは、若干引きながらもその攻防を後ろで見ている。
「じーーーーーっ。」
「・・・分かったこれでいこう。」
「どうもー。」
勝利したのはカリネだ。
嬉しそうに自分が開示したお金の分を払っている。
仲が良いからこそ出来る技だ。
「ごめんねぇ、私達これからいっぱいお金を使うことになるから、削れる所は削りたいの。」
「それって、今日運ばれたドラゴンの骨と関係があるのか?」
「何だ、知ってたんだ。」
どうやらこちらの事情は知っているようだ。
値切られたことにふてくされ頬杖をついた店長は話しを続ける。
「たまたま見かけてな。何かきな臭いと思ってたんだよ。」
「どうゆうこと?」
「最近、取り寄せれる品物の数が減ってんだ。もしかしてってな。」
店長は、グレン達を見て真面目な顔をする。
これでも、グレン達の身を気にかけてるのだ。
「足を伸ばすんなら気を付けろよ。絶対何か嫌な事が起こってる。」
店長の真面目な忠告におふざけを忘れて、黙り混んでしまう。
が、直後に店長は一同に笑いかける。
「ま、あれだ。良いもん揃えて待ってるからまた来てくれや。」
「ほどほどにしてよね。」
そう言って、一同はお店を出る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます