第19話 戦後処理
獣が止まったのを確認したアリアは竜車を止める。
「問題ないと思うっすけど、鳥に先を見てもらうっすよ。」
「頼んだわ。」
コガラキは笛を吹き鳥を飛ばす。
鳥を見送った一同は床に座って一息つく。
解決したかどうかは鳥の探索次第だ。
「何事も無くて良かったっすね。」
「そうね、一時はどうなることかと思ったわ。」
「他の村に迷惑はかけたくなかったしね。」
ハンターとして、関係のない所を巻き込まない様にするのは大事だ。
だからこそ、コガラキの言う通り何事も無く迅速に止めれたのは良かった事だ。
そんな中、先程飛ばした鳥が戻ってくる。
「戻って来たっす。どうやら問題無さそうっすね。」
「じゃあ、他の村の被害は無いんですね。」
「そういうことね。」
どうやら、止めた獣達以外に暴れている獣はいないようだ。
それを聞いたセシルは村の無事を喜ぶ。
セシルとしても知り合いの村が巻き込まるのは避けたかったのだ。
「あれ、誰か来たようっすけど。」
コガラキが見ている先に、いくかの明かりが暗い道に浮かび上がっている。
その明かりは、段々とこちら側に向かって来ているようだ。
近づく度にその正体が明かりにより分かっていく。
「これは一体何が起こってるのだ。そこにあるのは竜車か?」
「誰かいるのでしょうか。」
明かりの正体は馬に乗った数人の人間だ。先頭にいる人間がランプを上げ広い範囲を見えるようにしている。
人が来たのを確認したアリアは前座から降り近づくと自己紹介をする。
「こちらはハンターチームです。この辺りで起こった異常現象の対処でまいりました。」
「私はこの近くにある村の村長です。そして、後ろにいるのは護衛で来てくれた村人です。先程から森で爆発音が何度も起こっているので見に来たのですが。」
村の村長を名乗る人物は馬から降りて自己紹介をする。警護の人達も頭を軽く下げる。
爆発音がしたら普通は心配になるのは当たり前だろう。
すると、村長が訪れた事が見えたセシルは竜車から降りて駆け寄る。。
「村長、俺です。クレハ村のセシルです。」
「おぉセシルか、元気にしておったか? というか何故このような場所に?」
「実はクレハ村が襲われて。」
セシルは、何があったかを代表して全て説明していった。
村長は、話を聞くたびに眉を潜めていく。
それもそうだろう、事件なんてあり得ないのどかな地域で肉食の獣が暴れまわっていたなんて信じるのは難しいだろう。
「先程からの爆発音の事もあるし、セシルの言うことだから信じたいが。」
「村長さんが悩むのも仕方ないわ。我々ハンターも今回の事件に振り回されてるもの。」
実際、対応が難しく想定が出来ないような事件が何度も起きたのだ。
ハンターとして、自分達の実力よりも上の世界に突然放り込まれるという始めての経験だ。
「でも、倒されたということはもう問題が無いと言うことですかな?」
「いいえ、原因の調査をしない事には安全だと判定は出来ないわ。」
「そうですか。」
「とりあえず、町に戻ってギルドと相談するつもりよ。」
クレハ村と同じくこの周辺の村に不安を残すのは仕方がない。
とりあえず今必要な事は、出来ない事よりもしなくてはいけない事。
アリアは、横になってぐっすり寝ている獣達を見る。
「まずは、この獣達を森にかえさないと。」
「我々も手伝いましょうか?」
「そうね、お願いするわ。」
基本的にこういうことは、ギルドに依頼して派遣してもらった職員に任せるものだ。
しかし、この辺りは平和なのでギルドの施設は置いていない。それが裏目に出たのだ。
「では、今起きている村人達を連れてきます。」
「それじゃあ、私達はここで待ってるわ。」
「いや、あっしがここに残るんで。皆は森を手伝って欲しいっす。」
竜車から飛び降りたコガラキが提案する。
今頃、森ではハント組が暗い中活動しているだろう。
明かりで誘導して上げる必要があるので戻らなくてはいけないのだ。
とはいえ、この場に誰もいないという状況は作りたくない。
「俺も残りますよ。村のみんなとは見知った人もいるので。」
セシルが自分も残ると言い出す。
知った仲の人がいればそれで話は通りやすくなるだろう。
それに、自分は森に戻っても出来る事が無いと認識しているのだ。
「そうね、じゃあ私とカリネで森に戻るわ。後はよろしくね。」
そう言って、アリアは竜車に乗り森へと発進させる。
アリア達は新たに森から出た獣がいないかを確認しながら竜車を走らせる。
来た道を戻って行くと森の入り口が見えたのでそのまま入る。
「目指す場所は出発前にいた場所で良いわよね。」
「そうで良いと思うよ。」
森に入ってしばらく進んで行くと騒がしかった森が静まっているのが分かる。
どうやら上手く獣達を沈めることに成功したのだろう。
静まり返った道を進んで行くと目的の場所につく。
「確か、この辺だったわね。ついたわ。」
「りょーかい。」
竜車は速度を落としていき完全に止まると、カリネは階段を降ろしそこから降りる。
そして、ボウガンを手に持ち空に向かって打つと玉が飛び出る。
玉は空へ飛び一定の高さに到達すると、火花を散らして空を照らす。
この明かりで皆は気づいてくれるだろう。
「さて、やることがいっぱいね。」
「まずは解体からだね。解体ナイフ研いでおくよ。」
「ドラゴンの解体か。知識では知ってるけど解体するのは初めてね。大丈夫かしら。」
アリアは分厚い本をめくり、カリネは解体ナイフを数本研ぐ。
解体ナイフは刃がギザギザで出来ているため、丸い棒状の砥石でギザギザの間を研ぐ。
研いだナイフに袋とランプをつけると夜の解体セットの完成だ。
裏方の仕事をこなしていると、ハント組が続々戻ってくる。
「一番乗りってとこかね。」
シルファが周りを見回しながら竜車に帰ってくる。
「よう、どうやら無事に終わったようだな。」
シルファがついた直後にエリクも帰ってくる。
役目を終えたので合流したようだ。
二人を見たアリアは、解体セットを掴むと二人に渡した。
「お疲れさま、早速で悪いけど大虎の解体に行ってきて。」
「ドラゴンの解体の方がやりたいんだけどな。」
「そっちはリーダーに任せるつもりよ。場所も遠いから今すぐ行ける二人に行って来て欲しいのよ。。」
大虎の解体もしないと腐ってしまう。
そんな事は、勿体ないとの判断だ。
不満を言ったものの二人は了承し大虎のもとに向かう。
「今戻った。」
「俺も戻ったぞ。他の者はまだか?」
「丁度良いタイミングねリーダー。二人はブラッドタイガーの解体に向かったわ。」
「なるほど、じゃあ俺も動かないとな。」
「えぇ、リーダーとユーリアは私と一緒にドラゴンの解体ね。」
アリアは解体セットをグレンに持たせ、メモ帳を持ちポーチを腰につける。
主な仕事は、グレンに任せるつもりだろう。
そして、グレン、ユーリアと共にドラゴンのもとに向かう。
「ちゃんと情報を取らないとね。」
「またドラゴンと戦いがあるかもしれないしな、これからの為にも必要な情報は集めておかないといけないからな。」
鱗の固さや筋肉の質を知れば効率よく攻撃できる方法が分かるし、爪や牙の固さを知れば正しく守る方法が分かる。
相手の生体を知れば知るほど対等に戦える事が出来る。
ハンターにとって情報とはそれほど重要な物なのだ。
「あれがドラゴンね、楽しみだわ。」
広場に出ると変わらずそこにあるドラゴンに近づく。
ドラゴンの死骸を見たアリアは、鱗を触ったり爪を触ったりすると何やらメモを取っている。さらに、ポーチからハンマーを取り出すと体の各所を叩いていきまたメモを取る。
「成る程、確かにこれはこの辺りの獣とは比較にならないレベルね。」
しばらくメモを書いた後立ち上がる。
「それじゃあ解体を始めましょうか。」
アリアの指示でグレンとユーリアは解体ナイフを取る。
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