第7話 ボスとの決闘。
一同はグレンの合図で村を出る。
山の入り口は村から出てすぐの所にある。
そこから、人の手で作られた道が上へと伸びている。
「もうすぐ着くっすよ。」
降りてきたウルフと鉢合わせる可能性がある。
なので、一同はウルフを警戒しながら山にたどり着く。
音や姿が無いかを徹底的に確認した後、入り口前に集まる。
「よし、目的地に着いたな。コガラキ。」
名前を呼ばれたコガラキは皆の前に立つ。
「あっしが皆さんを先導するっす。」
「よし、作戦開始といくか。」
コガラキを先頭に一同は山の中に入っていく。
山に歩みを進めると、地図で確認した入り口を見つける。
「俺たちは平面でしかこの山を知らない。まずは目的地が見える場所まで先導してくれ。」
「了解っす。」
山に入ると警戒心を高める。
いつ、降りてくるウルフと鉢合わせするか分からないためだ。
「はぁ、何でよりにもよって山に巣を作ったんだ。」
「山には果物がなり、それを食べる草食の獣が集まる、そしてそれらを狙う者が現れる。
そういうもの。」
「まーね、つべこべ言っても変わらんよ。まぁゆっくり行こうや。」
声を潜めながらも、雑談しながら登っていく。
山の道は人の手が加えられており、なんなく登っていく。
「本格的な登山になったな。リーダー大丈夫か?」
「問題ない。慣れと言うのは恐ろしいな。」
エリクは鎧を着ているグレンを心配する。
彼ら程のハンターなら重たい荷物を持って険しい道を歩くのはよくあることだ。
そのまま進んでいくと、別れ道が増えていく。
しかし、コガラキは迷いなく進んでいく。
「気を付けるっすよ。違う道に行くとどんどん目的地から離れていくっす。」
「あーらら、まるで迷路だねぇ。」
「とは言っても、素直にこのまま上に行く道を行けばいいっすからね。」
「一番きつい道が当たり、分かりやすくていいじゃねーか。」
愚痴を言いつつも疲れ一つ見せずに登っていく。
しばらく進むと広い道に出る。
何もない平坦な場所だ。
「身を隠す場所はないか。」
「丸見え。」
「ここから先は、気を付けて行くっすよ。」
周囲を確認しながら進んでいく。
確認を怠った場所から発見される事も考えて動く事も必要だ。
そのため、警戒を欠かさないことは基本である。
「今んところは、気配はねぇな。」
「このまま、突っ込んじゃいましょ。」
一同は急いで広場をかける。
そして、岩陰に姿を隠し周りを見渡す。
姿を隠せる場所を見つけては、少しずつ安全を確認しながら先に進んでいく。
「静かに。」
急にコガラキが手で制止を促す。
それを合図にハンター組は息を潜める。
それだけで、獣が現れたと判断する。
上げていた手の指を二本だけ開き数を教える。
(敵は二匹か、群れはなさそうだ。)
作戦会議の時に、群れを成していない獣がいたとの報告があった。
警戒していて正解だった。
コガラキは、息を潜めたまま体を少し乗り出す。
二匹の獣が後ろを向いたところだった。
(今っす。)
手を勢いよく降ろす。
その合図に合わせシルファとユーリアが飛び出す。
獣との距離を縮め、首元にナイフを刺す。
その瞬間、口を閉じさせ声が出ないようにする。
(完了。)
(合図を送るんよ。)
二人は獣を始末したのを確認すると、合図をコガラキに送る。
すると、今度はグレンとエリクが姿を現す。
(今のうちだ。)
(了解。)
目線で合図を送り合う。
二人一組に分かれると獣を掴み崖へと運ぶ。
そして、そのまま山の外へと投げ捨ててしまう。
「もういいっすよ。」
一同は深く息を吐く。
しかし、気は緩めない。
まだ潜んでいるかもしれないからだ。
「コガラキ、次頼む。」
「分かったっすよ。」
コガラキが次の道の確認にいく。
巣は確実に近くなっている。
見張りも増えているだろう。
「そろそろ巣の場所か?」
「そうだったはずなんよ。」
「なら、慎重に。」
「そうだな。敵に悟られれば今回の作戦は機能しない。気をつけて進むぞ。」
子分に見つかっては、ボスに知らせられてしまう。
そうならないよう、確実に進んで行くのが大事だ。
ハント組は、先を監視するコガラキの後を追う。
「どうだ?」
「監視がいるっす。」
「と言うことはだ。ボスまでわずかだな。」
「そっすよ。ここから目的地に行くっす。」
地図には、この先に線が合流している場所がある。
そこにある木に囲われた所に、ボスの巣がある。
先程のように、監視を倒しながら進んでいく。
「来たか。子分は?」
「いないっすよ。」
無事、目的地までの子分を討伐出来たようだ。
たどり着いた一同は、巣を包囲するように別れる。
「行動開始。」
ついに巣がある場所だ。
そのまま、木の密集地に入り込む。
そして、樹を背にして奥を覗く。
(第一作戦完了。)
その先には、空間があった。
奥にボスが寝ているのを確認する。
そして、その回りを子分が囲っている。
(確認完了。作戦に移る。)
時間をかける訳にはいかない。
すぐさま、アイテムポーチから球を取り出す。
他のメンバーも同じように取り出す。
「作戦開始!」
一斉に群れに向かって球を投げる。
飛び出した球は敵の群れの中に着弾しそして爆発する。
それを合図に、一同が飛び出した。
「相変わらず、凄い威力だな。」
直撃を受けた獣が何匹か吹き飛んだ。
それでも、逃れた数匹がグレンを襲う。
しかしそれは、他のメンバーのナイフで止められる。
「今なんよ!」
「任せたぞ!」
子分は他に任せて前に出る。
脇目を振らずに駆けていく。
あの騒動で奴が動かない訳がないからだ。
そのまま進むと、他より一際大きい個体がこちらを睨み付ける。
「こっちだ!」
あえてグレンが声を上げた。
ボスの注意を引き付ける為だ。
すると、向こうがこちらに気づく。
ぐるるるる。
唸りをあげてグレンを見るボス。
それに対して、堂々と前に出るグレン。
その際、大剣の柄を握る。
「来い!」
獣に向かって叫びながら駆け出す。
それを阻止しようと周りの子分らしき連中が動き出す。
しかし、それは他のメンバーによって阻止される。
「させないんよ。」
「行かせない。」
「おとなしく狩られとよっ。」
急な襲撃に対応できなかった子分達。
抵抗出来ずにそのまま狩られていく。
メンバーが引き付ける間に、グレンはボスへと突っ込む。
「うおぉぉぉぉ! 」
ボスもまた、対応するかのように口を開き迎え撃つ。
しかし、黙って食われるグレンではない。
ボスと接触する瞬間、取り出した大剣をボスの横顔に叩きつける。
「吹っ飛べ!」
その衝撃に、ボスの顔が横へと逸れる。
それでもとすぐさま体勢を直しもう一度襲いかかる。
直ぐ様、大剣で防ぐグレン。
「させん!」
抵抗するも押し込まれる。
そこで、片手を離し代わりに足で抑えた。
片手と片足で攻撃に耐える。
そして、空いた手で腰にあるナイフを取り出した。
「くらえっ!」
それをボスの顔に突き刺す。
すると、ボスがその痛みに大剣から離れてしまう。
その隙は見逃さないと、グレンが大剣をボスの前足に叩き込んだ。
ぐるぅあっ。
その結果、相手が横に吹き飛んだ。
前足は、血を吹き出しながらあらぬ方向に曲がってしまっている。
その隙を逃すグレンではない。
「まだまだっ! 」
立ち上がろうとするボスのもう一本の前足もへし折る。
前へ倒れるボス。
その頭に大剣を降り降ろす。
ぐうおおおぅ。
頭から血を流すボス。
しかし、痛みに耐えたボスが後ろ足で地面を蹴る。
それにより、グレンが頭突きで吹き飛んだ。
「リーダー!」
地面に背中から落ちるグレン。
その様子を見ていたシルファが叫ぶが。
「構うな!」
突き飛ばした勢いのまま、グレンに覆い被さるように襲いかかるボス。
しかし、それを大剣で受け止めた。
その結果、ボスの体勢が崩れてしまう。
「おらっ!」
それを見切ったグレンは、ボスの腹を蹴り上げる。
すると、重心をずらされたボスがそのまま地面に落ちる
今度はボスが、背中から地面に叩きつけられたのだ。
「ごほっ、はぁ。」
しかし、地面に叩きつけられたのはグレンも同じ事。
ポーチから薬品を取り出し飲む。
すると、折れた前足を支えにボスが立ち上がる。
そして、頭から血を流しながらも大空へ叫ぶ。
ワオーーーーーン。
雄叫びを上げる、その雄叫びは辺り一面に響き渡っていく。
まるで、周りへと呼び掛けるように。
「しまった!」
ワオーーーーーン。
すると、離れた場所から雄叫びが返ってくる。
ボスよりも小さい声だ。
「リーダー仲間を呼ばれたぞ!」
周りにいた子分達だろう。
辺り一面から駆けつけてくる。
気付いた時には、すでに囲まれていた。
「まだこんなにいたのか。」
「あらら、大変なこっちゃ。」
新手の子分に対して武器を構える。
グレンの方へといかせないよう立ち塞がる。
「囲まれた。指示を。」
「そのまま後退。限界まで引き付ける。」
下がるメンバー。
じりじりと囲うように迫ってくるウルフ達。
しかしそれは、ウルフ達をまとめる為の罠だ。
「煙を巻くんよ!」
アイテムポーチから煙球を取り出し投げつけるシルファ。
それを確認したメンバーは、煙が広がったと同時に突っ込んだ。
「よし、殲滅だっ!」
「通さない。」
「こっから先へは行かせんよ!」
煙の中で、子分達を狩っていく一同。
グレンもまた、ボスに向かって駆け出した。
一方ボスも駆け出すが、大剣を受け仰け反ってしまう。
そしてグレンは、ボスに突進し横に引き倒す。
「いい加減くたばれっ!」
グレンは、ボスの首を押さえてナイフを刺す。
その痛みに暴れるボス。
すると、新たなナイフが突き刺さる。
「合わせるんよ!」
「了解!」「了解。」
シルファの叫びと同時に、ナイフが突き刺さっていく。
子分を殲滅したメンバーが駆けつけたのだ。
それらが致命傷となったのかボスが動かなくなる。
「作戦完了だ。」
煙も晴れて、地に伏した子分達が現れる。
動くウルフはもういない。
無事、全てのウルフを倒せたようだ。
「ったく、面倒かけやがって。」
「ま、終わり良いければ全て良しなんよ。」
「同意。」
仲間を呼ばれて手こずりはした。
しかし、なんとかボスを倒せたのだ。
結果は充分だろう。
「おいおい、反省はしろよ? ともかく作戦は終了だ。早く戻ろう。」
「そうだな。早く知らせてやろうぜ。」
この吉報を、村人達は待ち望んでいるだろう。
一同が、帰路につこうとした時だった。
メンバーの上空を巨大な影が通過する。
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