第3話 ハンターチーム

 竜車が動き出し町をかける。セシルは、グレンの横に置かれた椅子に促され座る。

 来た道をすごい速さで進んでいくのを見て驚く。

 そして、門へたどり着くと竜車が町を出る手続きをするため止まる。

 その際、近寄ってきた門番に声をかけられる。


「あんた、今朝運びこられた人か。村が大変らしいな、絶対に助けるんだぞ。」


「ありがとう、村は絶対に取り戻すよ。」


 手続きがすみ竜者が進む。お互い手をふる。

 竜車が今まで歩いてきた道を突き進む。

 門が見えてからも長いこと走った距離をあっという間に過ぎていく。

 村で扱っている馬車に比べてでかく速いのだ。車輪もでかく様々な機械が取り付けてある。

 グレンは壁に立て掛けていた円状の机を乱雑に中央に倒す。


「さて、まずは自己紹介といこうか。先ほども言ったが俺の名前はグレン。このチームを務めている。」

「俺はシルファ。リーダーがいない間は俺が指揮をとる事になっとるんよ。」

「そんでもって俺はエリクだよろしくな。」

「私は、ユーリアと申します。」


 装備をまとった者達が名乗り出る。

 革製の物で身を守っており、見るからに戦える姿をしている。


「私はカリネ。ちなみにこの竜車の整備士でハンターじゃないよ。要は裏方ね。」

「同じく裏方のコガラキっす。ハンターについていってアイテムの補充や罠の設置とか、後俺の横に止まっている鳥で獲物を探すっす。」

「ちなみに小竜に指示を出してる私はアリアよ。おもに小竜の世話や魔物の情報を整理する書記みたいな事もしているわ。」


 裏方と自称する者達も名乗る。

 先程の戦う人達を裏からサポートするといったところだ。

 動きやすい衣装に身を包んでいる。


「ここにいるメンバーでハンターチームを組んでいる。」


 戦うものと支えるもの両方合わせてのハンターチームだ。

 ハンター達の紹介に合わせセシルも名乗る。

 

「俺の名前はセシルと言います。今回は、依頼を受けていただきありがとうございます。」


「そうかしこまらなくていいさ。」


 グレンは、セシルを落ち着かせたると机の側にどっかりと座る。

 それに合わせ竜車にいる一同の視線がグレンに集まる。

 皆がこちらを確認したグレンは机の上に紙を広げる。


「さぁ、自己紹介も済んだところでクエスト内容を伝える。今現在クレハ村は時期外れの獣の群れに襲われているため、そいつらから村を奪還する。」


「こんなこと今までなくて、いったいどうすればいいか。」


「私達も初めてよこんなこと。普段今ごろは、山にいて冬眠から目覚めた餌を狙っているはず。私達は、奴らを狩って自然界のバランスを取っているのよ。」


 今回の件は常識から外れた事なのだと竜車の前座からアリアが解説する。

 ならば原因は何なのか。アリアに対しグレンが質問する。

 

「奴らは、餌がなくて降りてきたと考えるのが普通だが。」


「可能性はある、でも私は別の説をおすわ。」


「ボスが現れた。私はそうみてる。」


「ボスだ? ボスってのはもっと数が多い地方で生まれる個体だろ? 何でまたこんな場所に現れるんだ?」


 アリアの言葉に、エリクが質問する。

 この地方のウルフは、群れが出来てもすぐにハンターに狩られるためボスが生まれることはない。

 平和な場所ゆえに思い付かない発想だ。

 しかし、アリアにはそう言えるだけの自信があった。


「聞いた話が本当なら統率がとれ過ぎている。あいつらは、それぞれの違うチームで行動するの。でも話を聞く限り獲物を見つけた群れは他の群れを呼んでいる。ボスがいる群れの特徴ね。」


「となると、複数の群れにボスともやりあう事になるのか。大変なクエストになりそうだ。」


「まぁ、ボスなら討伐経験もあるし、大丈夫なんよ。」


 楽観的なシルファに対してグレンは悩む。

 何故なら、倒せば良いと言う話ではすまないからだ。

 今回の依頼は、いつもとは勝手が違う。


「問題は村の奪還だ。村に陣を張られてたら厄介だな。」


「群れの量にもよるわ。」


「聞いた話だと、相当いるらしいが。」


 グレンは、セシルから聞いた情報を伝えていく。

 ウルフの数が多いほど対処が大変になるので作戦が大事となってくる。

 

「何で、俺の村なんでしょう。」

 

 よりにもよって何故、自分の村が真っ先に巻き込まれたのか。

 セシルは自分の村に起きていた事実に驚愕すると同時に、やるせない気持ちに気分が沈む。


「君の村だけじゃないさ。世界に村があるだけ、様々な現象が起きている。だからこそ我々ハンターがいるんだ。そして、そのためにも情報だ。セシル、村の地図を大雑把にでもいいから書いてくれ。」


 セシルは机に置かれた紙に村の情報を書き込んでいく。

 建物や畑の位置、周りの山や森といった自然物。長年住んできたからこそ分かる物を書いていく。

 その情報をもとに作戦会議が行われている。

 セシルは地図を書きながら、聞かれた質問に答えていく。


「木を扱う村故に森が多い、そこに拠点を置くつもりだ。」


「そーいや、店に売ってる木の皿によくクレハ村の名前があったっけねぇ。セシルも作ったりしてるん?」


 シルファに質問されるが、首を振る。

 村の仕事にもいろいろとあるのだ。


「いえ、自分は畑で力仕事です。森に入って木を伐採したりもあります。」


「それなら、森の道も分かるか? 書き加えてほしい。」


 セシルは、グレンの言う通りに地図に書き加えていく。

 何度も訪れている森だけに大抵の道は分かるのだ。


「森の中にはウルフはいないのでしょうか。」


「無いわね。伐採するような森にウルフの獲物は近寄らないわ。」


「果物が無いと餌も寄り付かないっすからねぇ。」


 ユーリアの疑問をアリアとコガラキが否定する。

 ウルフがいないのなら話は早い。

 拠点にするにはうってつけだ。


「森の事なら自分の得意分野っすよ。あっしの鳥なら上から見渡せるっすからね。」 


 そう言って竜車の柱に停まっている鳥を撫でる。

 鳥は嬉しそうに目を細めている。

 コガラキにとてもなついているようだ。

 そんな話をしているとセシルは竜車の外に目を向ける。そこには見覚えのある森がある。

 もうこんな所にまで来たのかと驚いた。


「村まで後どれぐらいか分かるか?」


「後、五分の三ぐらいでつくと思います。」


 自分で言って驚いた。

 自分が気を失った所まであっという間に走って来た事になる。

 昔、町から帰るときはもっと時間がかかっていたはずだ。

 やはり小竜の力はものすごい。


「セシルを拾ったのはこの辺りだったな。」


「そうですね。この辺りで遭遇して、村の皆を助けたい一心で森の中をただひたすら走ってました。」


 しかし、セシルは途中で諦めてしまった。だからこそ今度こそと改め思う。

 命を救われたチャンスを絶対に逃さない。

 その話を聞いたシルファは顎に手を当て、一連の出来事を思い出す。


「ホント、あの時は驚いたんよ。」


「だなぁ、あんなとこに人がいたとは思わなかったからよ。コガラキが森の変化に気づいてくれなかったら見つけれなかった。」


「まさかとは思ったっすけどね、自分の勘を信じてよかったっす。」


 ハンターの勘というやつだろう。

 結果的に勘を信じて動いてくれたからセシルはここにいるのだ。

 セシルも話を聞いて獣に追われた事を思い出す。


「頭が真っ白になって、ただ前に行かなくちゃって。もうほとんど意識は飛んでました。」


「ほんとよく頑張ったな。だからこそ絶対に村を、みんなを助けないとな。」


「はい。」


 グレンの言う通り、努力が報われるために出来ることをするんだと気持ちをしっかりと持つ。

 セシルは村がある方を見る。

 村に近づくたびにもう少しだと気が急いていく。


「心配すんなよ。俺達に任せとけ。」

 

「そうですね。あなたの努力を無駄にはしません。」


「自分達で言うのもなんだけど俺達は強いからねぇ。信じてくれてかまわないぜ。」


 焦って落ち着かないのを察してかハンターのみんなが声をかけてくれる。勇気が与えられたのか緊張がましになる。


 「これでもどうぞ。」


 カリネに飲み物を渡される。そのまま他のメンバーにも配られる。

 セシルはそこで、自分が喉を乾いていている事を思い出す。

 それだけ、頭が働かないほど村の事で頭がいっぱいなんだろう。


「飲んでおけ。いつの間にか疲労で倒れるなんてよくあることだ。」


 作戦を無事立て終わったのかグレンは台から体を離す。

 一服して落ち着く一同。

 

「無事だといいな。」


「あの村が無くなると困る人が多いからな。」


「貴族の中でもクレハ村の商品は人気。数が少ないもの。」


「さすが貴族出身、詳しいねぇ。」


「村は、相当かせいでいるんじゃねぇか。」


「いえ、人気が出てからは嗜好品は作らなくなったので。」


 村の話に興味を持った一同の質問にセシルは答えていく。

 自慢の村だ。褒めてくれるのは素直に嬉しい。

 そんな会話している間にも竜車は村に近づいていく。

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