17.錬金術師の仕事

 錬金術師の仕事は多岐に渡る。道具の作成、修理、市場には卸されていないポーションや秘薬の販売、武器や防具への魔法付与。


 高品質のポーションを売ることで名が広まりったエルリアに仕事は次の段階へと移った。


 これからは、マリアさんのように直接エルリアに依頼を持ってくるような人が増えるだろう。





 錬金術師は、一般に流通にているものならある程度、修理も作成も可能だ。


 本来、錬金術とは「人間が神のような存在になるためための術」だった。全ての錬金術師の野望は、「賢者の石」の作成。それを使って、全ての金属を黄金に変えることや、不老不死、どんな病も治してしまう「エリクサー」を作ることを目標としてきたのだ。


 それはもちろん簡単なことでは無い。ゼロから何かをう生み出すのは難しい。錬金術師達は、「賢者の石」を作るために、様々な知識を取り入れた。そして、様々なものを生み出してきた。


 いつの日か、錬金術師は新たなものを生み出す存在として認識されるようになった。「賢者の石」の作成ではなく、「新たなもの」を生み出すことを目標にする錬金術師も増えてきた。


 そうして少しずつ錬金術の認識が変わっていき、今の錬金術師の姿になっていったのだ。



 結果が変わっても過程は変わらない。新たなものを生み出すためには、今あるものを理解する必要がある。


 そのためエルリアも、多くの道具の構造を理解しているし、様々な知識を持っている。もちろんジュティアも、他の錬金術師たちもだ。


 錬金術とは全く関係ないと思われるようなことも学ぶ必要があるため、多くのものはこの段階で挫折し、錬金術師になるのを諦める。錬金術師の数が少ないのはこのためだ。


 こうして、錬金術師になるために様々な知識を取り入れるため、道具の修理も簡単に行える。新米錬金術師達は、こうしてお金を稼いでいく。


 もちろん、修理を専門とした職業の人や、その道具を作れるものなら簡単に修理できるが、何かあれば錬金術師に相談すれば間違い無い為、わざわざ錬金術師に頼む人も多い。それに、近くにそういう人がいない場合はもちろん錬金術師に依頼が来るだろう。





 市場に卸されていないポーションや秘薬というのは、上級ポーションや魔力回復薬、媚薬や惚れ薬などがそれに当たる。


 市場に卸されているのは、初級、中級ポーションのみ。それ以外は、需要が少ないためや、値段が跳ね上がるため、扱いに注意が必要で直接作成者から指導を受けなければいけないために、市場には卸されていない。錬金術師から直接買うしか無いのだ。


 ちなみに、風邪薬やキズぐすりなどの魔力が含まれていない薬も存在する。それらは薬師が販売している。即効性は無いが、安価で保存が効くため、主な平民はこちらを利用することが多い。ポーションを使うのは主に冒険者や猟師など、怪我を放置すると命に関わるような職業についているものだ。






 武器や防具への魔法付与は、素材の持ち込みがあればすぐにでも行える。素材は、好きな武器や防具、そして、付与して欲しい属性の魔石だ。


 魔法付与は、持ち込まれたものを合成し、魔力で安定させるだけなのだが、これが意外と難しい。魔石の魔力と自分の魔力を上手く馴染ませ、付与させるものに浸透させなければいけない。これには繊細な魔力操作とかなりの集中力が必要で、意外と体力を消耗する。失敗すれば最悪、素材の両方が駄目になってしまうこともあるのだ。


 もちろん、すでに魔法付与されたものも販売されている。しかし、自分の好きな武器や防具に自分の好きな属性を付与できるというのは、とても魅力的なのだろう。リスクがあると分かっていても、この依頼を持ってくるものは後を絶たない。

 

 エルリアのような新米にこの依頼を持ってくるようなものはほとんどいないだろうが。




 

 

 もちろんこれからも、市場に卸すポーションの作成は行うが、これらの依頼も増えてくる。エルリアは今後、更に忙しくなるだろう。ポーションの作成量を調整しておいてよかった。


 しかし、ケイがいてくれて本当に良かった。あのままだったらいつか倒れていただろう。これからも、家事を中心にケイのお世話になる。何かお礼をしたいと考えるエルリアだった。

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