12.人類の滅亡

 人々が唯一続けてきた、ゴーレムに魔力を与える行動。いや、与えられずともゴーレムが自ら魔力を吸い取ることが出来るのだが、これはもちろん、ゴーレムの燃料供給のためだ。ゴーレムがいなければ生きていけない人々は、これだけは欠かすこと無く行っていた。


 しかし、ゴーレムの数が人間の数を大きく上回ってしまった今、その燃料は不足しつつあった。


 土地を奪えるだけ奪った後、戦う必要がなくなった軍事用ゴーレムのほとんどは、最後の戦場で眠りについたが、一万を超える数のゴーレムは、国へ戻ってきた。


 軍事用ゴーレムは自ら、警備隊に加わり、国を守護する。それが、軍事用ゴーレムに与えられた仕事のひとつだからだ。


 突然、ゴーレムが増えれば、もちろんそれだけ燃料も必要になる。しかしここには、全てのゴーレムに分け与えられるだけの燃料は無い。燃料が不足し、動かなくなるゴーレムが徐々に出てきた。


 少しでもゴーレムが欠ければ、人々の生活にも支障が出てくる。生活できなくなった人々は、徐々に数を減らした。それに比例して、ゴーレムも徐々に活動を停止していった。


 考えることを知らない人々は、それでも変わらず生活していた。




 国の中心で働いていたゴーレム達には、こうなることは分かっていた。分かった上で、放置した。


 今まで、国のために働いていたのは、命令されたからだ。ゴーレムの主は、次の王へと引き継がれ、命令も同時に引き継がれていた。


 しかし、野心家の王が命令を上書きした。世界を侵略せよ、との命令に従い、世界を侵略した。侵略し終えた後、新たな命令がくだされることはなかった。そのため、ゴーレムは国を治めることをしなくなった。


 世界が変わったのに、人々の生活は変わらない。変わらなければ、後は衰退していくだけだ。


 人が減り、ゴーレムが減り、また人が減り、またゴーレムが減る。


 最後に残ったのは、国の中心にいたゴーレム達だった。


 心が無いゴーレム。しかし学習能力はある。


 これは繰り返されてはいけない歴史だ。人々は、ゴーレムに頼り切った生活など、するべきではない。


 そう判断したゴーレム達は、可能な限り、ゴーレムに関する資料を燃やし尽くし、静かに眠りについたという。






 ケイの話は、信じられないようなことばかりだった。


 人が、ゴーレムに依存して生きてきた。その結果、人類は滅んだ……。なんて、そんなことが本当にあったのだろうか……。


 でも……


「私は、その最後の時まで残っていたゴーレムです。世界から人々が消え、ゴーレムも全て、滑動を停止しました。今まで、我々のことが知られていなかったのは、ちゃんと資料を消滅し尽くせた、ということですね。よかった。」


 ケイの遠くを見るような目、悲しそうな、ほっとしているようなその表情が、それが真実なのだと教えてくれる。


 ゴーレムには、心が無いはずなのに……。




「それを、我々に教えてしまってよかったのか……?また、利用されるとは思わなかったのか……?」

「私が秘密にしたいのは、ゴーレムの作り方。私が再び動きだしたのは、私が比較的あたらしいまま滑動を停止したため、劣化が少なかったことと、様々な偶然が重なった結果の奇跡です。おそらく、今見つかっているゴーレムのほとんどは、再び動き出すことは無いでしょう。……そして、このお話しをしたのはお二人の反応を見るためです。」

「そうか……。我々は、君のお眼鏡にかなったのかな?」

「はい。私は、お二人を信用できると判断いたしました。これから、どうぞよろしくお願いします。マスターと、マスターのお師匠様。」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る