第4話 四

 記念日を二日後に控えた金曜日のことだ。監視の休憩時間、携帯電話にトオルからのメッセージが届いているのに気付いた。

『職場の先輩に不幸事があって、俺が代わって大阪出張になった。明朝出発で、帰りは月曜になる。なので十三日はゴメン。予約は二名で取ってあるから、誰か友達を誘ってもらってもいいよ。本当に急でゴメン(涙)』

誰か誘ってって、もう今日は金曜日だよ。日曜の夜に暇してる人が、そんな急に見つかるかっていうの!休憩は一人ずつ取るので、狭い部屋に私しかいない。

「あーあ」思わず声に出してしまう。『たいへんだね』とか『気をつけて』とか、気遣うメッセージを送れない自分がいる。

「なあなあも、潮時なのかな――」

 結局、『了解。キャンセルしといてください』とだけ返した。

 味気ないコーヒーブレイクになった。トオルにもらったマグカップをチンと指ではじいた。

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