第18話

庭にプラスチックの小さなブランコがある

学校と比べると非常に小さいが

しかし ブランコはブランコである

誰からも邪魔されない その小さなブランコに

僕は小さい時 よく乗っていた

しかし 大きくなるにつれ

それは 忘れ去られ

ふと思い出すばかりである


そう言えば うちに 小さなブランコがあったよな

そう思い 私は 部屋や二階を探すが その痕跡らしきものはなく

母親に聞いても 首を捻るばかりで

 捨てちゃったんじゃない

と切り捨てられてしまった

そう言われて仕舞えば

そうなのだろうかと 思わなくてはいけない

程に あのブランコの必要性は 今この僕 にはないだろう

それでも 

 なあ お袋 どうして 捨てたんだ いつ頃

そう聞くが やはり首を傾げるばかりで

要領を得ない

そんな物は 遠い昔すぎて 実は幻想じゃ無いだろうか

それでも記憶になりそうなものを

探し アルバムをめくったりしていると

本棚に 挟まれるように 一冊のノートを 見つけ 引っ張る

本の間のそれは 落書き長のような 線の間の太いものであり

上に絵が描かれるスペースがあり

そこに荒いクレヨンで

ブランコが書かれている

これだけでは 別の場所かもしれないが


「三月四日 僕はその日 ブランコに乗っていた

すると 知らないおじさんが いきなり ブランコを 壊した 僕は 家に逃げて お母さんが帰ってくるのを 待ちました」


ページの次には 何故かまたブランコの絵が描かれている

「三月五日 僕は ブランコで遊んでいると また 知らないおじさんが ブランコを 壊した きっと踏み潰したのだと思う ブランコ砕ける音がする 僕だけのブランコが

お父さんが 持ってきてくれた 物が 遊べない」


ページは 何故か続き どういうわけか 理由は分からないが ブランコは次の日には庭にあるようであるが

父親が治したとも思えないし

買うほどうちは金持ちではない

それに一番の問題は これだけのことを 僕は覚えていないことに 違和感を覚えたが

母はブランコはなかったという

手元には ノートが残るが それは 証拠として不十分だろうか 庭には浅くかった草が生えるばかりで 薄暗い

僕は 明日には 東京に戻らなくてはならない


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