第4話 誕生の瞬間に立ち会いたい
ホワイティがアリッサに乳を与えようとしていたので、外に出た後どうやら眠っていたようだ。
あたりが明るくなってきていた。
家の中に戻ろうとしたところホワイティがアリッサを抱いて出てきた。
「ヴラッド様、外から戻られないので心配しました。元気になったのが嬉しくてアリッサに乳を飲ませたのですが
アリッサが
「ハハハ、大丈夫ですよ血の契約はその人にしか影響を与えませんから。それよりもう出発しても良いですか?」
ホワイティは少し悩んだ後、
「ここには主人との思い出がたくさんありました。だけど過去に戻ることはできません。なのでせめて亡くなった多くの村の人に
両手を絡ませてホワイティが祈りを捧げていたので、その隣でレオンダイトも同じように祈りを捧げた。
「ヴラッド様、共に祈ってくださりありがとうございました。それにしてもここまで悲惨な村の姿を見ることになるとは。貴方が訪れなければ、私もアリッサも地下室で飢え死にしていたでしょう」
「ここを離れるのは辛いとは思いますが僕に付いて我が家に来て頂かないと魔王軍がまた来ないとは限りませんので」
「えぇ、では参りましょう」
だがここまで丸2日かかり、村でホワイティとアリッサを探すのに丸2日かかっている。
今日で5日経過している。
帰りは赤ん坊のアリッサのことを考えれば休み休み帰らなければならない。
最低でも2倍の日数がかかることは覚悟しなければならない。
間に合わないなと肩をガックリと落としたレオンダイトの隣で、ホワイティが白い狼に変身した。
「この姿になるのは久しぶりです。1日でヴラッド様を居城に届けますね。急ぐのでアリッサのことをお願いしますね」
そう言ってレオンダイトを背中に乗せその上にアリッサを置いた。
レオンダイトは慌ててアリッサを抱き抱える。
その後はもう何が起こったか覚えてないっていうのも重力から何から無視して一直線で居城までホワイティは駆け抜けたのだ。
あっウルファスがすぐって言ってた意味が分かったよ。
本当に散歩感覚なのね。
一瞬で居城の前に着いた。
「ヴラッド様、早く行ってあげてください。御子が産まれるのでしょう」
その言葉で我に返ったレオンダイトはアリッサを抱き抱えていることも忘れてそのまま居城に向かったのだ。
迎えてくれたウルファスが口をあんぐりと開け
「兄上、その手の御子は、まさか兄上の隠し子」
その横にいたリリアもこっちを見ながら
「あらあらレオン、私というものがありながらこっそりとやることはやってたということかしら。覚悟はできているんでしょうね」
待って待ってリリアそれ風の極大魔法だよね。
そんなのここでぶちかまされたら何もかも消し飛ぶからそれに身重で何やってるの。
後ろから遅れて入ってきたホワイティが
「ヴラッド様、アリッサを連れて行ってしまうなんて」
やめてやめて今来たらさらにややこしくなるから。
「あらあらレオンったら浮気相手まで連れて来るなんて、もうこれぶちかましても良いわよね」
するとホワイティが
「身重の身体で何をしているんですか?もういつ産まれてもおかしくないのでしょう。それに私は浮気相手では無いです。この近くの国境線の獣人の村の生き残りでヴラッド様に命を救って頂いたホワイティ・ランディスと申します。ヴラッド様が抱えているのは私の娘でアリッサ・ランディス。しっかり見てください完全な
そう言われてハッとしたリリアがもう一度その子を見て
「確かに完全な
「私はヴラッド様が村を訪れてくださったときには命の灯火が消えかかっていて、命を少し伸ばすために血の契約を受けたのです。ですが血を数滴だけでこの牙も一時的なものだそうです。それにヴラッド様を見ていれば奥様一筋なのはわかります。こんなに愛されてるのに彼のことを信じれないのですか」
「私としたことが、不安に押しつぶされていたのね。貴方のお陰で少し落ち着いたわ。ありがとう。それに私ったら名乗りもせずにごめんなさい。私の名はリリア・ルーシー・ヴラッドよ」
「いえいえ。私もアリッサを産む直前不安になりました。アリッサをきちんと育てられるだろうかとか。不安にならない母親なんていません。それに私も配慮が足りませんでした。ヴラッド様からもうすぐ御子が産まれると聞いていたので、その瞬間に立ち合わせてあげたいと久々に
「
と言い近くにいたメイドの1人に連れて行かせた。
それを眺めながら目をハートにして、キラキラさせていた。
ウルファスひょっとして恋しちゃった?
「うっ、産まれそう」
リリアの言葉で我に返ったレオンダイトはすぐに産婆さんを呼びに行き、きてくれた産婆さんがすぐに連れて行きこっちに振り返り
「まぁまぁレオン坊っちゃま、立ち会いたいのでしたらそのままではダメですよ。免疫力の低い赤ちゃんが感染症になってしまいますからね。身体を綺麗なタオルで拭き、清潔な服に着替えたら入口のそばまでは来て良いですよ」
レオン坊っちゃまと呼ぶこの産婆はレオンダイトのことも取り上げてくれたベテランの助産師だ。
名はキーン婆さんと言い、レオンダイトは幼い頃はキーン婆やと慕っていた。
今は流石に昔の名で呼ぶのは恥ずかしいのでキーンと呼んでいる。
婆やが来てくれたのなら安心だ。
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