第3話 絶対に君たちを助けてみせる

その白い狼族ウルフトライブの女性は涙を零しながらナイフを落とし、そして小さい声で言った。


「わかりました。貴方のことを信じてみようと思います。ですが、私のことは私がよくわかっています。もう助からないでしょう。実は立っているのもやっとの状態で、このを守るという気力だけで生きてきました。それも5日前からとうとう乳の出も悪くなりこのに十分な栄養を与えられなかった。それが夜な夜な泣くようになったのだろうと思います」


それを聞きレオンダイトは、はっきり言う。


「貴方も貴方のも死なせはしません」


そして続けて尋ねた。


吸血鬼ヴァンパイアによる血の契約は知っていますか?」


「血の契約?」


彼女が首を傾げていたのを見て、詳しく説明した。


「血の契約とは死に直面している人族ヒューマノイドに対し行う吸血鬼ヴァンパイアとの契約で、血を数滴接種させます。メリットは血の契約を施した相手を活性化させて寿命を伸ばすことができ、デメリットは一時的に血を欲してしまいますがこれは獣の血でも大丈夫なので、獣を狩ることで、血を得ると良いでしょう。それでもよろしければ貴方はそのの成長を側でこれからも見守ることができますよ」


そう彼女に伝えた。


彼女は暫く悩んだ後に決意を固め。


「お願いします。それに詳しい説明を本当にありがとうございます。貴方に刃を向けた私に対して貴方は懇切丁寧に説明してくださいました。それに今更ではありますが私の名前はホワイティ・ランディス。娘の名前はアリッサ・ランディスです」


その表情は安堵とこれからもその手にいるアリッサを見守ることができるという嬉しさに満ちていた。


それを聞くとすぐに仮契約の儀式に移った。


六芒星を2つずらして重ねたような魔法陣を血で描きその上にホワイティを寝かせ万が一にもアリッサに影響が出ないようにそこから離して動けないように行動禁止キャントムーブの魔法の上から睡眠魔法スリープもかけ万全を喫す。


「では始めますが宜しいですか?」


レオンダイトの確認にホワイティは頷きながら小さく返事をした。


「ええ、よろしくお願いいたします」


レオンダイトにとっては2度目の血の契約で緊張している。


われ吸血鬼ヴァンパイアとして命じる。この者ホワイティ・ランディスと血の契約を交わす。願わくばホワイティ・ランディスに今一度生きる力を与え給え」


そう言って手をナイフで切り裂き、血をホワイティの口元に数滴垂らした。


ホワイティは口元に落ちてくる血を零さないように口を大きく空け、飲み干した。


これでホワイティの目が赤くなれば成功だ。


ホワイティの目が赤くなり八重歯が牙のように尖ってきた。


八重歯が牙のように尖るのは血の契約が成功したことを表し、血を摂取しやすいようにである。


次にやってくるのは急激な血の飢え。


幸いにもここは地下室であったこともありそこらじゅうにネズミ系の魔物ラットモーグルが居る。


ラットモーグルは吸血鬼ヴァンパイアにとって、使い魔にもなり、その肉はそのままだと硬くてとても食えたものではないが焼くととても柔らかくなり肉厚のあるジューシーな味わいで、優秀なタンパク質の供給源にもなる。


そしてその血は透き通っていてゴクゴクと飲みやすく、数多の吸血鬼ヴァンパイアたちを潤していることがわかっている。


なので覚醒する前に数匹捕まえてホワイティの側に置いている。


レオンダイトが今することは、ホワイティが万が一にもアリッサの血を求めないとは限らないので、アリッサの周りに結界魔法バリアコートをかけておくぐらいである。


こうすることで血を吸うなどの吸血鬼ヴァンパイア特有の行動に対してのみだが防御壁となる。


これはレオンダイトの居城で何の契約も施してないアリッサを保護する際に居城にいる吸血鬼ヴァンパイアたちから守るための安全措置セーフティである。


さぁ間も無くホワイティが目を覚ます。


「うーん、ここは私の家の地下室。アリッサは無事なの」


覚醒したホワイティは辺りをキョロキョロとしてアリッサの無事を確認していた。


暫くするとホワイティは喉を抑えだし、この急激な血に対しての飢えは何、このままアリッサに近づくとアリッサの血を吸ってしまうかもしれない。


これが血を欲するということなのね。


「ヴラッド様、私に血を獣でもなんでも構いません血を血をください」


「ホワイティ、良かった気が付いたのですね」


無事に眷属契約ファミリーコントラクトは成功したようだ。


「側にネズミを数匹捕まえて用意しておきました。血をすすり吸い尽くした後は僕の魔法でこんがり焼くので、食べて体力を回復してください。明日の早朝までにここをたたないと僕の息子の誕生に立ち会えませんので」


微笑みながら言うとホワイティは微笑み返して、


「貴方のお陰で私はこの先もアリッサの成長を見守ることができます。本当にありがとうございました。貴方が子供の誕生に立ち会えることを願っています」


そう言って、数匹捕まえていたネズミの血を全て飲み干し、レオンダイトが火の魔法でこんがり焼いたネズミを残らず食べ尽くし、渇きと飢えを潤したホワイティはアリッサに乳を与え始めようとしたので、レオンダイトはそそくさと外に出たのである。


「ホワイティもアリッサも助けられて本当に良かった」


レオンダイトは、小さな声で言い胸を撫で下ろし安堵した。

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