第12話
原子力発電所の地下に設けられたリーベッド組の研究所。
そこではウイルス兵器の開発が行われていた。
ヤンサムは拳銃を取り出し、銃弾をダンテに見せる。
「この銃弾にはウイルスが塗られてある。こうやって特殊な手袋をしないと俺もお陀仏だ。空気感染はしない。だがどうだ。これを軍事国やゲリラに売ってみろ。撃たれた者は致命傷でなければ救助される。そして医療現場でその者に触れた者どうしで感染が拡大される。人数による単純な戦力の削減、そして相手の今後の経済にも関わってくる打撃。ジワジワと弱っていく。この小さな研究所から市場が拡大していくなんて最高だと思わないか?」
「まさか、あの病院で、、、」
「そうだ。」
港倉庫での襲撃事件、ダンテを治療した医者達が謎の死を遂げたのは、ヤンサムのウイルスによるものだった。
「良い実験結果が出た。」
「、、、クソ野郎!!」
「クソ野郎ではない、ヤンサムだ。」
ダンテは膝から崩れた。
奴にとってあれは世界への宣戦布告であった。兄貴はその実験材料だったに過ぎないとでも言いやがるのか。
「おい、シャロンに撃ったのは、、、」
「ああ、そうだったな。この銃だ。」
ダンテはヤンサムに殴りかかるも、武装集団に取り押さえられた。
「ゴミがよぅ、、、何故だ!?何故俺は死なない!」
ヤンサムは武装した男に合図し、奥の部屋を開けさせた。
「イッテェ。ま、説明は開発に成功した副所長よりもらおうかな。」
ダンテはまた案内され、向かった場所には、部屋があった。大きなガラスが貼られた部屋で、そこには椅子に縛りつけられた白衣の女がいた。白衣には血が広く滲んでいた。
「副所長は拷問で目を悪くしたようだ。おい!起きろ!死んだか。」
「………っ?ヤンサムか。何しに来た。」
白衣の女の目は焦点が合わない。
「ダンテ、彼女がウイルス兵器を作成した。」
「ダンテ!?」
彼女は急に暴れ出した。しかし椅子に縛られ動けない。
「ダンテ、ダンテがそこにいるの!?」
彼女はダンテの名前を掠れた声で連呼し、涙を流した。
「ダンテ、私よ、あなたの、お母さんよ!」
「!?」
彼女の口からはにわかに信じ難い言葉が発せられた。
「おい、どういう事だ、、、」
ヤンサムは一歩引いた。
「ハッ、感動の親子の再会ってな。これも運命か。」
女は俯き、ダンテに話しかける。
「そう、私は、あなたのお母さん。手紙を送ったのも私。でも今はそれを忘れて、聞いて欲しい事がある。」
「な、何を。どういう事だ!」
ダンテは頭が追いつかない。
「いいから聞いて!ダンテ。あなたには私が開発したウイルスの抗体を持っているの。だからあなたは、死ななかった。」
「抗体だと?」
「そう。開発した、ウイルスに抗える、唯一の方法。それを、あなたが、持っている、事が、わかっ、、、」
彼女は静かになった。
「おい、どうした。」
ヤンサムはサングラスを外した。
「逝ったのさ、ウイルスで。」
「貴様!!」
ダンテは再びヤンサムに殴りかかるも、武装集団に取り押さえられた。
「おい、ダンテくん。そう暴れるな。君も大事な実験材料なんた。抗体も、市場に出回ればかなりの経済が動く。そこまで君には生きていてもらわなきゃ。ま、それも何十年か経った時だがな。」
ヤンサムは微笑んだ。
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