第4話
「ボス、お言葉ですが、俺は保育士ではないんですよ!」
広い屋敷の一室、顔中刺青だらけの男は声を荒げ必死に訴えていた。
「ネオン。このバイバツ組にいる者は皆家族。お前も誓いをそう立てたのを忘れたのか。身寄りのない子どもを家族として迎えるのも必然だ。誓いの儀はもう済ませてある。」
ボスはそう言い、彼を宥めるがそうもいかないようだ。
「ええ、新しい家族を迎えるのは結構です。ですが、私も暇じゃないんですよ!生まれて十年経たないガキを。お嬢だって私に押し付けて。自分でシャロンくらい、、、」
ボスは拳銃を取り出し発砲。ネオンの右頭数ミリに銃弾がかすめた。
「ネオン。誓いを忘れたなんて言わせねえ。私達は皆、家族であると。」
ネオンは掛けていた上着を取り、ボスの部屋を足速に出た。部屋の外には、少年がいた。ネオンは少年に構わず階段を降り、屋敷を出ていった。
「ふーん。あなたも、嫌われてるのね〜。」
少年に、ブロンド髪の少女が話しかけた。
「ねえねえ、あなた何処から来たのー?」
少年は目を逸らし、黙っていた。
「お腹、痛いの?私もね、最近調子良くなくてねー。最近ネイルにハマってるんだけどさ、集中が途切れるのよ。ピンク色が今私の中で来てて、ラメを入れるともっと最高なのよ〜。」
少女は話しかけ続けるも、変わらず少年は黙ったままだった。
「ふーん。あなた親も兄弟もいないんでしょ。聞いたわ〜。可哀想に。」
「だから何だってんだよ。引きこもり。」
少年は細い目でギロっと少女を睨みつけた。
少女は目を真っ赤にし、少年を押し倒した。2人は取っ組み合いの喧嘩をしだした。
「おい、コラコラ。」
騒ぎを聞きつけた組員が2人を止めた。
「この、ねえ聞いてよ!この男が引きこもりとか言うからよー!好きでそうしてるんじゃないもん!」
「あぁ!?こいつが身寄り無いだの何だの言いやがってきて!」
組員は2人の頭に拳骨をした。
「喧嘩は、よくない。シャロン様。部屋に戻りなさい。それに、新入りの坊ちゃん。君はもう家族がいるのを忘れるなよ。いいかい、この大きな組織に入ったからって、そこに甘えるな。自分の命を自分で守る力を持て。そして周りに困った人がいたら、助ける。新入りの坊ちゃんはそれを先ず覚えなさい。」
組員は優しい声で2人を諭した。彼が立ち去るところを少年が腕を掴み止めた。
「おい、待て。ジジイ!」
組員は振り返り、少年を見る。
「俺は坊ちゃんじゃねえ。ダンテだ!」
はいはい、と組員は階段を降りた。
それからというものの、ネオンは育児放棄し、代わりにブローが少年の面倒を見た。礼儀、銃の使い方、交渉の話術。
「ダンテ、お前の成長には驚かされるよ。」
ブローはニカッと笑った。
「兄貴のお陰です!!」
「ハハッ。素材が良いんだよ。お前の銃の腕前は確かだ。俺は銃の持ち方しか教えてない。」
ブローとダンテ。二人はバイバツ組きっての名パートナーとなった。16歳となったダンテも激化する抗争に参加する。確実に功績を上げていき、彼らの名はリーベッド組には知らぬ者無しという程だ。
そして、少年だった彼はいつしか立派な家族の一員となった。
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