第8話

シャロンが発見されたのは、敵の基地の最上階の部屋。服が脱がされ裸で倒れていた。強姦の形跡は無いが、首元には紫色の横筋があった。命に別状は無く、2日後には元通りの生活に戻れた。

しかし、何故そこにいたのか、何があったのか全く覚えていないと言う。そして、その基地にはバイバツ組が来た時には誰もいなかった。


「何も覚えていないのか、シャロン。」


バイバツ組の屋敷の庭。手入れが行き届いており、大きなダリアが見事に咲いている。ベンチに腰掛けるダンテとシャロン。


「ええ、気づいたら病院だったの。ダンテが私から離れた時から記憶は全く。」


「………そうか、パニックや心のダメージで記憶が飛んだのか。俺もそうだった。」


シャロンの目はずっと、ダンテの目と合わせないようにしている。 


「ダンテはさ、あんな危ない場所でさ、どうやって恐怖に勝ってるの?私ちっとも分からない。」


シャロンはしっかり目を見てダンテに詰め寄った。シャロンのパッチリした目は、全てを覗き込むような物だ。


「いや、勝ってるなんて俺は思った事が無い。分からないのが普通だと思う。恐怖じゃなくてそれが快楽になったら、もう終わりだ。」


シャロンは俯いた。黒のワンピースの裾を掴みモジモジし、


「ねえ、ダンテ。ご飯行かない?この辺ならもうヤツら簡単に縄張りに入ってこないでしょ。勿論パパには内緒ねー!」


と言い、無理矢理ダンテの手を掴み立たせ、ネオンのいる場所へ連れて行く。


駐車場では何やら喧嘩が起こっている。

ネオンとフジイだ。喧嘩が絶えない武器兵器運搬屋と武器兵器管理屋の名パートナー。


「おお、坊ちゃんにシャロン様じゃないか。二人とも怪我はもう大丈夫なのか?」


「フジイ、坊ちゃんって呼ぶの辞めろ。俺にはダンテって名前があるんだから。それに喧嘩は良くないんだろ?」


フジイはハイハイッと消えていった。その後ろ姿をネオンは唾を吐き捨て睨み続ける。

シャロンがウフフッとネオンに近づく。


「丁度良い所にネオン〜。ねえねえ、ちょっと車出してよ。」


「あぁ!?暇じゃねえんだ馬鹿タレ。」


顔面タトゥーの高身長な男の気迫に、シャロンはあっそう、と応えたようだ。 


「前になんて言われたんだ。一年前に逆戻りしてるんだよ今。目に見えやすい形でな。今朝な、爆弾だの注文したのが届く予定だったが、ヤツらの襲撃にあってな。まるでそこにトラックが通るのが分かってたかのように駄目だったってよ。」


「クソッ、ヤツらめ。一体どこから情報を。また裏道探しか、ネオン。」


「そうなるな。」


ネオンはブツブツ言いながら屋敷に入っていった。


「なあ、外食は控えようシャロン。ここの外は恐怖だらけだぞ。」


「ん〜、でもねダンテ。こういう時こそ美味しい物食べられるなら私は最高なんだけどなあ〜。」


「おい、恐怖が快楽になってるぞ。」


ダンテとシャロン二人は笑った。


二人は屋敷に戻り、ダンテの借りた部屋へと入る。


「ねえ、ダンテ。私、これから絶対に迷惑をかけるの。でも、信じて。私はダンテの味方。パートナーよ。」


「どうしたんだ、改まって。」


シャロンはベッドに横になった。


「………ねえ、ダンテ。来て欲しい。」


シャロンはうるっとした目をした。

ダンテはベッドへと歩き、シャロンと重なった。






《人物紹介》


氏名 ソウジロウ・フジイ


年齢 48歳


身長 171㎝


職業 バイバツ組幹部、武器兵器管理屋


趣味 銃器の手入れ

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