第9話
「来たな、ダンテ。」
「はい。」
ボスの部屋。ドハイに呼ばれ、彼の真剣な目にダンテは構えた。
「急だが、これから話すのはごく少数しか認知させてない事だ。お前が関わってるから教えとく。扉を閉めんかい。」
ダンテは部屋の扉をササッと閉めた。
「すっかり私の部屋の常連だな、ダンテ。」
「ええ、珍しいですね。」
ドハイは椅子に腰掛けた。
「話なんだが、一ヶ月前のあの事件で、お前は二発、右胸と左腹に銃弾をもらったな。そして緊急手術を行なった。」
「ええ。今も手術痕が残っています。」
「その手術に関わった人間が全員、謎の死を遂げていた事が分かった。」
「!?」
なんと、手術室にいた医師、看護師が全員亡くなっていた。ある者は運転中、ある者は事務作業中、ある者は食事中。
「心臓発作らしいがそれも、全員の死亡時刻が72時間の間に収まる。そんなほぼ同時期に何人もなんてあり得りえない。」
「………裏ですか?」
「いや、うちは手出ししておらん。世話になった義理を返す。それにボロい病院だが長い付き合いだ。だがリーベッド組が動いていたとしても、それは何の為にと?」
不可解である。同時期の医師や看護師の死。
「そこでダンテ、お前は戦闘員から調査員になれ。お前の銃の腕も上がっているし、色々気になっているところだろう。シャロンは………そうだな、度胸が良い。」
「そう、ママに似てねー?」
扉が開き、シャロンが現れた。
「シャロン、盗み聞きなんて誰に教わった?」
ドハイの眉は八の字を作り、彼の目にダンテは凍りついた。
「調査員でしょ?そりゃ盗み聞きくらいするでしょー。」
またね、とシャロンはダンテにウインクして二人を後にして行った。
「ボス、お言葉ですがあんな派手なのが隠密に動けるとお思いですか。」
「………話は以上だ。」
ボスに遮られ、ダンテは部屋を出るしかなくなった。話は以上、この時のボスは何かしら企んでいるとダンテは分かっているが、その何かは分からない。
ダンテはシャロンを連れて車を出した。
夕方、街灯が付きはじめる。
「ねえ、ダンテ。調査員って言ってもさ、何処に向かえばいいの?」
「まず向かうべき場所がある。」
立体駐車場に入り、車を停めた。2人は車を出る。
「ショッピングモールじゃない。何か買うの〜?」
ダンテは婦人用ブティックに入った。
「服を買うの?ダンテ、あなた服選べる人間だったの?」
「そうだ。」
ダンテは女物の服をあさり、手に取る。
「外出る時はこれを着ろ。」
「え、センス無い、、、」
ダンテの手には暗い紺のアウター、黒のスキニー。シャロンは軽蔑の眼で服を見た。
「シャロン。その真っ白のワンピース、真珠のネックレス、目立ってしょうがないだろ。それにそのブランド髪も。」
ダンテはそう言い、黒のキャップをシャロンに被せた。
「信じられない、、、嘘でしょ?こんな物着るの〜?ダッサ。」
「レジ向かって。金もこのくらいあらば足りるだろ。」
シャロンは服と現金を受け取り、トボトボと歩いた。
暫くして店から紙袋を持ったシャロンが出てきた。口をへの字にし、ブツブツと微かに何か呟いている。
「おい、着替えてこい。」
「もう!?ねぇ〜ダンテ。着なきゃダメ?」
「ダメ。」
シャロンはトボトボと試着室に入る。部屋の中は因縁付けた言葉で溢れる。
シャロンが試着室から出ると、ダンテは違和感を感じた。
「どう?ダンテ。」
キャップのツバを掴み、ポーズをキメるシャロン。ダンテは裾がくるぶしまであるスキニーを選んだ筈だ。だが彼女は、かなり短いデニムを履いていた。シャロンはダンテの隙を見て、買い替えていたのだ。
「目立たないでしょ?」
「肌の露出は危険だぞ。」
「じゃあタイツでも履こうかしら。さ、行きましょうよ。………で、どこに行くの?」
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