第6話

「何よ何よ!私も頑張ったじゃない!なのに聞いた〜!?もうパパなんか知らない!あーもう、こんな気持ちじゃネイルなんか出来ないわ!」


屋敷のエントランス。

シャロンはソファに胡座をかいて座り、ブツブツと組員達に愚痴る。組員達はシャロンの機嫌を取りたいが、それは逆にボスの否定的な意見を受け入れる事になり、反応に困っていた。


「あー、もうシャワー浴びてくるわ!パパの悪口言いながら浴びるシャワーは最高よ〜。ガオガオ!」


そう言いシャロンはドタバタと走っていった。




レストランの襲撃の後、その騒ぎはバイバツ組まで届いた。ボスの部屋にダンテ、シャロン、ネオンが呼ばれた。一通りの事情を説明した。


「全く、病み上がり早々また修羅場を迎えたようだな。ダンテ。」


「そのようですね。」


ドハイは太い眉を八の字にした。


「シャロン、お前は大馬鹿者だ。武器を持たないお前が出しゃばったところで、死んでたのかもしれないんだぞ!」


シャロンは目をまん丸にし、やがてドハイを睨む。


「何言ってんのよ!助かったからいいじゃな〜い!!」


「馬鹿者!運が良かっただけだ!ましてやネオンが居なければ恐らく二人ともあの世行きだ。」


「………それなら何で私を相棒にしたの!?この組の一員として命を張ったのよ私は!もういい!!矛盾パパなんか知らなーい!」


シャロンは部屋を出た。

静まり返る部屋、ダンテは何かを思い出したかのように、


「ボス。ヤツらの一人が、俺をまるで探してたかのような物言いでした。お前がダンテか、と。」


「………つまり、お前が生きてる事が既にバレてると?」


ネオンが首を傾げた。


「おかしいですね。死にかけのダンテを病院まで運んだのはこの私、そして組員数名。病院も信頼できる奴らしか居ないはず。何処かで情報が漏れたのか、、、」


ドハイは苦しい表情を見せた。


「同志を疑いたくないがな。」


ダンテは当時を思い出してみる。


「若しくはレストランでシャロンが俺の名を、あのやかましい声で連呼していて偶然居合わせたからか、、、」


一同静まり返る。


ドハイ&ダンテ&ネオン「有り得なくもない。」


ボスは頭を横に振った。


「いや待て、病院やその他経路の調査はさせておく。だがしかしダンテ。後ろに気をつける生活になったな。今日は家に帰るな。うちの屋敷の部屋を開けておく。空き部屋だ。適当にルームメイクして構わん。」


ダンテとネオンはボスの部屋を出た。


「ダンテ。賞金首にでもなったか?」


「ネオンの方が高くつくだろうな。」


ダンテは一人、空き部屋へ向かった。


「ダンテ、、、」


空き部屋の扉を開けようとするその時、シャロンがやって来た。


「ああ、今日、俺この部屋にお邪魔するから。」


「そうなの。」


いつもより元気のないシャロン。

濡れた長いブロンド髪はペタッとしていて、ボリュームも無い。


「私も入って良い?」


空き部屋の中は掃除もされて綺麗だった。

アンティーク調の家具、ベッド、どれも今でも支障なく使えるレベルだ。


「ここ、ママの部屋だったの。」


シャロンは椅子に座り、懐かしむように壁の大きな絵画を見た。


「小さい頃、ダンテに会う前。ママは交通事故で死んだの。私、本当に悲しかった。ママが大好きだったからね。私、外に出るのが怖くなって、もう私は十九歳。皆んなからは非常識とか言われても今でもよく分からなくて。理解できなくて、、、」


シャロンは真っ赤な目をしていた。

顔を手で仰ぐ。


「はあ、何が言いたいのか私でも分かんなくなってきちゃった〜。ダンテ、偉そうな事言うかもしれないけど聞いて。死って怖いよね?辛いよね。でももっと辛いのって、死を乗り越えられない事じゃないかなって思うの。」


「………!!」


「レストランで喋った事、多分覚えてないでしょうけど、私は車も運転できないしー、銃も使えないしー、それに女だし。あなたの相棒としては頼りないと思う。ましてや前の相棒があのブローだったし。でもね、私も命を張ってやっていくから。」


シャロンの真っ赤な目は次第に涙が溢れた。


「レストランのあの時、私気づいたら立ち上がってたのよね。深呼吸して言いたい事言って。でもね、ネオンが来るまでの時間稼ぎでもあったんだけど、何よりあなたを守りたいと思ったの。」


「………シャロン。」


シャロンは椅子から立ち上がった。


「はあ、今日は疲れたわ。またね、相棒ダンテ。」


シャロンは足早に部屋を出た。

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