第2話
ここはアーケバス。
海岸に位置するこの港街は古くから交易の場として栄えてきた。船が行き交うこの街は、闇の交易も跡を立たない。凶悪事件も多く、抗争に一般市民が巻き込まれる事もあるのだ。
抗争、現在この街には二つの勢力がある。
バイバツ組とリーベッド組、所謂マフィアだ。
ライバル関係であり、それは30年前から激化した。一年前、資金や人員が厳しくなり、二つの組は停戦を約束した。だがそれはリーベッド組から予告なく破られた。
宣戦布告から一ヶ月後、二十歳のダンテはみるみると回復し、退院日前に病院を抜け出した。
バイバツ組の屋敷へと裸足で夜間の街中を走る。ダンテの細い目は修羅の目と化し、報復心に蝕まれていた。
走るダンテの横を通過した黒の高級車が停まり、クラクションを鳴らした。
「ダンテ。オメェ、何してんだ。」
「………ネオンか。」
窓から顔中刺青だらけのネオンが顔を出した。
ダンテは彼の車に乗る。
「ハッ、抜け出してきたんか。丁度オメェを連れ出す所だったんだが、以心伝心なんて気味が悪い。」
ネオンは車を出した。
ネオンは煙草を吸い、その煙を口内でコロコロ舌で回し味わう。
「以心伝心がお前となると気味が悪い。」
「そう言うなって。」
「ダンテ。病み上がりがこんな時間に歩いちゃあ駄目だろ。」
ダンテ達は屋敷に着いた。
門が開き、荘厳の庭を越え、駐車場に車を停める。
「どーだ、ダンテ。久々の実家は。」
「ふん、いつも通りだな。」
二人は屋敷の中へ入る。
洋式の広いエントランス、上には薄暗いシャンデリアが彼らを迎える。
「オメェ、ボスには挨拶しとけよ。」
「分かってるって。」
ダンテはネオンと別れ、階段を登り、ボスの部屋へと着いた。扉をノックし、失礼しますと中に入る。
「ダンテか。よくあの場で生き残れたな。」
ボスはアンティークな椅子から立ち上がりダンテを出迎えた。
「ああ、病み上がりはそこ座りな。」
ダンテは促された椅子に座る。ボスと対面。
ドハイ。
五十の歳を越え、今もこのバイバツ組を指揮し、この街アーケバスを裏で牛耳る。彼にとって警察もメディアも操作は容易い。
「ブローの死はうちのグループには大きな穴が空いたようだ。ダンテ、お前にとってもだろう。」
「………ええ。」
「あの日以来、リーベッド組は活動が表立つようになった。それも挑発的にな。」
「急にですよね。停戦も今から一年前、準備が整ったと言うのでしょうか。」
ドハイは机を叩き、ダンテを指差した。
「そう、そこなんだ。資金を集めるなんて奴らも容易い事。しかし一年だ、早すぎると思わないか?」
ダンテは少し考え込んだ。彼はずっと小さな違和感を感じていた。
「………確かに、徹底的に我らの組を潰すならもう少し時間が必要になる。街中で喧嘩するくらいなら、停戦の誓いを破らない筈です。」
「その通りだダンテ。ああ、そうだ。お前、新しい相棒が必要だろ。ブローの代わりとは聞こえは悪いがな。」
バイバツ組はパートナー制だ。
ダンテの元相棒は、ブロー。
「ま、それは後だ。今日はもう帰れ。」
《人物紹介》
氏名 ドハイ・マーフィー・ジュニア
年齢 56歳
身長 171㎝
職業 バイバツ組のボス
趣味 サウナ
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