第2話

俺の絶叫に続くように、女神が耳を塞ぎ気味に喋りかけてきた。


「そ、そんなにきつく言われると流石の女神の私でも、心が痛みますよ…」


うなだれている女神を横目に俺は口を開いた。


「それはこっちのセリフだろ!大体、悪役なのに武器が紙切れだけなんて心が折れそうなのは俺の方だ!」


不満を女神にぶつけると、女神はキョトンとした。


「百力 剛さんって名前は強そうですけど、名前に反して心が弱いんですね。」


真顔で言われ俺の心はついに危うく折れそうになった。それを少し察したのか女神はトントンと優しく背中を叩いてきた。


「すみません、私…貴方の名前を見た時、とても強そうなお名前だと思って貴方1人でもこの世界でやっていけるかな〜…と思い、1:53の1の割合に貴方を抜てきしたのですが…不快な思いをさせてしまっていたらすみません…」


まさか女神に素直に謝って貰える事にびっくりし、俺の声が上ずってしまった。


「あ……あぁ、別に気にしていませんよ。きっと女神様も悪気はないはずなので………その…」


俺が全て言い終える寸前に女神が目に涙を浮かべながらこう言った。


「すみません、ホント…

貴方が豆腐並みのメンタルという事にも気付かずに転生させてしまって…」


「おいッ、誰が豆腐メンタルだってェ!?」


女神の超失礼な言葉をかき消す俺のドスの効いた声が響く。


「ひぃ、あわわ!私少々野暮用を思い出しました!て、天界に逃げま……じゃなくて、戻ります!では!!」


女神は小さく悲鳴をあげた後に、現れた時と同じ眩い光をあげた。

それと同時に俺の視界は真っ白になった。


「うっ、眩しい…」


気がつけば女神は跡形もなく消え去っていた。残されたのは女神から貰った『切れ味抜群の紙切れ』と『ダンボールの盾』だけだった。

ザァァーーーっと森の木々を騒ぎ立てる風が吹く。その木々と共に俺の心も揺らいでいた。絶滅というエンドしか迎えられない悪役の絶望を抱え、俺はその終わりを食い止めようと希望を挙げた。

ー悪役だろうと関係ない…

自分で進まなければ道は開けないから、矛盾を抱えてでも進む。

俺はそう心に刻んだ。破滅は絶対に避けると。

俺はもう一度紙切れをギュッと力強く握った。


「俺は諦めない。この絶望から逃げ……痛ッ」


手のひらに痛みを感じ、手を広げてみると握っていた紙切れが手に刺さっていた。だらだらと血を垂らしながら。


「うひょー、本当に切れ味抜群だとはな。」


苦い顔で手のひらを摩りながら呟いた。

きっと悪役の絶望から解放されるには大変な道のりが待っているだろうけれど、諦めずに頑張ろう。

俺はまた強く手を握った。



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異世界転移したら超絶滅寸前の悪役でした(泣) ゴネ次郎 @gonejirou

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