転生者異能アカデミー 〜俺達の首を賭けたデスマッチ〜

鰤々左衛門

第1話

た。




そして、次の瞬間には、俺は隊員目掛けて殴りかかっていた。




「グハッ!」




俺の拳は隊員の鼻をへし折り、隊員をぶっ飛ばした。




...あれ?


...俺、体力テストCの運動神経ふつーの男だぞ?


...火事場の馬鹿力とか言っても、手に痛みもなく、俺よりゴツい人間をぶっ飛ばせるか?




「佐助!?大丈夫!?身体、どうしたの!?」


母ちゃんの心配する声が聞こえる。


身体? 何言ってるんだ?


俺は恐る恐る自分の手のひらを見てみる。




「な、なんじゃこりゃァァ!!」


俺は、驚きのあまり奇声を発した。なぜなら、俺の手のひらどころか、身体中が、鉄と化していたからだ。




身体中がガッチガチに硬い。それに光沢がかっている。




「...おい。お前、異能持ち、か..?」


鼻血を出しながら地面に倒れた隊員は、やっとのことで起き上がると、怒りで震えた声で俺に尋ねた。




「異能...?もしかして、これが、異能...?」


「異能持ちを隠していることは重大な法違反だということは承知か?」


「っ!!違うんです!これは、私も初めて見るもんで、異能が発動したのも始めてで!」


母ちゃんは、必死に弁解している。




「それに、お前の息子は隊員に向かって暴行をはたらいた。」


すると、隊員は、今度は俺の方を振り向いて再び尋ねた。




「この女の罪が、どんな刑に値するか分かるか、野郎?」




クソっ!法律とか、俺が分かるわけないじゃねーか!


俺が黙っていると、隊員は、ニヤッと口角を上げたかと思うと、口を開いてこう答えた。


「死刑だ。」


「し、、けい、?」


「ウッ、ウッ、どうか、見逃してください!」


俺が状況を読み込めずに固まっていると、隊員は、崩れ落ちた母ちゃんの胸ぐらをつかんで、もう片手で、母ちゃんの首を握りしめた。




「な、何をする気だ!!母ちゃんは関係ねぇ!殺すなら俺を殺せ!!」


「残念だが、お前には、保安隊に入ってもらわないといけないから殺せないんだな。」


「佐助!やめなさい!」


「アァァァァ!」


俺は隊員目掛けて一目散に駆け出した。


「佐助。あんたは悪くない。この国に仕組みがこうさせているだけ。」


「何いってんだよ母ちゃん!おいお前!母ちゃんからそのきたない手を離せ!」


「佐助。あんたは人を助ける力を持ってる。私の名付け方は、間違ってなかった。」


「母ちゃん、もう喋んないでくれ!また家で話せばいいだろ!」


「この国を、どうか、助けて、平和な国にしt」


母ちゃんが話し終える直前、隊員は手から鋭い爪を生やした。そして、母ちゃんの喉元を、ザックリと、引き裂いた。


「....え?」


あまりにも一瞬のことで、俺の思考は停止した。


母ちゃんが流血して倒れていく瞬間がスローモーションのように俺の脳みその中で幾度も再生され続けている。


「母ちゃん...?」


喉元を引き裂かれた母ちゃんは、ひゅーひゅーと吸った空気が喉から漏れているような音を出して、呼吸している。




もう、助かりそうにないことは、馬鹿な俺にもわかった。




「さ、すけ。母ちゃん、、は、あんたを、、ずっと、、見守ってr」


「もういいから!もう無理すんなよ!」


もう駄目だとわかっていながら、母ちゃんの首から流れ出て止まらない血を抑えようと布を当てて試行錯誤し、テンパっている俺。布で止血しようとしても、布が真っ赤に染まっていくだけだった。




「、、生まれてきて、く、れて、、あ、り」




そこで、母ちゃんは、事切れた。




「...ありがとうまで、聞かせてくれよ...。うわぁぁぁあ!!!!」








母ちゃんは、俺に殺されたんだ。




なのに、俺が生まれてきてよかった?




母ちゃん、、。




なんで、最後まで、俺は素直になれなかったんだ?




なんで、ありがとうって言って、母ちゃんの饅頭を受け取らなかったんだろう?




なんで!




「おい。死体の運搬手伝え。」




「...。」




「ハァ。手伝わねぇなら、先に保安隊本部まで来てもらう。今日から、お前は、俺たちと一緒だ。」






隊員は、不気味な笑みを浮かべて、ひざまずいた俺に、母ちゃんの血で染まった手を差し伸べた。

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