第115話 『3人旅』
リーダーの戒さんが慌てふためくという珍しいシーンを見ることができた翌日、昨日決めたように分かれ、生存者を探しながら釧路港を目指すことになった。
「それじゃあ、各パーティーのリーダーはいつでも電話を取れるようにしておいてくれ。くれぐれも、無理はしないように」
戒さんの一言で3つのパーティーが三方向へと分かれていく。私達三人は北側の旭川圏との境界線ぎりぎりを進んで釧路港を目指す。もちろん摩周湖のある方向だ。そうなるようにちょっと誘導しちゃいました!
戒さんを先頭に、周囲を警戒しながら進んで行く。この辺りは山に囲まれているので、一本道が多い。その道沿いを歩きながら、途中にある街で生存者がいないか確認していく予定だ。
木々に囲まれた道路を黙々と歩いて行く。30分ほど歩いたところで、気まずい沈黙に耐えかねたのか、戒さんが私達に話しかけてきた。
「君たちはその、何だ、同級生なのかい?」
日本最強
「はい! 中学校で同じクラスの同級生です!」
「へぇー、シーカーになれる人間なんて限られてるのに、同じ中学校の同じクラスにいるなんて、すごい確率だな」
言われてみれば確かにすごい確率かも。今まで考えてもいなかったけど、
それからしばらく、私達の中学校での話で盛り上がり、それから獅子王さんが自分のことについて話してくれた。
獅子王さん兄弟は、お父さんが元3級
以降、今のメンバーと『皇帝』を結成し、国の支援を受けて高ランクのスキルオーブを2つ譲り受け、腕力強化と脚力強化を獲得してからは破竹の勢いで、あっという間に1級、そして日本一の
それから話題はキー坊ことお兄ちゃんのことへ。楓ちゃんもお兄ちゃん=キー坊だって知ってるから、上手く合わせてもらわないとね。
「アスカちゃんは、あの魔物料理屋とどこで知り合ったんだい?」
「そう言えば、私もキー坊さんとは会ったことないんですよね。お弁当は作ってもらったことあるけど」
うんうん、楓ちゃん演技が上手! でもね、本当はお兄ちゃんの凄さをみんなに広めたいと思ってるから、戒さんにも教えてあげたいんだけど……さすがに無理だよね。だって、最近お兄ちゃんちょっと目立ちすぎなんだよ。何だかイケメンだって騒がれてるし、『推し活』の配信で少々やらかしてるみたいだから。
ここで正体がバレちゃったら大変なことになるのは目に見えている。私とお兄ちゃんの快適な生活のために、そこは死守しないと。
「ごめんなさい。キー坊さんとの約束でそれはお答えできないんです……」
すごく悲しそうな顔をすれば、これ以上追求はこないはず。
「む、それはすまない。この質問は忘れてくれ」
ほらね。必殺悲しい顔作戦大成功。楓ちゃんは笑いをこらえてるみたいだけど。
それで、今度は魔物料理の話に変わっていく。私達が食べたことのある料理とその素材、味などを詳細に聞かれた。途中、戒さんがよだれを垂らしそうになっていたのがかわいい。
それで、私達がアイテムボックスに魔物料理のお弁当が入っていると知ったら、戒さんは興味津々で食べてみたいって言い出した。何でも、弟の仁さんにえらく自慢されたのだとか。
ということで、お昼ご飯に私達のお弁当を分けてあげることにしました。
「ところで魔物の肉はもちろんだが、
えっ!? 魔物のお肉っておいしくないの? お兄ちゃんが作ってくれる料理っていっつもおいしいから、そんなこと全く知らなかった。
「えーと、そうなんですか? 今度、会ったとき聞いてみますか?」
「えっ? いいのかい? たぶん、企業秘密だと思うけど」
いやいや、企業秘密だと思ってたのならなんで聞いたんですか!
でも、お兄ちゃんは一言もそんなこと言ってなかったから、別に隠しているってわけじゃなくて単純に重要だと思ってない可能性があるね。そんなの内緒にしてこそこそやるお兄ちゃんじゃないから、今度教えてあげようっと。
その後は魔物料理に使われてる素材の話になって、高ランクの素材が出るわ出るわでこちらも大盛り上がりでした。そして、一つ目の街に到着した。
「よし、まずは生存者を探すとしよう」
私達は辺りに魔物の気配がないのを確認して、手分けをして生存者を探す。でも、この街には人っ子一人いなかった。ついでに、魔物もいなかった。みんな逃げることができたのか、殺されてしまったのかはわからないけど。
「生存者はいないようだな。せっかくだ、ここで食事をとらせてもらおう」
街を確認し終えた私達は、食堂だったと思われる建物で昼食をとることにした。戒さんがちょっとそわそわしてるみたい。初魔物料理が楽しみなんだね!
「こ、これが魔物料理……ゴクリ。もの凄く旨そうだ。それにまるでできたてのように見える」
一目でお兄ちゃんが作ったお弁当の虜になる戒さん。驚くのはまだ早いよ! 食べたらもっとびっくりするんだから。
三人でいただきますをしてから、お弁当をいただく。今日のお弁当は、以前、お兄ちゃんが震雷のみなさんとコラボしたときの
「う、旨すぎる……」
それだけ呟いて黙々と食べ続ける日本一の
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